「限界集落住んでみた 秋田編(男鹿市西黒沢) 」 ディレクターが語ってみた

「限界集落」とは・・・人口の半分超が65歳以上の集落のこと。
「若者がいなければ学校もない、病院もない…」なんとなく寂しいイメージありますよね。
でも実際はどんな所か知る人は多くないと思います。どんな人がどんな暮らしをしているのでしょう。


「限界集落住んでみた」シリーズの第10弾!

秋田県では2か所目。向かったのは、男鹿市です!
今回初の、年末年始を限界集落で過ごす企画。今回は、秋田に住んで2年目。
4年生の女性ディレクターの私、秦圭矢乃が挑戦しました!

限界集落に住んでみた感想や番組に載せきれなかった思いを込めて、
皆さんが気になるかも?という点をつらつらと書いていきます!

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秦 圭矢乃 ディレクター

“どうして西黒沢集落に行くことになったの?”

“3日間通って、やっと承諾してもらえた取材の許可”

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今回、1か月「住んでみた」のは、秋田県の男鹿半島にある西黒沢集落。
地区長さんにお願いに行ったところ、通されたのは漁を終えたばかりの漁師さんたちが休む番屋。10人以上の海の男たちがぐるりと囲む大テーブル。内心 とっても・・・こわかった・・

私のたどたどしい1か月住み込みロケのお願いは開始10分で断られてしまいました。
でもそのとき、時間はちょうどお昼時。バスも予約しないと来ないので、1時間待たないと来ません。バスも来ねえし、昼食うか?と漁師さんたちのお昼にお邪魔させてもらったのが、西黒沢集落との出会いの始まりでした。

一緒にお昼をいただいて、漁のことや、漁師のお父さんたちのことを知ると、西黒沢がすっかり好きになってしまいました。明日も来ていいですか?とだけ聞くといいよ、とのこと。
住居や交通手段、安全面、プライバシー、集落の人達が心配していることをひとつずつ、説明していって、3日目に、なんとか取材の許可を頂き、住む場所として公民館を貸していただけることになりました。番屋で偶然の出会い、というご縁からはじまった「限界集落住んでみた」でした。


“どんなところに住んでいたの?”

古いけど、手入れの届いた公民館。風呂なし、トイレは汲み取り式です。

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海辺の集落なので風がすごく強くて、誰か来たのかなと思うくらい、揺れます。
特に雪の日はすごかったです。溶けかかった雪が風にあおられて屋根からドスンドスン落ちてきます。はじめて聞いたときは、飛び起きるくらいびっくりしましたが、次第に慣れました。

大雪の翌日は、皆、朝はやくから雪かきをします。近所さんの雪かきしたり、道具を貸し借りしたり、自然に助け合いの関係が生まれていくのが、東北のあたたかさってこういうところから来るのかもなと思いました。なお、私も自前のスコップで雪かきに参戦したものの、ぜんぜん雪は減らず、情けなかったです。集落の方が持っている大型の雪かき機がとても頼もしかったです。

“撮影はどんな風に行うの?”

リュックにつけた小さいカメラと、大きいカメラを持って、集落をまわりました。
散歩していく中で、集落の誰かと出会えれば・・・!と思ってましたが、役員さんに「この時期に人っ子ひとり歩いてないよ」と言われました。実際、真冬の漁村は、漁も終わり、誰も歩いてませんでした。さぶいんだもの・・・。引っ越しのご挨拶をした後に、お邪魔して一緒にお茶っこをしてもらうことが多かったです。

“集落に住んで、思い出を教えて!”

今後、いくらお金を払っても、食べられないのが、漁師さん達と一緒に待ってやっと取れたハタハタだと思います。そして、漁師の息子さんがお母さんに持ってくるハタハタの味だと思います。私は運よく、漁師さんが命を懸けてハタハタを取る瞬間と、息子さんがお母さんにハタハタを持ってくる瞬間、どちらにも居合わせることができました。
あの時いただいたハタハタの汁は、本当に“んめかった~!”にわか秋田県民の私が使うのもおこがましいですが、自然と心から秋田弁が出てしまう瞬間でした。

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“限界集落に住んでみて感じた・・・人間の暮らしの本質は変わらない”

漁がとれた喜び、厳しい冬の寒さと雪の中での寂しさ、ストーブに油を入れた時の安心感。
そういった喜怒哀楽を一緒に共有する、仲間や家族。
限界集落では、より、生きることにシンプルというか、喜怒哀楽が暮らしに直結するので、
本物のドーパミンが出た気がします。

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“1か月住んでみて どうだった?”
感謝してもしきれないくらい、集落の方たちにお世話になりました。
やさしくしてくれる集落の方たちに、
「なんでそんなにやさしくしてくれるの?」と聞いたことがあります。
「それが田舎だ。なんも心配すんな。」と笑われました。

すぐ目に見える形で答えがないと安心できない自分が恥ずかしくなった瞬間でした。
存在や理由を問うまでもなく、最初からそこにある人のやさしさ。
集落のお母さんが別れ際にギュッと握り返してくれた手の温かさは、
これからもずっと私のお守りです。

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