佐賀 嬉野 「全国茶品評会」で日本一! 茶農家 三根孝之さん
- 2023年11月20日
お茶日本一!全国茶品評会
全国の茶産地が日本茶日本一を競う「全国茶品評会」。ことしは「うれしの茶」が産地としての評価が最も高い「産地賞」と、個人に贈られる最高賞の「農林水産大臣賞」を2部門で独占する快挙となりました。父に続いて最高賞を受賞したのが、嬉野市の茶生産農家、三根孝之さんです。
全国の産地が競う国内最高峰での受賞、おめでとうございます。
表彰式も終わりましたが、どんな実感ですか?
10月、福岡の八女で表彰式がありました。いまはホッとしています。
「蒸し製玉緑茶」という部門での受賞。この部門での「うれしの茶」の受賞は、10年前、父の孝一さんが受賞されて以来のことでした。
地元も随分と力が入っていたのではないですか?
10年間取れていなかったので「今年は取らんばね」と力が入りました。10年前は機械摘みでしたが、5年前くらいから、長崎県が手摘みでやっていました。そこに対応するため、我々も手摘みでやらなければということで、たくさんの人手が必要でした。今回は、頑張って多くのみなさんに協力していただきました。
こちらが、受賞された茶葉と同じ「蒸し製玉緑茶」の茶葉です。
とてもよい香りですね。どんな特徴がありますか?
さわやかな香り、コクのある旨味、そして、しっかりとした滋味、味があるということですね。
生産農家としては、様々な負担があったと思いますが?
品評会に向けて手摘みをするということで、冬の間から手間をかけて準備しました。天気も心配でした。去年も手摘みをしようとしたのですが、その時期の天気が悪く、断念しました。ことしは天気が良くて助かりました。
明治時代から5代続く茶農家
三根さんの茶畑と作業の様子を見せていただきました。
かなり標高の高いところですね。
標高350メートルほどです。冬はかなり気温が下がります。いまの作業は「裾刈り(すそがり)」といって、これからの作業をしやすくするため、樹形を整えているところです。
三根家は、孝之さんの高祖父・作助さんが明治31年に茶の栽培、加工を始めて以来、5代続く茶農家です。孝之さんは、小さいころから父・孝一さんの仕事を見て育ちました。
中学生のころには茶農家になろうと考えていました。
茶農家になろうと思ったきっかけは何ですか?
私は一人息子なので、小さいころ、ひいばあちゃんから「将来はお茶農家になっとぞぉ」と言われながら育ちました。自分でもそう思っていたので、お茶の専門学校まで進んで20歳で就農しました。
「うれしの茶」次の世代へ
嬉野は特産のお茶を町おこしの大事な柱にして様々な取り組んでいますが、これからどうしていきたいですか?
今回この品評会で日本一を取れたことは、一番のPR材料になると思います。これに満足しないで、もっともっと「うれしの茶」を飲んでもらえるように頑張っていきたいです。
現在、三根さんたちが取り組んでいるのが「グリーンレタープロジェクト」。紙のケースに、茶葉のパックを3つ入れて閉じると、そのまま切手を貼って宛先を書けばすぐに郵送できるというものです。もともと贈答品として広く使われてきたお茶を、より手軽に、また若い世代にも手に取ってもらいたいという狙いから始めました。
旅先からの便りに特産の茶とは、おしゃれですね。
いまはお茶を買う人が少なくなってきましたが、もともとは贈答品として使われてきました。嬉野温泉に宿泊するお客さんから好評を得ています。
「うれしの茶を次の世代に」ということが大きなテーマだと思いますが、中学2年生の息子さんがいらっしゃるそうですね。将来的には6代目ということを希望されていますか?
なってくれたらいいなぁとは思っています(笑)。私の周囲でも、息子さんがいても、お茶の情勢が良くないので子どもにはさせないという方が増えてきています。
このプロジェクトを立ち上げたのも、子どもに茶の仕事をさせられる、ひとつの道を作ってやりたいなという思いがあったからです。プロジェクトをきっかけに、少しでも消費を広げることができればと考えています。
【取材後記】
全国各地に銘茶はあり、産地間競争は大変厳しい分野です。古くからの産地として知られる嬉野でも、ブランドを維持するための努力は続いています。西九州新幹線の駅が開業し、地域振興の好機にあるいま、特産のお茶が日本一の称号を得たことでPRにさらにはずみがつきそうです。