どうする楽天?! 鉄平さんが斬る

プロ野球で10年ぶりの日本一を目指す楽天が開幕から苦しんでいます。
6月6日時点で19勝30敗1引き分け(負け越し11)と最下位。打率(.213)、得点(148)もリーグ最低であることが示すように、攻撃面の弱さが深刻です。
かつて楽天でパ・リーグの首位打者に輝き、おととしまで1軍の打撃コーチも務めたプロ野球解説の鉄平さんが、具体的な課題と浮上のカギをずばり指摘します。

(取材:仙台放送局 藤原由佳キャスター)


<「後に響く負け方」>
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鉄平さん
「ことしは負け方が悪いですよね。エラーから失点をしてそのまま逆転されることが目立っていて、後に響く後味の悪い負け方になっています」

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エラー数はすでに去年全体の半分以上に

「そういうのが続くとチームとして悪い雰囲気が停滞してしまうのでなるべく避けていきたい。エラーは出るものだし打たれることもありますが、試合の流れの中で“ここでミスしてはいけないという場面”があります。もう1段階、集中力や技術を上げてプレーすることが大事になってくるかなと思いますね」


<走塁のレベルアップを>

さらに鉄平さんが「もったいない」と嘆くのが走塁死です。
楽天はここ数年、かつて消極的だった盗塁の数を増やそうと強化を続け、今シーズンは盗塁数が12球団トップの39個(6月6日時点)をマーク。
その一方で走塁死が目立ち、得点のチャンスをみずからつぶしてしまっていると言います。

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三塁を狙った辰己涼介選手がアウト(5月27日 対日本ハム戦)

鉄平さん
「ことしは若い選手の起用も多く、アグレッシブに次の塁を狙う姿勢はいいと思います。ただ、次の塁に本当に行けるのかどうかの判断は必要になってくるわけで、『アウトになってもいいから行きましょう』という考えは、1軍の舞台ではハテナマークがついてしまう。次の塁を狙う姿勢を持ちながらも、『いや待てよ、ここは次のバッターの打力が高いから無理をしないでおこう』とか、瞬時に自分にブレーキをかけるという心も併せて持っていると、もったいない走塁死は減っていくのかなと思いますね」


<他球団の対策が進む?! 大振りなスイング>

そして、ファンが最も心配するバッティングの不振については、他球団バッテリーの攻め方に対応できていないことが要因の一つだと指摘します。

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鉄平さん
「イーグルスには、しっかりボールを見てボール球に手を出さないバッターが多いです(※2022年まで3年連続で出塁率リーグ1位)。そこで相手バッテリーは、『もうストライクゾーンに強い球を投げ込め』という攻め方に変わってきました。すると、相手がどんどんストライクゾーンに投げ込んでくるので、楽天のバッター陣は早いカウントからしっかり力負けしないようにと、スイングが大振りになってしまっているんです」

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島内宏明選手

特に苦しんでいるのが、本来は打線の軸である島内宏明選手です。
おととしは打点王、昨シーズンは最多安打のタイトルを獲得しましたが、今シーズンは打率1割台にとどまっています。
鉄平さんは、大振りになっていることでボールを芯でとらえきれていないと分析します。

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空振り三振する島内選手(5月26日 対日本ハム戦)

鉄平さん
「島内選手は、強く打ちたい、出力を上げて振りたい、というのがかなり見られて、早い段階でヘッド(=バットの先端)が前に出てきてしまっているんですよね」

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「ヘッドが先に出ていくと、ボールが芯から外れたバットの根元に近い部分に当たるんですよ。これではボテボテのゴロしかいきません。コーチ時代、島内選手の調子のバロメーターの1つとして、打球がセンターもしくは左中間ぐらいに飛ぶ打球が増えてくると状態がかなり上がっていると見ていましたが、今シーズンは少ないですね」


<復調のカギは?>

鉄平さんは、島内選手を含めた打撃陣の復調のカギとして2つのポイントを挙げます。
1つは、基本に忠実なバッティングです。

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鉄平さん
「復調のカギは、ピッチャー返し、センター返しといった、基本に忠実なバッティングの意識を持つことです。バットのヘッドが前に出ないようにもなり、ボールとバットがきれいに当たって、芯でとらえる確率も上がってくると思います」

もう1つのポイントが、「二段構え」
これは、鉄平さんも指導を受けたあの名将の教えだそうです。

鉄平さん
「『二段構え」は、かつて野村克也監督がよくおっしゃっていた、打ちにいく時の意識のことです。例えば、好投手のストレートを狙うという目的があった場合、ただストレートを打ちにいくだけではなく、もう1つ『ストレートを上から叩くように打ちにいきます』とか、『外にくるストレートだけ打ちにいきます』というふうに、明確な狙いを加えることなんです。とても難しいことですけど、プロとしてチームの状態を上げるためには、そのくらい難しいこともクリアしていかないといけないのかなというのはありますね」

 

<「交流戦をきっかけに」>

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最後に鉄平さんは、6月18日まで行われる予定のセ・リーグとパ・リーグの交流戦を浮上のきっかけにしてほしいと期待を寄せました。

鉄平さん
「過去のデータの中で交流戦を勝ちきり好成績をおさめたチームは、リーグ戦の戦いに戻った後もけっこうそのまま走り続けるという傾向は出ているので、イーグルスも浮上のきっかけにしないといけないです。シーズンは長いですが、この交流戦はターニングポイントというか、非常に大事な期間だと言えますね。交流戦は18試合ありますが、最低でも11勝7敗。負け越しの数は「5」くらいまでに減らしておかないと、Aクラス入りも危ないかなと思います。
これからは悪い原因を探すよりも、良くなるための方法を探してどんどんアプローチしていく、トライしていくことが大事です」

 


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仙台放送局 藤原由佳キャスター
スポーツ担当。
球団OBの鉄平さんは今回、心を鬼にしてチームの現状に“喝”を入れました。
シーズンはまだ半分以上あるので巻き返しを期待したいと思います。