「花は咲いて 散るからこそ」 制作記 カメラマンのつぶやき②

「花は咲いて 散るからこそ 海辺の町のローズガーデン 石巻 奇跡の花畑の1年」

三陸の小さな海辺の町にあるバラやハーブなど1万株以上の花木が彩り、全国から人々が訪れる奇跡のローズガーデンの移ろいゆく花々と、人々の営みの1年間を記録した番組です。

えっ?どんな番組かって?
とっても短く紹介したショートムービーもありますので、こちらもぜひ。

[花は咲いて 散るからこそ] “森の妖精”がつくる海辺の町のローズガーデン | NHK 

長期間にわたり密着取材したカメラマンが、取材の舞台裏をご紹介します。



カメラマンのつぶやき ②

~「美しいものはより美しく?」~

 前回、カメラマンであることを明かしましたが、この番組では、とても高精細な4Kカメラを使用して撮影しています。ですから、当然「美しい映像」が並ぶものと期待されるかと思います。が、申し訳ありません。その期待、裏切ってしまうかもしれません。もちろん、カメラマンとしての力量の問題もあるのですが、なにしろテーマが「散る、枯れる」ですから、美しい花の時期、以外の映像がたくさん出てきます。

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4Kカメラならではの美しさ?

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枯れたバラの中に小さなつぼみが・・・

 そもそも主人公の利枝さんが、ぼそりと「終わり方、片付け方も考えないと、ですよね」と語ったところから、この企画が始まっています。それはとある映画を観ての感想だったのですが、お世話になった畑に花や木を植えて山に還すというおばあちゃんの物語で、端的に言えばふるさとを閉じていくお話しでした。

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徳水利枝さん(雄勝ローズファクトリーガーデン代表)


 番組タイトルにもなっている「花は咲いて散るからこそ」も、その思いにつながっていきます。「10年間、残すことに一生懸命だったけど、このあとのことを考えたら、残された人のことを考えたら・・・」と、利枝さんは咲いた花のあとのことを考え始めていました。

 それは自ずと、撮る対象が美しい花から、散って、朽ちて、あるいは虫がついたり、病気になったりする花たちにシフトしていくことになります。4Kの高精細なカメラで、咲いた美しいバラを撮影すると、そこに小さな無数のアブラムシがついていることに気がつきます。何を持って「美しい」とするのか、その言葉の安易な使い方に大きく反省することにもなりますが、それも又「美しい」のです。

 ピークを過ぎた花は、変色しぐしゃぐしゃな姿となり、ぼとぼとと花びらを落としていきます。するとその横に小さなつぼみがあり、そこへフォーカスを合わせていくと、びっしりとアブラムシがいるのです。それが自然であり、生き物の世界であり。利枝さんのいう「枯れるからいい」なんですよね。

 この先はぜひ、番組本編を見て頂ければと思いますが、私のカメラマンとしての力量も手伝って、ややえぐい、お見苦しい映像もあるやもしれません。そこは何とぞご了承ください。しかし、森の妖精さんと呼ばれるおばあちゃんたちの、そして利枝さんの繰り出す言葉や、所作、生き様には「本物の美しさ」があります。そこは断定調で語ることができます。

 ぜひ高精細の大画面でと言いたいところですが、フォーカスの甘さも際立つので、お恥ずかしいばかり。心のフォーカスはおばあちゃんたちに、ばっちり合っているのですが・・(笑)

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これもひとつの「美」ではあるが・・・

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巨大防潮堤が湾を囲む