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本屋大賞「成瀬は天下を取りにいく」大津舞台の宮島さんの作品

  • 2024年04月11日

全国の書店員が「いちばん売りたい本」を投票で選ぶことし(2024年)の「本屋大賞」に、大津市在住の宮島未奈さんのデビュー小説、「成瀬は天下を取りにいく」が選ばれました。

過去に受賞した作品の多くがベストセラーとなり、映画やテレビドラマにもなるなど影響力の大きい賞として注目されている「本屋大賞」。

地元・大津も大きな盛り上がりをみせています。

(大津放送局/記者 光成壮 秋吉香奈)

10作品の中から

4月10日、ことしで21回目となる「本屋大賞」の授賞式が都内で開かれ、ノミネートされた10作品の中から、宮島未奈さんの小説「成瀬は天下を取りにいく」が選ばれました。

作者の宮島さんは静岡県富士市出身の40歳。京都大学を卒業後、地元の静岡で就職し、結婚を機に大津市に移り住みました。

30代半ばから小説の新人賞などに応募を始め、3年前、今回の受賞作にも含まれている短編が文学賞を受賞し、去年3月に「成瀬は天下を取りにいく」が書籍化されてデビューしました。

授賞式で宮島さんは滋賀の人たちに向けて喜びを語りました。

宮島未奈さん
「滋賀のみなさん見てますか?成瀬が本屋大賞とりました。本屋大賞をきっかけに、ますます多くの皆さんに成瀬と出会っていただくのが楽しみですし、受賞作家の看板を背負っていくと思うと身が引き締まる思いです。コロナ禍に小説家人生がスタートした私がこうして多くの皆さんにお祝いしていただけるのは感無量で、このようなことになるとは想像していませんでした。これからの1年間も今の私には想像できないことがたくさん起こると思いますが、成瀬と一緒ならきっと大丈夫です。ありがとうございました」

舞台は大津市

「成瀬は天下を取りにいく」は、
大津市を舞台にした6つの短編からなる青春小説です。

舞台の一つが、4年前に閉店した「西武大津店」です。
コロナ禍のさなか、閉店をひかえる西武大津店に通ってテレビの中継に映ろうとする主人公、成瀬あかり。その成瀬と地元の人たちの間にさまざまな交流がうまれていきます。

観光船ミシガン

ほかにも、びわ湖の観光船ミシガンや膳所高校なども登場し、わが道を突き進む成瀬の姿がユーモラスに描かれています。

作品はこれまでに41万部を超えるヒットとなり、ことし1月には大学生になった成瀬の活躍などを描いた続編も刊行されています。

去年3月にデビューした際の会見で宮島さんは作品について次のように話していました。

宮島未奈さん
「小説家になるのは小さい頃からの夢でした。わたしはこの小説を書くにあたって小中学生から年配の方まで幅広い世代の方に楽しく読んでもらえることを目指しました。滋賀県民にとっては自分たちになじみがあるところが出てくるので、とても親近感を持って読んでいただけると思います」。

主人公「成瀬あかり」の自宅最寄り駅では

小説の主人公、「成瀬あかり」の自宅の最寄り駅として小説に登場する大津市のJR膳所駅には、4月1日からびわ湖大津観光協会がPR看板を設置しています。

看板には成瀬あかりやびわ湖を巡る観光船「ミシガン」のイラストとともに、小説に登場する「膳所から世界へ」というセリフをもじった「世界から膳所へ」という観光客を呼び込むことばが書かれています。

10日は「本屋大賞」発表の1時間ほど前から観光協会の職員や地元のファン数人が駅に集まり、午後2時すぎに受賞の知らせが入ると歓声をあげて喜んでいました。そして、関係者が「祝本屋大賞受賞」と書かれた花飾りの装飾を看板に取りつけました。

30代の女性ファンは「うれしいです。小説で地元の住民が誇りを持てるような魅力を取り上げてもらい、希望の光をもらえました」と話していました。

観光協会の坪田朋也さんは「たくさんの人に小説を読んでもらい、実際に大津を訪れて小説の世界観を楽しんでほしい」と話していました。

大津市の書店では

大津市の書店では、作品が出版された去年3月から特設コーナーを設けていて、受賞が発表されると、店員が記念のプレートを設置しました。

そして、「本屋大賞ノミネート」の帯がまかれた本から「受賞」の帯のものに入れ替えていました。

この書店によりますと、作品はことし1月までに小説としては異例の売れ行きとなる約1000冊が売れていて、今回の受賞によって買い求める人が増えることを見込んで、新たに600冊余りを入荷したということです。

また、宮島さんを招きサイン会を開いたこともあり、店内には宮島さんのサインが入った主人公のパネルや「西武大津店閉店のショックから立ち直れていない皆さん!私もです!」と書かれた直筆の色紙が飾られています。

TSUTAYA BOOKSTORE Oh!Me 大津テラス店
八原敦子さん
「地元の書店としてずっと作品を応援してきたのでうれしいです。宮島さんはユーモアのある方で、サイン会では一部の本に『当たり』と書き込んでいました。滋賀県への愛にあふれる主人公が登場するので、ぜひ多くの人に読んでほしいです」

大津市は盛り上がり

作品の舞台となった大津市では、すでに大きな盛り上がりをみせています。

滋賀県などは4月から大津市内の店や駅など作品にゆかりのスポットを巡るとデジタル地域通貨の「ビワコ」がたまるデジタルスタンプラリーを始めました。

13か所すべてをまわると、記念のクリアファイルがもらえます。

参加した親子連れは「作品の中に地元のことがたくさん出ていて、まちを歩くと主人公の成瀬がいそうな感じがしてきました」と話していました。

また、受賞作の続編で成瀬のアルバイト先のモデルとなった店では、お客様の声ならぬ「読者の声」として本の感想などを店内に掲示する取り組みを行っています。

中には県外から訪れた人のメッセージも多くありました。

平和堂営業企画部の橘淳子さんは「成瀬や著者の宮島さんへの応援メッセージ、本の感想なども書いてはってもらえるとうれしいです。成瀬が大津や滋賀を盛り上げてくれることを期待しています」と話していました。

成瀬の行く先は

JR膳所駅にPR看板を設置したびわ湖大津観光協会では、小説の舞台を巡る催しを夏ごろに企画するなどして、大津市の観光振興にもつなげたいとしています。

作品の発表、そして「本屋大賞」の受賞をきっかけに、どこまで地域を盛り上げてくれるのか、“成瀬の行く先”から目を離せない日々が続きそうです。

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