保育の課題などについてお伝えしているシリーズ“保育現場の今”。1回目は、認可に比べると行政の補助も少なく厳しい運営状況に立たされている認可外保育園の実態についてお伝えしました。

現場では、認可か認可外を問わず「保育の質」の維持に向けて、行政が各施設に対して、定期的に監査や調査を行っています。2回目の今回は、このうち認可外に対する立ち入り調査について取材しました。

立ち入り調査は、児童福祉法に基づく認可外への指導監督の一環として行われるもので、児童を保育するのにふさわしい内容や環境を確保しているかを確認します。県など行政の担当者が原則として年1回、行うことになっています。調査の対象は、▽必要な保育従事者を確保しているかや▽窒息死の予防のための睡眠中の乳幼児の呼吸のチェックなど、およそ100項目にのぼります。

立ち入り調査件数は約半数

2022年7月30日、那覇市の認可外保育園で赤ちゃんが死亡する事故が起きた問題について取材を進める中、この立ち入り調査が実施された施設数が2021年度までの4年間、およそ半数だったことが沖縄県への取材で分かりました。

さらに2022年度の状況について、県などが公開している各施設の個別情報を調べた結果、2022年12月10日時点で、対象となっている県内の401施設のうち、立ち入り調査が実施されたことが確認できたのは91施設で、およそ2割にとどまっていることが分かりました。

沖縄県“調査の代わりに巡回訪問を実施”

県は、立ち入り調査が滞っていることについて、調査を担当する職員の不足やコロナの感染拡大が原因だとし、担当者は「立ち入り調査の代わりに一部の施設には巡回訪問を行い状況把握に努めている」とコメントしています。

専門家“深刻な問題、行政は対応を”

私たちは、認可外への立ち入り調査が十分に実施されていない状況について、保育に詳しい沖縄キリスト教短期大学の照屋建太教授のもとを訪ねることにしました。

照屋建太教授 
保育施設で過ごす5年間は、寝返りがうてなかったのがうてるようになり、立ち上がって走ったり、ことばをしゃべったりするようになるなど、子どもがいろいろなことを吸収する大切な期間で、立ち入り調査が適切に行われなければ、那覇市の認可外保育園で事故が起きたように子どもの安全や安心が懸念される。新型コロナウイルスの影響があって立ち入り調査をやりにくくなったという事実はあるかもしれないが、かなり深刻な問題だと考えている。

その上で、照屋教授は、定期的な立ち入り調査は保育の質を維持するためには欠かせないと指摘しています。

照屋建太教授 
立ち入り調査で気付いたことを指摘してもらうことで、保育の質を少しでも高めることが出来る。立入調査できる人員配置を、行政にもしっかりやっていただきたいなというふうに思う。

取材後記

これまで複数の認可外保育園を取材してきましたが、運営的には厳しくでも、こどもたちの安全を第一に保育している施設がほとんどです。ただ、立ち入り調査によってさまざまな問題点や課題が見つかるケースが多く、行政はより積極的に取り組んでいく必要があると思います。また、照屋教授は、職員の配置の基準も厳しくなり、行政の責任も大きくなるとして、認可外から認可に移行できるよう、施設側も行政側も取り組みを進めるべきだと話していました。

NHK沖縄では、保育現場の現状や課題を「保育現場の今」と題して、シリーズでお伝えしていきます。皆さんの子どもたちが通う保育園の状況はいかがでしょうか、また、保育現場で働く皆さんの声もぜひお聞かせ下さい。