震度6強地震 被災旅館 再起を目指す

3月、宮城県と福島県で最大震度6強の揺れを観測した地震では、観光施設も被害を受けました。このうち、施設が大きく壊れ休業を余儀なくされた旅館が仙台市にあります。再起を目指す動きを取材しました。

(記者 髙垣 祐郷)※取材は4月に行いました。


【完全復旧には半年以上】

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宮城県有数の温泉地、仙台市の秋保温泉。この高台にある旅館は、11年前の東日本大震災でも被災しましたが、先月の地震で再び、内部に大きな被害を受けました。

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揺れで水道管が破裂して床は水浸しに。壁も剥がれ落ちました。特に深刻な被害を受けたのは、新館と旧館とをつなぐ渡り廊下です。つなぎ目の部分で鉄骨がゆがむなどの被害が出て、復旧には半年以上かかることが分かりました。幸いけが人はいませんでしたが、被害額は少なくとも1億5000万円にのぼると見られています。

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「被災直後は本当にショックだった。今後旅館として営業していくことができるかどうか、
どん底まで気持ちが落ちて、ことばもでなかった」(若おかみ 高橋知子さん)


【再起に向けて】

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高橋さんの気持ちを奮い立たせたのはひたむきな従業員の姿でした。
従業員の数はおよそ100人。この1か月の間に、高校を卒業したばかりの5人の新入社員も加わっていました。

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「被害状況は結構大きいと聞いているが、やるしかないという気持ちで精一杯頑張る。
元気と声の大きさに自信があるので、盛り上げていきたい」(新入社員)

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(高橋さんのYouTubeより)

営業休止を余儀なくされる中、高橋さんは、せめて客との結びつきは維持しようと、動画投稿サイトやSNSを活用することに力を入れてきました。地震翌日から毎日、被害状況をありのままに発信してきました。

「地震直後はショックで発信することに臆病になったが、旅館がどうなってるのかっていう問い合わせを多く受けて、立ち止まらずに何かできることをしていかないといけないと決意した」(若おかみ 高橋知子さん)


【広がる支援】

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支援の動きも出ています。復旧費用の足しにしてもらおうと、地元の常連客が、旅館の売店で売っていた箸やクッキーなど、おみやげの代理販売を始めました。これまでの売り上げは、30万円以上にのぼります。

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インターネットで寄付金を募るクラウドファンディングも常連客によって立ち上がり、返礼がないにも関わらず、2日間で200万円を超える資金が集まりました。

「多くの人に支援してもらえる仕組みをつくりたいと考えたのがきっかけだった。被害額からみると本当に微々たるものでしかないと思うが、これから一生懸命もう一回やろうという気持ちになってもらえるとうれしい」(旅館を支援する常連客)

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旅館には再開を楽しみにする客の声が寄せられています。このため、大型連休が始まる前に、被害が少なかった部屋だけ先行して、客の受け入れを再開することにしました。

「地域の人たちに支えられているとことを改めて強く感じています。しっかりとお客様を迎える態勢を整えて、まずは一部でも再開させたいと思っています。苦難をひとつひとつ乗り越えて、一層のおもてないとして還元していきます」(若おかみ 高橋知子さん)


【取材を終えて】

日頃から培われた旅館と従業員、それに常連客との信頼関係が、地震の被害からの復旧を強く後押ししたと感じました。この地震では東北新幹線が不通になったことで、客足が遠のき、地震で建物に被害がなかったホテルや旅館も経営に大きな打撃を受けました。宮城県内の宿泊施設で5万人分を超える予約キャンセルが出たという調査もあります。

その後、東北新幹線は全線で運転再開し、まもなく大型連休に入ります。新型コロナの影響で大々的な観光キャンペーンはやりにくい状況が続いていますが、観光地に賑わいが戻る日が一日でも早く来ることを願ってやみません。


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髙垣 祐郷
平成26年入局
3年前から仙台局