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水害 台風 知識

顕著な大雨に関する情報とは? 線状降水帯が発生したらどうする?

「線状降水帯」や「顕著な大雨に関する情報」、スマホの通知やテレビの表示で見かけることが増えました。「顕著な大雨に関する情報」は、線状降水帯が発生した場合に発表されるとても怖い情報です。線状降水帯とは何なのか、また、顕著な大雨に関する情報の持つ意味とどう行動すればよいかをまとめました。

目次

    災害の危険性が急激に高まっている

    「顕著な大雨に関する情報」は、「線状降水帯が発生して、災害が起きる危険性が急激に高まっているよ!」と警戒を呼び掛ける情報です(※詳しい発表基準は文末に)。2021年6月から運用が始まった比較的新しい情報で、以下のように発表されます。

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    顕著な大雨に関する〇〇県気象情報

    〇〇地方では、線状降水帯による非常に激しい雨が同じ場所で降り続いています。
    命に危険が及ぶ土砂災害や洪水による災害発生の危険度が急激に高まっています。

    注目して欲しいのは情報の中に出てくる「線状降水帯」というキーワードです。

    「線状降水帯」のメカニズムと被害

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    「線状降水帯」は、下層の「①暖かく湿った風」が「②地形や前線の影響などで上昇」し「③積乱雲が発生」、「④上空の風に流される」ことで列をなすように積乱雲が次々に発生し、線状にのびた雨域のことです。

    積乱雲から降る雨などとともに吹きおろす冷たい風が暖かく湿った空気とぶつかり、積乱雲をくりかえし生み出すこともあります。

    実際のレーダーで観測された雨雲の様子を見てもはっきりとわかります。

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    令和2年7月豪雨の際の雨雲の様子 熊本県付近に線状降水帯がかかっている

    線状降水帯が発生すると、同じような場所で非常に激しい雨や猛烈な雨が降り続くため、急激に状況が悪化して災害が起きるケースが多いです。

    過去を振り返っても、熊本県の球磨川の水害(2020)、西日本豪雨(2018)、九州北部豪雨(2017)、関東・東北豪雨(2015)、広島市の土砂災害(2014)など、近年も大きな災害のたびに線状降水帯が発生しています。

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    ですから、「顕著な大雨に関する情報」が出た時には、災害が起きる可能性があると考えて、すぐに命を守る行動をとる必要があります。

    すぐに安全を確保 ポイントは?

    情報が出た時は、安全な場所で命を守ってください。

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    ただ、すでに大雨で周辺の状況が悪くなっている可能性があります。

    ✅まずは、窓から外の様子を確認して下さい。雨の勢いが強くて周囲の様子が見えなかったり、すでに周辺の道路が冠水していたり、土砂災害が起きていたりしている場合には、外に出て移動するのは危険です。

    ✅自宅の2階以上で、崖や斜面から離れた部屋に移動するなど、少しでも助かる確率の高い場所で過ごして下さい。また、マンションの上の階の人も、外に出るよりも建物の中にとどまった方が安全です。

    ✅周囲の様子を見て、まだ動けそうな場合には、近所にある鉄筋コンクリートの建物に移動すると安全性を高められます。

    公的な避難場所に避難しようと考える方もいると思いますが、移動の際に川や崖の近くを通る場合は、災害に巻き込まれる可能性があります。これまでの災害でも避難中に犠牲になる人が相次いでいます。

    遠くの避難場所ではなく、近場の安全な建物を目指すようにして下さい。

    30分前の予測もスタート

    「顕著な大雨に関する情報」は、2023年5月からは、予測技術も活用して発表されています。

    これまでは、実際の雨量などの「観測データが発表基準を満たした段階」で情報が発表されていましたが、「予測で基準を満たすことがわかった段階」で発表されるように変わりました。

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    気象庁HPでは、線状降水帯の実況は赤の「実線」、予測は赤の「破線」で表現される

    これにより、従来と比べて最大30分早く情報が発表されます。

    身の安全を確保するための時間が少し増えるので、情報を有効に活用して下さい。

    「半日前」から注意喚起されることも

    「顕著な大雨に関する情報」ではありませんが、気象庁は、線状降水帯が発生する可能性が高まった場合には、半日前から6時間前を目安に気象情報の中で警戒を呼び掛ける取り組みを行っています。

    2022年度は全国で13回、半日程度前からの呼びかけがありました。

    このうち、その後実際に線状降水帯が発生したのは3回で、的中率は約23%。

    ただし、線状降水帯が発生していなくても

    ▽3時間に約150ミリの雨が降ったケースを含めると13回中の5回(約38%)
    ▽3時間に約140~約150ミリの雨が降ったケースを含めると13回中の7回(約54%)
    ▽3時間で100ミリ以上の雨が降るケースを含めれば13回中12回(約92%)
    にのぼりました。

    つまり、この情報が出た時は、仮に気象庁の定義する線状降水帯は発生していなくても、3時間で100ミリ以上という大雨になる可能性は高いのです。

    ですから、天気予報などで「あすは線状降水帯が発生する可能性があります」などと呼びかけている時は、特に注意して下さい。

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    (※)気象庁は、①前3時間積算降水量が100ミリ以上の分布域の面積が500平方キロメートル以上、②①の形状が線状、③①領域内の前3時間積算降水量の最大値が150ミリ以上、④①領域内の土砂キキクルにおいて土砂災害警戒情報の基準を超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割)または洪水キキクルにおいて警報基準を大きく超過した基準を超過、という①~④の条件をすべて満たした場合に、自動的に「顕著な大雨に関する情報」を発表する。このため台風本体の雨雲が面的にかかった場合も、この情報が出る可能性がある。

    大阪放送局 災害担当記者 藤島新也


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