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心筋梗塞や脳梗塞の要因 塩分取り過ぎ新潟県民の食習慣

若くて健康でも油断禁物 摂取量把握し早期の食生活改善を
  • 2023年10月31日

いきなりですが、みなさんは毎日、塩分を何グラムぐらい取っているか把握していますか?
新潟県の主な死因別にみた死亡率では心筋梗塞などの心疾患や脳梗塞などの脳血管疾患が上位で全国に比べて男性の胃がんの死亡率も高くなっています。こうした疾患には共通する要因として塩分の取り過ぎがあり、実際、新潟県は全国的に見ても塩分摂取量が多いのです。塩分の取り過ぎがなぜ病気につながるのか、ふだんの食生活でどのようなことに気をつければいいのか、専門家に詳しく聞きました。
(新潟放送局 記者 阿部智己)

塩分の取り過ぎは心筋梗塞や脳梗塞の要因に

新潟県の主な死因別にみた死亡率のグラフです。1番多いのが、がん、2番目が心筋梗塞などの心疾患、そして脳梗塞などの脳血管疾患と続いています。がんでは男性の胃がんが全国に比べて死亡率が高くなっています。専門家は、これらに共通する要因として塩分の取り過ぎがあるといいます。

塩分の過剰摂取と病気の関連は明確

新潟県立大学 村山伸子教授

食生活と健康の関わりに詳しい新潟県立大学の村山伸子教授は、県民の健康にとって塩分の取り過ぎが大きな課題であり、食生活において改善すべきものだと言います。

村山教授
食生活の中で病気との関係が一番はっきりわかっているのが食塩。というのも、食塩をどのくらい食べるとどのくらい血圧が上がるかがはっきりわかっていて血圧と病気の関係も明らか。定量的に食塩をどのくらい取り過ぎることがどのくらいの疾患の発症につながるかわかっている。それゆえに、食塩は食生活の改善として一番にターゲットにするべきものと言える。もちろん高血圧には肥満や運動不足などほかの要因もあるが食塩が影響するということははっきりしている。

村山教授によりますと塩分を多く取ると血液中の塩分濃度が高くなり、それを薄めるために血液の量が増え、結果として血圧が上昇します。そして血圧が高い状態が続くと血管の壁が傷ついたり硬くなったりしてもろくなり脳血管疾患や心疾患につながってしまうのです。胃がんは血圧とは関係ありませんが、やはり塩分の取り過ぎがリスクを高めるといいます。

県も、塩分の取り過ぎは大きな課題だとして長年、減塩対策に力を入れてきました。その結果、昭和52年には18グラムもあった県民の1日あたりの食塩摂取量は、令和元年には9点9グラムと半分ほどにまで減少しました。しかし依然として国の目標値を3グラムほど上回り、全国平均に比べてもやや高い状態が続いています。

塩分取り過ぎ 新潟県民に特徴的な10の食習慣

なぜ新潟県民は食塩摂取量が多いのか。村山教授は県民がどのような食事から食塩を取っているのか明らかにするため、県内の自治体と協力して県民の尿に含まれる食塩の量と食習慣の関係を調査。その結果、10の食習慣の影響が明らかになりました。

村山教授
まず食べ過ぎですね。満腹まで食べるということ。それから主食を重ね食べしている。どういうことかというと、ラーメンとチャーハンとか、めん類と丼ものとか、カップラーメンとおにぎりとかといった食べ方。特に味のついた主食を2つ重ねて食べるという食べ方を頻繁にしている人は食塩摂取量が多い。

ほかにも▼丼ものやカレーライス、めん類など主食に味がついているものを週3回以上食べる
▼煮物を1日に4皿以上食べる▼漬物を1日に2種類以上食べる
▼たらこやすじこなどを1日に1回以上食べる▼めん類の汁を3分の1以上飲む
▼濃い味付けを好んで食べる▼外食を週に2回以上する▼毎日飲酒する
といった食習慣が塩分の取り過ぎにつながっていることがデータで裏付けられました。

県民の約8割が塩分取り過ぎ

平成23年に行われた調査では、実に県民のおよそ8割が国の目標値を超える塩分を摂取していました。村山教授は、まずは自分がどれくらいの塩分を摂取しているか知り、食生活に気をつけてほしいと話しています。

村山教授
どういうものをどれくらい食べると、どのくらいの食塩を摂取することになるのか感覚でつかめるようになるといいと思います。そのためにはスーパーなどで売られているお弁当とか加工食品、カップめんの表示を見てもらうのがわかりやすい。例えばカップラーメンならだいたい5グラムから6グラムなので、そういう1食の単位で理解できるようになるといいかなと。カップめんには必ず食塩量が書いてありますので、今度買うときに見ていただくといいと思います。

まずは塩分の摂取量を把握しよう

健康のために気をつけなければいけない塩分の取り過ぎ。しかし、実際に自分が1日にどれくらい取っているか把握するのはなかなか難しいですよね。

ふだん食べている食品にはどれくらい塩分が含まれているのか。
女子栄養大学出版部編の「塩分早わかり 第5版」を見てみると▼カップめんは約6グラム▼ミートソーススパゲッティで4点5グラム▼かけそばで4グラム▼塩ザケ80グラムで1点4グラム▼コンビニなどで売られているおにぎりで約1グラム▼食パン6枚切り、1枚で0点7グラムなどとなっています。

村山教授は塩分を多く含む食品として、つくだ煮や漬物などの味の濃い物、鍋やみそ汁、めん類などの汁物のほかに、加工食品にも注意が必要だと指摘しています。例えば、パンや魚肉加工品、ソーセージやハムなども塩分を多く含み、気をつけなければいけないポイントの1つだといいます。コンビニなどで売っているおにぎりも外側だけでなく中までしっかり味がついているため塩分が多くなっているということです。

県内ではさまざまな減塩対策も

以前に比べれば大幅に低下してきた県民の塩分摂取量ですが、近年は下げ止まりの傾向にあり、国の目標値に届かない状態が続いています。その一因として先にあげた加工食品や気軽に食べられるいわゆる中食、外食の影響もあるとみられています。県は県民が健康作りに取り組みやすい環境を整えようと、通常より塩分を減らした商品の製造や販売を促すなどさまざまな対策を行っています。このうち三条市では市内のスーパーと協力してこんな取り組みを行っています。

三条市のスーパー

三条市では「こっそり減塩作戦」

三条市にあるスーパーでは総菜コーナーに並ぶ総菜の中に、通常よりも塩分を減らした商品をそれと明示せずに並べています。市民が意識しなくても自然と減塩できるようあえて減塩と知らせない、名付けて「こっそり減塩作戦」が行われているのです。

買い物客
塩分は気にせずおいしいと思って総菜を買っているけど、塩分を控えめにしてくれているならありがたい。客の健康面までしっかり気配りをしていただけるというのはいいことですね。

買い物客
煮物はだしがきいていておいしいです。塩分が多いなっていう感じはしないから、やっぱり加減して作っているんじゃないかなと思います。

天然だし使用などで工夫 売り上げも好調

スーパー「マルセン」 太田雅悠専務

この店では天然だしを使うなどの工夫で、おいしさはそのままに塩分を減らした総菜を開発。通常の商品より手間はかかっているものの好評だといいます。

太田専務
減塩、イコール味が薄いとお客さんに思われてしまうのはおいしいものを提供しようとする我々にとって少し嫌なところだったので、塩分を減らしたからといって味が薄くならないように、だしをきかせたりだとか工夫したりしながら商品開発にはかなり力を入れました。地域密着でやっているスーパーなので少しでも地域の健康寿命に寄与することができれば本望で、こういう取り組みの輪が広がっていくことを期待しています。

減塩のためのポイントは

減塩のためにふだんの食生活ではどのようなことに気をつければいいのか、新潟県立大学の村山教授や県は次のようなポイントを上げています。

▼外食や加工食品、インスタント食品は控えめに▼県が推奨するものなど健康に配慮した商品を選ぶ
▼味の濃い煮物や漬物を食べ過ぎない▼ラーメンやうどんなどの汁を飲み過ぎない
▼しょうゆやソースなどの調味料はおかずにかけるのではなく、おかずを軽くつける。

また、野菜や果物に含まれる「カリウム」は塩分の排出を促して血圧を下げる効果があり、野菜や果物を食べることも大切だということです。県は毎食、野菜料理を1皿以上食べようと呼びかけています。

若くて健康でも油断禁物 食生活改善は早期から

まだ若かったり、血圧も高くなく健康だったりすると自分は大丈夫だと思ってしまうかもしれませんが、村山教授は塩分の取り過ぎの状態が長く続くことが問題だとして、若い頃からの食習慣が重要だと指摘しています。

村山教授
日本人は年齢とともに血圧が上がりやすく、人生の後半になって問題が出てくることが多い。高齢になってからの血圧上昇を抑えるためにも若い頃から食塩摂取量を低くしておくことが有効です。ラーメンや丼ものを食べてはいけないということではなく、量や頻度が問題なので日頃からいろいろなものを適度に食べるように心がけてほしい。

  • 阿部智己

    新潟放送局 記者

    阿部智己

    2008年入局 福井局 札幌局 報道局科学文化部を経て新潟局に赴任。原子力取材などを担当

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