わが家の地盤は大丈夫!? 盛土のリスクを調べるには
地震や大雨などの災害で崩れるリスクがあるとされる「盛土」。
日本では多くの家が人工的に造成された「盛土」の上に建っています。
我が家の地盤は大丈夫? 調べ方と対策のポイントをまとめました。
2023年1月のNHKスペシャルで紹介した内容です
目次
そもそも「盛土」って?
「盛土(もりど)」は、住宅を建てる平らな土地を作るために、土を盛った部分のことです。
住宅への需要が高まった高度経済成長期以降、各地で盛土による宅地の造成がさかんになりました。すべての盛土が危険な訳ではありませんが、過去の大地震の際には、盛土が崩れる被害が繰り返し発生しています。
盛土には、大きく分けて谷のような地形を土砂で埋め立てた「谷埋め型」と、傾斜地に土砂を盛って平地を作る「腹付け型」があります。盛土には土を抑えるための「擁壁」が設置されています。
自宅の地盤は「盛土」か…調べ方はこちら
まずは自治体が公開している資料などから、自宅の地盤が盛土かどうかを調べることがスタートです。これから住宅を購入する人は、必ず不動産業者などに確認して下さい。
1.「大規模盛土造成地マップ」を確認する
自治体は「大規模な盛土造成地(3000平米以上など)」をマップで公表することになっています。まずは、自宅が大規模な盛土造成地にあるかどうかを確認しましょう。
確認する時は国土交通省のWEBサイト『重ねるハザードマップ』を使うと便利です。
①インターネットで『重ねるハザードマップ』を検索
②ホーム画面の「地図を見る」を選択して、地図画面を開く
③画面左 「全ての情報から選択」⇒「土地の特徴・成り立ち」⇒「大規模盛土造成地」と進む
地図上に緑色で表示された場所が「大規模な盛土造成地」です。地図上部の検索部分に自宅の住所を入れると、大規模盛土造成地に含まれるかどうかが確認できます。
『重ねるハザードマップ』は2020年3月末時点のデータが掲載されています。その後、情報が更新されている可能性があるので、念のため、各自治体のWEBサイトで最新の情報を確認して下さい。インターネットで「大規模盛土造成地マップ+自治体名」で検索して下さい。なかには「大規模盛土造成地」が存在しない市町村もあります。
自宅のエリアが「大規模盛土造成地」ではなかったとしても安心しないでください。規模の小さい盛土に建っている可能性は残っているからです。次の方法で調べてみて下さい。
2.「土地条件図」や「今昔マップ」で調べる
国土交通省の『重ねるハザードマップ』を使って、「土地条件図」を確認します。
「土地条件図」は都市部を中心に、地形の特徴をまとめた地図です。
地図画面左のパネルで「すべての情報から選択」⇒「土地の特徴・成り立ち」⇒「地形分類(人工地形)」と選択。ピンク色で表示された部分が「盛土」や「埋め立て地」です。 自宅がピンク色のエリアにある場合は、地盤が盛土の可能性があります。
より細かく調べる時は『今昔マップ』が便利です。
『今昔マップ』は現在と過去の地形図を見比べることができるサイトです。
過去の地形図では谷だった場所が、現在の地形図で平地になっている場合、盛土で造成された土地の可能性があります。自宅の場所を確認してみて下さい。地形図では、標高が高い方に向かって等高線が食い込んでいる場所が「谷」を示します。
3.不動産業者などに聞く
土地を購入した際に取り引きをした不動産会社などは、過去の土地の開発履歴を把握している可能性があるので聞いてみましょう。これから住宅を購入する場合は「土地の開発履歴を教えて下さい」と質問するようにしましょう。ただ、不動産会社が詳しく知らないケースもあります。
説明に不安を覚えた時や納得出来ないときは専門家に相談することも大切です。
「いつ開発したのか」は重要な情報です。一般的に、盛土された年代が古いほどリスクが高まります。国は2006年に排水設備の基準などを設けたため、過去の災害では2006年以降に造成された盛土では被害が少ないことがわかっています。
住宅の購入時には「重要事項説明」という手続きがあります。「宅地建物取引業法(宅建業法)」に基づく手続きで、売り手が購入者に対して「購入の判断に影響する大切な情報」を説明するものです。ただ、単に盛土だというだけでは、説明の義務がありません。こちらから質問しないと、知っていても教えてもらえない可能性があります。家や宅地を案内してもらう早い段階で、忘れずに確認するようにしてください。東日本大震災で宅地の被害を受けた人を取材すると、多くの人が「盛土の上だと聞いたことが無かった」と話していました。
4.「地盤品質判定士」に相談する
地盤品質判定士は、宅地の地盤災害を防ぐために地盤の品質を確認・評価する地盤のプロ。国土交通省の登録資格を持つ専門技術者です。地盤品質判定士でつくる「地盤品質判定士会」では相談を受け付けています。Webサイトの問い合わせフォームから相談できます。メールでの簡単な相談は無料。面談や書面の作成は費用がかかります。
5.自治体の窓口で確認する
一定規模以上(500平米超など)の盛土造成地を作る場合、事前に自治体に届け出をすることになっています。その際には、開発する場所の平面図や断面図も提出されることがあります。最近開発されたケースでは自治体が資料を保管していることがあります。自治体の窓口に聞くとわかることがあります。
地盤が盛土だったら…リスク調べ方はこちら
盛土の造成地がすべて危険なわけではありません。 自宅の地盤が盛土だった場合は、災害時に崩壊するリスクがどれくらいあるのか、確認することが大切です。
1.大規模盛土造成地の場合は自治体に聞く
自宅が「大規模盛土造成地」に含まれている場合は、自治体に安全性について確認して下さい。自治体は、現地調査や崩れやすさの数値化を行っていて、安全性を評価することになっています。評価が終わっていれば結果を教えてくれます。
2.自分で危険な兆候がないか確認する
危険な兆候がないか自分の目で確認してみましょう。次のような変化があった時は危険が迫っているサインかもしれません。専門家などに相談しましょう。
<擁壁がある場合>
●大きな亀裂が入っている
●継ぎ目が前後や上下にずれている
●水がしみ出しコケや草が生い茂っている
●ふくらんでいる
●水抜き穴が土砂や植物で詰まってしまっている
●晴れている日も水がしみ出している
●しみ出している水の色が赤茶色をしている
<擁壁がない場合>
●自宅近くの道路に大きな亀裂が入っている
●道路が沈下している
●道路脇の側溝の継ぎ目がずれている
国土交通省が『我が家の擁壁チェックシート』を公開しています。 イラスト付きのチェックシートにそって擁壁の確認を進めると、対策の必要性を点数で評価してくれます。活用してみて下さい。
3.「地盤品質判定士」に相談する
自分の目で確認して不安な兆候がある場合は「地盤品質判定士会」Webサイトの問い合わせフォームから相談できます。メールでの簡単な相談は無料。面談や書面の作成は費用がかかります。
4.自治体の相談会に参加する
自治体によっては地盤の不安を相談する相談会を無料で開催しているケースがあります。自治体に問い合わせをしてみて下さい。
危険がありそうなら…対策ポイントはこちら
崩壊の危険性がある場合は、事前に対策することが大切です。対策をしないままでいると、崩れて周囲の住宅などに被害を与えてしまう可能性もあります。費用は安くはありませんが、被災した後で復旧するよりも安く済むケースもあります。
1.「地盤品質判定士」に対策工事の内容を相談する
地盤品質判定士に、どのような工事が必要か相談して下さい。直接、具体的な企業は紹介してくれませんが、どのような工事を、どんな業者に依頼すれば良いか助言してくれます。
2.複数の業者から見積もりを取って工事する
擁壁の固定や排水管の設置などで費用は数十万から数百万円かかることもあります。工事を実施する場合には、複数の業者から見積もりを取って価格を見比べましょう。複数社から見積もりを取ることで、適正な価格で工事が実施できます。
東京・八王子市の伊原江太郎さんは、自宅の擁壁が老朽化して、大地震が起きた場合に崩れる可能性あることから対策工事を実施。擁壁を鉄製の板で固定し、地下水を排水するパイプを設置した。費用は約300万円。伊原さんは「費用の負担は小さくはなかったですが、被災した後を考えれば安く済みますし、安心感があります」と話していました。
3.「地震保険」に加入する
安全対策そのものではありませんが、自宅の地盤が盛土の場合には地震保険に入っておくと良いです。地震の揺れで地盤が崩れたり液状化したりして建物が大きく傾いた場合には、全壊などの判定を受けて、地震保険の補償の対象になります。住宅購入時に入る火災保険だけではカバーされないので注意が必要です。2004年の中越地震では、地震保険に入っていたことで、補償を受けて復旧できた人もいました。
NHKスペシャル「住宅地に潜む 盛土リスク 阪神・淡路大震災 残された課題」取材班
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