災害列島 命を守る情報サイト

これまでの災害で明らかになった数々の課題や教訓。決して忘れることなく、次の災害に生かさなければ「命を守る」ことができません。防災・減災につながる重要な情報が詰まった読み物です。

地震 想定 知識

140文字でわかる!! 「南海トラフ巨大地震」のキーワード

「南海トラフ巨大地震」についてのニュースなどを見ていると、知らない言葉が登場するかもしれません。その時はこのページを見て下さい。知っておきたい「キーワード」について、その意味を140文字以内でまとめました。より深く知りたい人のために関連記事も紹介します。

2023年3月NHKスペシャルで紹介した内容です

目次

    南海トラフ巨大地震

    南海トラフ(静岡県の駿河湾~宮崎県沖の日向灘)というプレートの沈み込んでいる場所で起きる地震。歴史的に巨大地震が繰り返し起きていて、今後発生すると、最悪の場合、関東から九州にかけての30都府県で約32万3000人が死亡すると想定されています。

    関連記事「南海トラフ巨大地震 被害想定」はこちら

    大地震両川口津浪石碑

    大阪市浪速区にある石碑です。江戸時代末期の1854年に2日連続で発生した安政東海地震と安政南海地震の犠牲者を慰霊し、後世に語り継ぐために建てられました。津波で大きな被害を受けたこと、過去の巨大地震の教訓を生かせなかったことが書かれています。

    関連記事「忘れられた災害の記憶」はこちら

    震災前過疎

    南海トラフ巨大地震の被害想定が出た後の現象です。太平洋沿岸の自治体などでは、あまりに津波や地震の被害が大きい想定だとして街を出て行く住民が相次ぎ、過疎化が進んだと専門家や自治体が指摘。地震の前に起きたため、このことばが使われました。

    南海トラフ地震臨時情報

    南海トラフ沿いで「巨大地震の起きる可能性がふだんより高まった時」に気象庁が発表します。主に「巨大地震警戒」と「巨大地震注意」があり、「巨大地震警戒」が出ると、1週間の事前避難が必要とされる地域もあります。これまで出たことはありません。

    関連記事「南海トラフ地震臨時情報」はこちら

    南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会

    南海トラフでの巨大地震発生の可能性を評価する検討会です。地震学の専門家6人で構成され、「南海トラフ地震臨時情報」の発表などについて気象庁に助言します。毎月1回定例会合を開いているほか、南海トラフ沿いで異常が現れた場合には臨時の会合を開きます。

    関連記事「南海トラフ地震臨時情報」はこちら

    スロースリップ

    スロー地震と呼ばれる現象の1つ。通常の地震は断層が高速でずれ動くのに対し、プレート境界がゆっくりとずれ動くため体で感じる揺れが発生しません。東日本大震災の発生直前にも東北沖でスロースリップが観測され、巨大地震との関連が注目されています。

    関連記事「南海トラフ巨大地震予知はできるの?」はこちら

    津波避難タワー

    住民が津波から一時的に命を守るため整備された建築物です。地震発生後、短時間で津波に襲われ高台に避難する余裕がない地域で整備されています。2021年には全国で502棟が整備されていて、このうち435棟が南海トラフ巨大地震に備えたものです。

    関連記事「津波からの避難」はこちら

    住宅の耐震化

    木造住宅では柱とはりの間に「筋交い」を入れ補強をする手法などが知られています。命を守るための重要な対策ですが、2018年の耐震化率は全国の推計で87%にとどまっています。国や都道府県、市区町村が費用の一部を負担する支援制度を設けています。

    関連記事「津波で流されてしまうのに…耐震化急増」はこちら

    いのち山

    津波などから一時的に逃げる場所として人工的に整備された丘のことです。津波避難マウンド、人工高台など地域によって様々な呼び方があります。静岡県、徳島県、宮崎県などで整備が進んでいます。

    昭和東南海地震 昭和南海地震

    いずれも南海トラフで起きた巨大地震です。1944年に発生した「昭和東南海地震」(M7.9)では、揺れや津波で東海地方を中心に1200人余りに犠牲になったとされ、その2年後に「昭和南海地震」(M8.0)が発生。四国などで1300人以上が犠牲になりました。

    関連記事「南海トラフ巨大地震 連続する”半割れ”とは」はこちら

    地震学会と地震予知

    日本地震学会は「地震予知」について、「時間を指定した短期的な予知は現在の技術では困難」「科学的に検証され確立された地震予知手法はまだない」という見解を公式に示しています。日本地震学会は、地震学の研究者などで構成される学会です。

    関連記事「南海トラフ巨大地震の予知はできるの?」はこちら

    内閣府防災

    内閣府内の組織のひとつ、内閣府防災担当の通称です。国の防災政策を一体的に進めるために2001年の省庁再編にあわせて設置され、担当大臣も置かれています。国土交通省や気象庁からの出向者も多く、防災計画や被害想定の作成などを担当しています。

    緊急地震速報

    強い揺れへの警戒を呼びかける情報。地震波を検知して震源やマグニチュードを瞬時に計算し、各地の震度を予測。震度5弱以上または長周期地震動階級3以上の地域があると発表されます。ただ、直下型地震の場合には緊急地震速報が間に合わないことに注意が必要です。

    長周期地震動

    高層ビルなどを大きく揺らす周期の長いゆっくりとした揺れです。東日本大震災でも発生し、東京都心のビルを大きく揺らしたほか、大阪府の咲洲庁舎の最上階では揺れ幅が最大3m近くに達しました。2月から緊急地震速報の発表に長周期地震動が追加されました。

    関連記事「高層ビル・タワマンを襲う長周期地震動」はこちら
    関連記事「超高層ビル“長周期地震動”対策の最新技術」はこちら

    震度7

    気象庁の表す10段階の震度で、最も強いのが「震度7」です。これまでに発表されたのは①兵庫県南部地震(1995)②新潟県中越地震(2004)③東北地方太平洋沖地震(2011)④熊本地震(2016)⑤北海道胆振東部地震(2018)の5回です。

    大津波警報

    3メートルを超える津波が予想される場合に気象庁が発表します。東日本大震災(2011)のような津波が発生するおそれがあり、沿岸部や川沿いでは直ちに安全な場所に避難する必要があります。気象庁は、地震発生から約3分以内の発表を目指すとしています。

    関連記事「津波が発生したら…その時どうする?」はこちら

    ブロック塀の倒壊

    激しい揺れが起きると発生し特に背の低い子どもに危険が及びます。45年前の宮城県沖地震(1978)で被害が相次ぎ対策が進められてきましたが、大阪北部地震(2018)でも通学中の小学4年生の女の子が亡くなっています。

    関連記事「“魔のブロック塀” あなたの近くにも」はこちら

    半割れ

    南海トラフ巨大地震の想定震源域の半分ほどのエリアがずれ動き、マグニチュード8クラスの巨大地震が起きることをいいます。「半割れ」が起きると隣接する領域でも巨大地震のおそれが高まるとされ、過去にも実際に「半割れ」のあとに巨大地震が起きています。

    関連記事「南海トラフ巨大地震 連続する”半割れ”とは」はこちら

    液状化現象

    地震の揺れの影響で地盤が液体のようになる現象です。埋め立て地などで起きやすく、住宅が傾く被害が出ると、建物部分が壊れていなくても住み続けられなくなることがあります。東日本大震災や阪神・淡路大震災など大きな地震でたびたび発生しています。

    関連記事「こんな場所で…となる前に “底なし沼”に備える」はこちら
    関連記事「液状化と道路陥没はなぜ起こる? 足元に潜む地盤災害」 はこちら

    逆断層

    地震の発生メカニズムの1つです。地震を起こす断層に両側から力が加わり、岩盤がもう一方の岩盤の上にのし上がるようにずれ動きます。縦方向に変動するため、海底で起きると津波が起きやすくなります。2011年の東北沖の巨大地震のメカニズムも逆断層でした。

    関連記事「活断層の地震と言われて わかりますか?」 はこちら

    プレート境界

    地球の表面を覆う岩盤=プレートどうしがぶつかり合う場所です。プレートはゆっくりと動いているため、その境界には年単位でひずみがたまり、時折大きな地震が起こります。2011年の東北沖の巨大地震や過去の南海トラフ巨大地震は、こうした場所で発生しました。

    関連記事「3.11 東日本大震災 “M9.0巨大地震”の衝撃」はこちら

    モーメントマグニチュード

    地下の岩盤のずれ動いた面積や量などから計算するマグニチュード(地震の規模)です。大きな地震の規模を正確に表しやすく、世界的に使われています。計算にやや時間がかかるため、気象庁は速報性を重視した「気象庁マグニチュード」という別の指標をふだん使っています。

    トリアージ

    災害や事故で多くのけが人が出た際、けがの程度によって治療の優先順位を決めることです。色のついたタグが使われ、黒(救命不可能)、赤(最優先)、黄色(非緊急)、緑(軽症)に識別されます。例えば通常の骨折は黄色や緑に分類され、治療が行き届かない可能性もあります。

    関連記事「“ヒーローは助けに来ない” 医師からの警告」はこちら
    関連記事「医師はなぜ現場に向かうのか? 苦悩するDMAT」はこちら

    南海トラフ地震関連解説情報

    南海トラフ沿いの地震活動や地殻変動などについて伝える、気象庁の情報です。実は、ふだんも毎月1回発表されています。巨大地震が発生し「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたあとは、この情報で地震活動などの状況の推移などが発表されることになっています。

    関連記事「南海トラフ巨大地震 臨時情報」関連記事はこちら

    災害用伝言ダイヤル

    大地震などの際に利用できる音声での伝言板サービスです。「171」をプッシュして音声ガイダンスに従って操作すると、固定電話や携帯電話の番号を指定して、メッセージを録音したり確認したりできます。毎月1日と15日には体験利用もできます。

    関連動画「災害時の連絡法」はこちら

    事前避難対象地域

    「南海トラフ地震臨時情報 巨大地震警戒」が発表された時、次に起きる可能性がある巨大地震に備えて1週間の事前避難が求められる地域です。関東~九州の85市町村が指定されています(2022年4月時点)。市町村のホームページなどで確認できます。

    関連記事「46万人の事前避難どうする?」はこちら

    緊急消防援助隊

    大規模な災害が起きた時に全国の消防から被災地に駆けつけ、救助活動などを行う部隊です。阪神・淡路大震災を教訓に創設され、東日本大震災でも活動しました。南海トラフ地震は被害が広域になることなどから、人員が不足する可能性も指摘されています。

    関連記事「3日で助けは来ない? 南海トラフ巨大地震 消防の救助は」はこちら
    関連記事「南海トラフ巨大地震 消防は被災地にたどり着けるのか?」はこちら
    関連記事「大災害時代 あなたに助けが来ないかもしれない…」はこちら

    指定避難所

    災害から避難した人が、災害の危険がなくなるまで滞在したり、自宅を失った後に避難生活を送ったりする場所です。自治体が指定します。似たような名前に「指定緊急避難場所」がありますが、これは災害が切迫しているとき緊急に逃げ込む場所を指します。

    関連記事「避難生活…ここに気をつけて」はこちら
    関連記事「避難所で大切なTKBとは」はこちら
    関連記事「避難所で命を守るスフィア基準」はこちら
    関連記事「避難所に泊まってみたらわかったこと」はこちら

    大規模災害に備えた備蓄

    国は、1週間分が望ましいとしています。水は1人1日3リットル必要で、食料は日常的に使うものを多めに買っておく「ローリングストック」だと負担が少なくて済みます。災害用トイレに加え、薬や乳児用の粉ミルクなど家庭に合った備蓄も大切です。

    関連記事「災害に遭う前に 生活のために備蓄しよう」はこちら
    関連記事「災害用の備蓄トイレ どんな種類が?どう使う?」こちら

    災害関連死(震災関連死)

    災害による直接の死は免れたものの、その後の避難生活による体調の悪化などが原因で死亡すること。国は、東日本大震災などのとき「震災関連死」とも呼んでいます。熊本地震(2016)では地震の直接的な被害での死者より、関連死の方が多くなっています。

    関連記事「一度は助かった命 震災関連死3786人」はこちら

    「国難」級の災害

    国家の存亡に関わるような災難という意味。国の検討会が「南海トラフの巨大地震のような国難」などという表現が用いているほか、専門家で作る土木学会は「国の国力・国勢を著しく毀損し、国民生活を長期に低迷させうる力を持つ巨大災害」が「国難」をもたらしうるとしています。

    関連記事「ドミノ倒しのように… 巨大地震で日本経済を襲う危機」はこちら


    キーワード集 取材班/老久保勇太 津村浩司 徳田隼一 若林勇希 宮原豪一 藤島新也


    banner
    NHK防災・命と暮らしを守るポータルサイト