皆さんには、"忘れられない食事"はありますか?
「あのとき、何食べた?」は、中部に住む外国籍や外国にルーツのある方々の"忘れられない一品"を掘り下げるグルメドキュメントです。
名古屋市西区のムエタイジムでトレーナーをするシリチャイ・サンスランクワムディさん(25)。愛称は「ポーダ」です。
去年、故郷のタイ・チェンマイから来日し、ジムでたった一人のタイ人トレーナーとして、選手指導の日々を送っています。
来日当初、食が細くなり体調を崩しがちだったポーダさんを支えたのは、日本の家族が作ってくれた「カオソーイ」でした。
ポーダさんの"あのとき"・・・幼いころからプロに。闘い続けることに不安を感じ来日
10歳の時、故郷のタイ・チェンマイでムエタイと出会ったポーダさん。
ムエタイジムに通い2か月後にはプロの試合に出場。初めての試合で勝利し、ムエタイにどんどんのめり込んでいきました。
14歳でタイ北部の大会で王者になると、その後数々の大会でタイトルを獲得。勢いに乗ったポーダさんは、タイで最も権威ある大会のひとつ「ラジャダムナン」の舞台でもトップ選手として活躍しました。
しかし、幼いころからプロのリングに立ち体を酷使していたポーダさんは、20歳を過ぎたころ闘い続けることに不安を感じるようになりました。
そんな時、名古屋のジムから「トレーナーとして日本の選手を指導してほしい」とオファーがあったのです。
タイに比べ、格闘技の選手生命が長い日本。ポーダさんは、幼いころから格闘技を始めても体を酷使することなく技術の向上を図れる、そんな指導技術を学びたいと考え、プロの第一線を退く決心をしました。
カオソーイのレシピ・・・ポーダさんの故郷・チェンマイの郷土料理
日本で新たな一歩を踏み出したポーダさん。来日当初の悩みは食事でした。
タイ料理の濃い味付けが好みのポーダさんにとって、薄味の日本食はまったく合わなかったのです。
食が細くなり、体調を崩すようになりました。
そんなポーダさんを心配したのがジムオーナーの妻で、ポーダさんが暮らす寮の食事を作っている佐藤和子さんでした。
ポーダさんに十分な食事をとって欲しい・・・。探し当てたのが、ポーダさんの故郷チェンマイの郷土料理「カオソーイ」でした。日本では「カレーラーメン」と呼ばれることもあるこの料理を、和子さんは試行錯誤して作りました。すると、ポーダさんは、完食したのです。
- <材料(2人分)>
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- 鶏もも肉・・・300g
- 生中華麺・・・2袋
<カオソーイペースト>※市販のものでも可- 赤とうがらし・・・2~3本
- ニンニク・・・1片
- エシャロット・・・4~5個
- コブミカンの葉・・・4~5枚
- しょうが・・・1片
- ターメリックパウダー・・・小さじ1
- レモングラス・・・1本
<味付け調味料>※材料がそろわなければ、なくてもOK- パームシュガー(きび糖や黒糖でも可)・・・大さじ1
- エビペースト・・・小さじ2
- カレー粉・・・大さじ1~2
- ナンプラー・・・大さじ1~2
- ココナツミルク・・・300ml
- ガラスープのもと・・・大さじ1
- 水・・・300ml
- レモン・・・2切(お好みで)
- パクチー・・・適量(お好みで)
- 揚げ麺(ゆでた中華そばを油で揚げたもの)・・・適宜
- サラダ油・・・大さじ1~2
- <作り方>
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(1)
まず、<カオソーイペースト>の材料を刻みます。全体をつぶして混ぜやすくするためです。
(2)石臼(なければすり鉢、乳鉢で)に(1)の材料を入れてペースト状にすりつぶします。
(3)鍋にサラダ油と(2)のカオソーイペーストを入れて弱火にかけ、ゆっくり香りを出しながら炒めます。
(4)香りが出たら、一口大に切った鶏もも肉を入れて一緒に炒めます。
(5)表面の色が変わってきたらココナツミルクと水、ガラスープのもとを入れて弱火で煮込みます。
(6)<味付け調味料>を入れ味を調えて、スープの完成です。
(7)生中華麺をゆで、器に入れます。(6)のスープを注ぎ、揚げ麺、パクチー、レモンを添えて完成です。
ポーダさんの"これから"・・・日本の指導技術を学び、将来は自分のジムを開きたい
今、ポーダさんが熱心に指導しているのは、福田海斗さん。
なんとタイで権威ある大会のひとつ「タイ国プロムエタイ協会」の現役チャンピオンです。
ポーダさんと同じ年で、2人はプロのリングで3度対戦した経験があります。
福田さんにとってポーダさんは強くなるために最適な練習パートナーです。
福田さんの年齢は25歳。タイのムエタイ選手としては決して若くありません。
しかし、日本の環境であればまだまだムエタイのトップ選手として活躍できるとポーダさんはいいます。
日本で学んだ指導技術を生かし、いつかタイの子どもたちにムエタイを教えるのがポーダさんの目標です。