災害列島 命を守る情報サイト

これまでの災害で明らかになった数々の課題や教訓。決して忘れることなく、次の災害に生かさなければ「命を守る」ことができません。防災・減災につながる重要な情報が詰まった読み物です。

水害 台風 教訓 知識

記録的な大雨 命を守る想像力を

日本各地を襲う記録的な大雨で気象庁は、最大級の警戒を呼びかけています。住んでいる土地でどんな災害が起きるおそれがあるのか。昨今の災害で記録された貴重な映像を見て、命を守る想像力を働かせてください。
(ネットワーク報道部記者 吉永なつみ)

2018年7月放送の西日本豪雨ニュースに関連する内容です

目次

    堤防の亀裂から泡

    鬼怒川の堤防が決壊し、茨城、栃木、宮城の3県で多くの人が犠牲になった平成27年9月の関東・東北豪雨。堤防が決壊した茨城県常総市の15キロほど上流にある地区で撮影された映像です。

    再生時間 0:26

    増水した川から堤防の上の道路にカメラが向くとアスファルトに亀裂が見えます。

    現場を目撃した人は「亀裂からぶくぶくと泡が吹き出し、空気が漏れる音がスースーとしていました」と語っています。

    これは「漏水」といって、堤防が決壊する前兆とされる現象です。

    川の水位が高くなって堤防に水がしみこむことで、内部の圧力が高まり、水や空気が吹き出すことによって起こります。

    増水した川には絶対に近づいてはいけませんが、万が一こうした現象を見かけたら、直ちに避難してください。

    なにより川の水位の変化に注意するとともに自治体の出す避難情報に従ってください。

    都市型水害 あっという間に激流が

    近くに川がない住宅地でも、浸水被害が出ることがあります。

    平成28年7月15日、千葉県市原市の付近では午前11時までの1時間に、気象庁のレーダーによる解析でおよそ100ミリの猛烈な雨が降ったとみられ、「記録的短時間大雨情報」が発表されました。その時に市内の住宅地で撮影された映像です。

    再生時間 0:21

    住宅街の下り坂の道路を大量の水が濁流のように流れています。

    水は住宅の壁や街路樹にあたって激しい水しぶきをあげています。

    こうなったら家の2階などに避難してください。

    東京などの大都市では、1時間に50ミリ程度の非常に激しい雨が降っても排水できるように、下水道などを整備していることが多くなっていますが、それ以上の雨が降ると排水が追いつかなくなります。

    住宅街では狭い道路に水が集まるうえ、高台で排水されなかった雨水が低いところに流れ込み、水路のようになることがあるのです。

    都市の死角 アンダーパス

    また、線路や道路などの下を通る「アンダーパス」にも要注意。道路が深く冠水していることに気づかずに車で進んでしまった人が死亡する事故もたびたび起きています。

    夜間や雨風が強まり見通しが悪い時には冠水に気づきにくいので、運転する場合には十分な注意が必要です。

    人里を襲う蛇?

    平成26年7月、男子中学生1人が犠牲になった長野県南木曽町で起きた土石流災害。その瞬間を捉えた映像があります。

    再生時間 0:15

    コンクリートの段差の上を濁った水が流れていますが、映像の時間表示で午後5時41分ごろ、突然、上流のほうから白い水しぶきが上がります。

    そして土石流が押し寄せ、一気に周囲の樹木をなぎ倒します。激しい土石流が人里を襲いました。

    地元では、土石流のことを「蛇ぬけ(じゃぬけ)」と言います。

    人々は、土石流を蛇がはって山を降りてくる姿にたとえて恐れたのです。

    白い雨が降ると…

    古くから「白い雨が降ると蛇ぬけが起こる」、つまり周辺が白く見えるほどの激しい雨が降ったあとには、土石流が起きるという意味の言い伝えがあります。

    そして「蛇ぬけの前はきな臭いにおいがする」という伝承もあります。

    土石流の前兆現象はほかにもあります。

    ▼発生の2~3時間前・川の水に異常な濁りが生じる。
    ▼発生の1~2時間前・木が流れてくる・石が転がる音がする。
    ▼発生直前~発生・雨が降っているのに川の水が急に減少する・ゴーという地鳴りがする・土臭いにおいがする。
    (国土交通省「土砂災害警戒避難に関わる前兆現象情報検討会」)

    過去の災害を知って五感を研ぎ澄ませて

    「生臭いにおいがした」「からから小石が流れる音がした」こんな証言を、記者も被災地で聞いたことがあります。

    島根県では、平成25年8月に記録的な大雨に見舞われました。県西部の邑南町日貫地区は、土砂災害で20棟以上の住宅に被害が出ましたが、200世帯500人の住民は全員無事でした。

    住民はどのように命を守ったのか。災害のあと、地元の人たちに聞いて回りました。避難勧告が出る2時間前に自主的に避難したという男性に、避難した決め手を尋ねると、「裏山から石が流れる音が聞こえた」「沢の水が濁り始めた」と言います。

    実はこの地区、昭和58年に大水害を経験しています。「58豪雨」とも呼ばれるこの災害では、島根県内で107人の死者と行方不明者が出ました。

    先ほどの男性は、「58を経験していたからこそ異常に気づき早く避難できた」と話していました。ごうごうと大雨が降る中では、防災行政無線の音が聞き取れるとも限りません。

    自分の暮らす土地の過去の災害を知ったうえで、小さな変化に気づいて行動に移せるかが、生死を分けるのだと思い知らされました。記録的な大雨はまだ続く見通しです。

    住み慣れた土地でどんな災害が起きるのか、改めて想像力を働かせてください。



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