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新潟市で61年ぶり 天然ガス開発技術の継承を

  • 2023年02月28日

    新潟市内で61年ぶりに天然ガス開発を進める会社があります。日本は国内で消費する天然ガスの実に97%以上を海外からの輸入に依存。エネルギー安全保障などの観点から国産のエネルギーに注目が集まるなか、採掘を進める会社を取材しました。(NHK新潟放送局 草野大貴)                  

     

    天然ガス開発のため建てられたやぐら(新潟市西蒲区)

    61年ぶりの天然ガス開発に湧く

    地下深くへと掘削が行われる


    新潟市西蒲区の田園地帯に建てられたやぐら。その真下では地中への穴が掘られていました。ここから湧き出てくるのは天然ガス。この会社では昭和33年以来、61年ぶりに認可を得て始まった開発ということで現場も活気にあふれていました。

    ガス開発会社の諸橋民昭取締役

    東邦アーステック 諸橋取締役
    新潟平野は天然ガスが採れるエリアが大体は推定されています。掘れば必ずガスが出るというのはもう分かっているような形ですね。60年ぶりの開発ということもあり活気づいています。

    新潟県は天然ガス産出 日本一

    新潟県は全国1位の天然ガスの生産地。年間の生産量は17億立方メートル、東京ドーム1400個分に相当します。このうち新潟市で採れる水溶性のガスは、新潟平野の地下500メートルから1000メートルにある「かん水」と呼ばれる水から採取されます。

    この「かん水」をくみ上げたあと特殊な装置にかけ、ガスと水に分けます。この会社でくみ上げる「かん水」は1日に10万立方メートル。採取されたガスは都市ガスの一部などとして使われます。

    かつては地盤沈下も 新対策で開発再開

    昭和40年代の新潟市

    新潟市内では戦後にかけて盛んに天然ガスが産出されましたが、新たな採掘は最近まで中断されていました。原因は「地盤沈下」です。「かん水」のくみ上げを続けた結果、市内では深刻な地盤沈下が発生。港が水につかるなど市民生活に大きな影響が出ました。事態を重く見た新潟県は昭和48年、事業者に自主規制を要請、新たな採掘は事実上禁止されました。
    これを受けて事業者側は地盤沈下を起こさない採掘方法を模索。「全量還元方式」と呼ばれる技術を取り入れ、実用化を進めてきました。くみ上げた水をすべて地下に戻すもので水が浸透しやすい砂や砂利の地層が多い新潟市に向いているとされます。

    現在、市内で開発を進める会社は「全量還元方式」に加え、地層の深い部分の動きを観測できる装置を設置。人工衛星を使った監視体制もつくるなどして開発の了承にこぎつけました。また、緊急時に対応できるようガス生産は24時間監視されています。

    国産資源開発で「エネルギーに携わる人材を育成」

    再び注目を浴びる新潟市の天然ガス。水溶性ガスであるため大量には採取できませんが、開発を進めるのには2つの意味があると開発会社の社長は語ります。

    ガス開発会社の設楽琢治社長

    東邦アーステック 設楽社長
    1つは県内でガスを採ることで国際紛争や商品の市況、あるいは為替相場の影響を受けないでガスを供給することができます。国産資源を持つことによって国際的な危機や災害時にも安定した燃料の供給体制をとることができる。
    もう1つが資源に関わる人材育成です。天然ガスに関して新潟県にはすべての知識や技術がそろっていると思います。天然ガスがどこにあるのかを探すのから始まって、井戸を掘る、あるいは実際にガスを採取する。それを運んで使う。それぞれに技術を持っています。新潟県として地産地消のエネルギーとして開発を続けることによって、それらの技術を身近に経験し身に付けることができます。
    エネルギーというのは将来にわたって重要なテーマです。海外から輸入してくるものだけあればいいと思う人もいると思いますが、エネルギーを知る人材がいることが重要。エネルギーを輸入する際、いろんな国と交渉する際に自らがそのエネルギーを持っているかどうかで全然違ってくると思います。そういった資源やエネルギーに関わる人材を育てるということが長期的には私は一番大事だと思っています。

    取材した会社では今後、2026年までに新潟市内で合わせて22本の井戸を掘って天然ガスを採掘する予定です。また市内ではほかの企業も天然ガスの採掘を増やす計画で、新潟のガス開発をめぐる動きが活発になりそうです。
     

      • 草野大貴

        新潟放送局 記者

        草野大貴

        徳島局から2022年8月に新潟に赴任。実際にかん水をなめた。なんとも言えないしょっぱさと金属の風味が当分の間、舌に残った。

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