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新潟水俣病「第5次訴訟」 一部の原告対象に判決へ

提訴からおよそ10年 原告は何を訴えてきたのか
  • 2023年10月31日

 

新潟水俣病と認定されず救済策の対象にもならなかった151人が国と原因企業に損害賠償を求めている「第5次訴訟」は、10月19日、原告の一部に対する審理が事実上終わり判決は2024年4月に言い渡されることになりました。提訴からおよそ10年。原告は何を訴え、裁判ではどのような点が争われてきたのか、記者解説を交えてお伝えします。(新潟放送局 記者 今井桃代)

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提訴からまもなく10年 原告の訴えは

訴えを起こしているのは手足のしびれなどの症状があるものの水俣病と認定されておらず
2009年に施行された特別措置法による救済の対象にもならなかった新潟県出身の151人で、
国と原因企業に対して損害賠償を求めています。

新潟水俣病をめぐる「第5次訴訟」は2013年の提訴からまもなく10年。
裁判が長期化する中、151人の原告のうち29人が亡くなっています。

10月19日、新潟地方裁判所で開かれた裁判で、原告団長を務める皆川栄一さん(80)は
「私たち原告が新潟水俣病であることを知ってもらうための10年間の裁判はあまりにも長すぎた。
 すべての水俣病被害者救済につながる歴史的な判決となるよう願っている」と訴えました。

”立証不十分” 国は棄却求める

一方、国は「昭和41年以降、阿賀野川流域で水俣病が発症するほどの汚染はなかった。魚介類を食べて水俣病にり患したという原告側の訴えは、立証が不十分で棄却されるべきだ」などと主張しました。

これまでの裁判で、原告のうち審理が進んでいる47人について判決を先に言い渡すことで双方が合意しています。19日の裁判で、この47人に対する審理が事実上終わり、判決は来年4月18日に言い渡されることになりました。

解説①裁判の争点は?

主な争点は、手足のしびれなどの症状を訴えている原告が水俣病の患者と認められるかどうかです。

 

患者の認定は、国が設けた基準に基づいて(公害健康被害の補償等に関する法律)審査されますが、
認められるには、手足のまひといった「感覚障害」や歩行が困難になる「運動失調」など、
複数の症状の組み合わせが必要とされます。

 

さらに2014年には環境省が、摂取した水銀と症状との因果関係を示す客観的な資料を求める通知を出すなど認定のハードルが高くなりました。

県では、こうした基準に基づいて年に2、3回、審査会を実施していますが2020年12月に行われた審査会で1人が認定されたあとは認定者がいません。

2009年には水俣病に認定されていない人を救済する特別措置法が施行されましたが、申請はおよそ2年あまりで締め切られ、締め切りに間に合わなかった人やそもそも対象にならなかった人が数多く出ました。今回提訴した人たちも、こうした人たちが大半だということです。

解説②双方の主張は?

これまでの裁判で水俣病の症状を訴えている原告のほかに、
水俣病の診断にあたった医師や被告側が申請した神経内科の医師などが証言台に立ちました。

 

原告は阿賀野川やその支流などで汚染された魚を食べていたことで水俣病特有の手足のしびれなどの症状が出たことなどを訴えています。

一方、被告側の医師は、原告の訴えている症状はほかの病気の可能性があり、水俣病とは断言できないなどと主張しています。

解説③今後の見通しは?

今後に向けて注目される判決が9月に大阪でありました。

水俣病をめぐる同様の集団訴訟は大阪、熊本、東京でも起こされていて、9月に大阪地方裁判所が原告全員を水俣病と認定し、国などに賠償を命じる判決を言い渡したのです。その後、国などが控訴しましたが、新潟訴訟の原告側の弁護士はこの判決が与える影響は大きいと期待しています。


ただ原告151人のうち47人に対する判決は来年4月18日に予定されていますが、その後も、ほかの原告の審理は続きます。

原告の平均年齢は74歳となり一刻も早い解決が望まれるなか、新潟地方裁判所の判断が注目されます。

 

  • 今井桃代

    新潟放送局 記者

    今井桃代

    2022年入局。新潟局が初任地。事件・事故や司法、クマ対策などを取材。

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