ミヤザキケンスケさん、石巻で壁画を描く NHK仙台・丹沢研二

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石巻の町なかに突如現れた、大きなくじらの絵。

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くじらがふき上げた潮がたくさんの花に変わり、石巻の街に降り注いでいます。
真っ青に晴れ渡った空には虹がかかり、虹の上を良く見ると沢山の人が笑っています。

この絵を石巻の人たちと描いたのが、画家のミヤザキケンスケさん。
国内はもちろん、世界各地でこういった明るく楽しい壁画を描いています。
5年前にはウクライナのマリウポリでも壁画を描き、その活動が注目されました。

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マリウポリにある壁画。ウクライナの民話「てぶくろ」を題材にしています。
ロシア軍の侵攻によって、この壁にも穴が開いてしまったそうです。

ミヤザキさんは東日本大震災のあとに何度も東北各地を訪れ、絵を描いてきました。
今回は石巻の方から依頼を受け、震災復興の先にある「未来の石巻」をテーマに壁画を描くことになったのです。地元でワークショップを開いて子どもたちに絵を描いてもらい、特に多かったくじらや虹、海や川などのモチーフをミヤザキさんが一つの絵にまとめました。

絵はミヤザキさん一人で描くのではありません。ミヤザキさんの下絵をもとに、地元の人が色を塗ったり細かい部分を描いたりします。その方が「私たちの絵だ」と、地元の人たちが愛着を持ちやすいし、少し不ぞろいな所も絵の魅力になると言います。

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私も少しだけお手伝いさせていただきました。
およそ2週間の制作期間にのべ300人以上が参加したそうで、ミヤザキさんがこれまで各地で描いた中でも最多だったということです。石巻の力はすごいですね。

実は、ミヤザキさんと私は12年前からの知り合いです。

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ミヤザキさんは佐賀出身。私が佐賀放送局にいた2010年に、佐賀で初めて開いた個展を取材したことがあるんです。絵の中に私の顔も描いてくださいました。
この時から縁がつながり、今回の石巻での取材に結び付きました。

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今回の絵の中で、特にミヤザキさんが思いを込めて描いた箇所があります。
大漁旗をなびかせた船の絵です。港に帰ってくる所か、これから海にこぎ出していく所か、迷った末、こぎ出していく方向に描きました。

「震災直後には目の前のことや過去のことを語っていた石巻の人たちが将来や次の世代のことを語っていたのが印象的だったから」とミヤザキさんは話していました。

船のこぎ出した先に明るい光があることを、私も心から祈っています。

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この壁画は石巻市大街道西1丁目にある自動車部品会社の東側にあります。
実物を見るととても迫力があるので、お近くの方はぜひ見てみてくださいね。