パリ五輪へ 一発勝負のレースに懸ける~新春インタビュー~ 大崎市出身・佐藤早也伽選手(積水化学)

「車で送迎をしてくれるなら陸上部に入ろうか」
そんな単純な動機が陸上人生の始まりだった。

宮城県大崎市出身で、女子マラソンでパリ五輪を目指す佐藤早也伽。
陸上を始めたのは中学入学後すぐの“母親の勧め”が、きっかけだった。
「身体を強くするため運動部に入って欲しい」という親心から、“車の送迎”を条件に母が思いを伝え、佐藤が受け入れた。

通学すらも面倒に感じていた少女が、15年の時を経た今年秋、
パリ五輪出場を懸けた一発勝負の選考レース(MGC=マラソングランドチャンピオンシップ)に臨む。

 

この数年で大きく成長!マラソンへの本格的な参戦へ

現在、実業団の積水化学に所属する佐藤早也伽は28歳。
東洋大学卒業後の2017年にチームに加わると、2020年の日本選手権ではトラック種目・10000mで自己ベストを更新して3位。ここ数年で大きく成長を遂げた。
そして佐藤は、「幼い頃から憧れがあった」というマラソンへの本格的な挑戦を決意した。

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実業団でトラック競技に取り組む佐藤選手 / 写真提供:積水化学

 

悔しい思いの多かった学生時代を経て、五輪を視野に入れるトップランナーに

これまでの佐藤の陸上人生は、決して順風満帆ではなかった。
宮城・常盤木(ときわぎ)学園高校では、チームとして全国大会の出場はなく、個人として3年間、全国女子駅伝の宮城代表として走る機会を得たが、いずれも区間15位以下だった。
トップランナーたちとの差は大きく、東洋大学進学後も悔しい結果が続いた。
「負けず嫌いが自分の長所」と佐藤自身が話す通り、厳しい状況の中でも156cmの小さな身体のランナーは、確固たる信念を持って歩んできた。

実業団に入部後、「身体を支える細かい筋力強化」や、「高い強度のスピード練習」を重ねたことで徐々に土台が整ってきた。
実業団3年目のハーフマラソン優勝を足掛かりに、2020年名古屋ウィメンズマラソンでは、女子選手の初マラソンで歴代6位のタイムを叩き出す。

そして、去年1月の大阪国際女子マラソンで6位入賞を果たし、
パリ五輪への切符をかけたMGC出場権を得た。

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黙々と走る佐藤選手

 

今年秋の勝負レース=MGCへ向け、海外レースに参戦

佐藤は今、大事なレースに向けて更なる強化を進めている。
大きな試みの一つが昨年(2022年)秋のベルリンマラソンへの参戦。
佐藤にとって初の海外レースだった。
わざわざ海外まで出向いたのは、この秋のMGCを見据えて、暑さの残る同じ時期のレースを1年前に経験するためだ。

“我慢強い後半の走り”をテーマに挑み、結果は世界で9位。参加した日本人選手の中では3位の成績だった。
タイムも2時間22分13秒。自己記録を1分以上更新した上、後半35km以降のタイムは自己最速を記録した。
佐藤にとって、夏場のマラソンでの結果は、大きな収穫と自信を得ることになった。

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ベルリンマラソンで9位に入った佐藤選手 /写真提供:積水化学

急成長を遂げる宮城出身ランナーの走りはまだまだ未完成で、それゆえに伸びしろは計り知れない。

遅咲きながら着実に実力を伸ばし、パリ五輪が視野に入り始めた佐藤。
「自分の持ち味は粘り強さ。
 最後まで諦めずに走っている姿を見せたい。
 楽しく走ることも忘れずにMGCに挑みたい」と意気込む。

“コツコツと歩んできた心の強さ”を武器に、佐藤は約9カ月後のMGCでの快走を見据えている。