長崎からパリへ!三菱重工マラソン部①山下一貴選手
- 2023年07月18日
長崎市を拠点に活動する三菱重工マラソン部では、3人の長崎県出身選手が、ことし10月に東京で行われるパリオリンピックのマラソン代表選考レース、MGCの出場権を獲得しています。
山下一貴選手(25)、定方俊樹選手(31)、井上大仁選手(30)の3人です。
長崎からパリオリンピック出場を狙う3人へのインタビューをシリーズでお伝えします。
初回は、名前にちなんで“イチタカスマイル”と呼ばれる笑顔がトレードマークの山下一貴(やました・いちたか)選手です。
ことしの東京マラソンを、日本歴代3位の好記録で走ったマラソン界の期待の新星に、地元長崎のことからオリンピックの話題まで、聞いてきました。
長崎放送局 報道カメラマン 小島陽子
東京マラソンで日本歴代3位 !! 2時間5分51秒
山下選手は、ことし3月に開催された東京マラソンを日本歴代3位の2時間5分51秒で走り、日本人トップの7位でゴールしました。山下選手にとって3回目のマラソンで、自己ベストを2分近く更新しました。
Q:東京マラソンでの好記録をどう受け止めていますか?
あ~すごいなと思いましたね。
あそこまで出るとは自分は正直思ってなかったんで、よかったなという印象と(全体で)7位だったのでもうちょっと行けたらよかったなとも思いました。
Q:過去2回のマラソンと比べてレース中の感覚は違いましたか?
過去2回走ったマラソンよりも30キロまでがちょっときついなと思っている中で走っていました。
(1キロ)3分ペースのレースを2回出場したんですけど、今回は2分57、58秒で進むレースだったので、それで30キロまで行けたら自己ベストは出るなと考えていました。
30キロ通過した時点で「よし、自己ベストはもらったな」と思いました。
Q:好記録の要因は何でしょうか?
ニュージーランドに初めて行って合宿をしたんですけど、そこで3週間練習をじっくり積めたというところがつながっていたんじゃないかなと思います。
過去2回よりは設定ペースを少し上げて2分57、58秒ペースにも対応できるように練習組んでつくっていったのがつながったかなと思います。
Q:東京マラソンの後、何か変化はありましたか?
東京マラソンの前は、(井上大仁選手と)一緒に走っていて「あ!井上さん!」って声をかけられるだけだったんですけど、
今だったら「あ!井上さん!」って言ったあとに「あ!山下選手!」みたいな雰囲気になることもあるので、ちょっと頑張れているかなと思います。
高校卒業で辞めるはずだった陸上
Q:陸上を始めたきっかけは何ですか?
中学で運動部に入ろうと思っていて、水泳部とソフトテニス部で迷っていたんですけど、友達に「俺、陸上部に入ろうと思ってるんだよね。一緒に入ってくれない?」って言われて、「いいよ」って言って入部しました。
Q:陸上を辞めようと思ったことはありますか?
高校卒業したら働きたかったので、その時点でやめようと思っていました。
高校2年生のときの二者面談の時に担任の先生に「就職します」って伝えたら、
「もっと上を目指さなくていいのか」みたいなことを言われて、
「別にいいんですけどね」とか言っていたら、就職先をあまり紹介してくれなかったです。
紹介してくれないのかなと思って、じゃあ陸上の道に進もうかなってことで、辞めることができなかったです。
先生が言わなかったら、たぶん就職していたんじゃないかと思います。
地元長崎の実業団へ
長崎市出身の山下選手は瓊浦(けいほ)高校から駒澤大学に進学し、 卒業後は長崎市が拠点の三菱重工マラソン部に入部しました。
Q:なぜ長崎のチームに入部したんですか?
もともと都会に行きたいという願望がなかったです。
実家が近いし、長崎のチームがあるんだったら長崎でいいやんと思っていました。
三菱重工マラソン部っていうだけあってマラソンに力を入れているチームだったので、自分に合っているのではないかと思って入りました。
結構地元から応援してもらっているチームかなと思うので、そういうところが自分としては嬉しいし、頑張ろうって思えます。
Q:今でも地元で練習することはありますか?
(地元の)滑石(なめし)をジョギングで走ることもあります。
自分の小学校を通って中学校を通って幼稚園を通って、すごくなじみのあるコースを朝練で使っています。
自分としてはいいですね。
“イチタカスマイル”
山下選手の笑顔は、「一貴(いちたか)」という名前にちなんで、陸上ファンから「イチタカスマイル」と呼ばれて親しまれています。
Q:“イチタカスマイル”と呼ばれていることについてどう思っていますか?
それで自分を知ってもらえるのであれば嬉しいなと思っています。
Q:周囲の人にはどんな性格だと言われますか?
マイペースとか、悩みがなさそうとか言われます。
ごはんを食べるのが遅いぐらいですかね。
合宿先で、みんなが食べ終わっても自分が食べているということが多くて、それをだんだん気にしなくなってきて、みんな食べ終わっても居残りすればいいやぐらいに思って急がなくなったので、マイペースかなと思っています。
定方選手と井上選手の存在
Q:同じくMGC出場権を獲得している定方選手と井上選手はどんな存在ですか?
定方さんは、親しみやすくて頼りになるお兄さんです。
「練習でみんながきついところで引っ張るようにしていてる」と言われていて、やっぱり頼りになる人だなと思いました。
井上さんは、自分がおそらく一番一緒に練習をしている方で、勝手にマラソンのお手本にさせてもらっています。
特に初マラソンのびわ湖マラソンでは、いろんなことを聞きまくって、最後の食事、2日前、3日前の食事もほとんど井上さんのまねをしていました。
世界陸上もMGCも
8月にハンガリーの首都ブダペストで開かれる、世界陸上の男子マラソン日本代表に選ばれている山下選手。世界陸上に出場したあと、約2か月後に行われるMGCにも出場する予定です。
Q:世界陸上とMGCどちらも出場するという決断の理由を教えてください。
去年アジア大会の日本代表に選ばれましたが、結局コロナで延期になりました。
今回、初めて(日本)代表になれるのであれば、世界陸上に出たいと思いました。
そのあと約2か月でMGCがありますが、もちろんそこでチャンスがあれば自分は戦いたいなと思っています。
Q:世界陸上とMGCに向けてどう練習していきますか?
世界陸上は、特別なことをやろうと思わずに今までどおりやって、自分の実力を出せるようにしようと思っています。
世界陸上からMGCまでの練習は、まだたぶん白紙なんですけど、世界陸上で戦っていい結果を残して、気持ちをきらさずに勢いにのってMGCにチャレンジしたいなと思っています。
Q:世界陸上での目標と意気込みを教えてください。
順位は8位入賞を目標にしていて、タイムとしては(2時間)7分切りを目標にしています。
海外レースが初めてなので緊張すると思いますけど、そこにのまれないようにしたいと思います。
コースが結構平たんでスピードも出るんじゃないかと言われているので、しっかり海外勢にくらいついて、その中で結果を残せるようにしたいなと思います。
パリオリンピックへ
Q:山下選手にとってパリオリンピックとはどんな存在ですか?
「目標」です。
「世界で戦うぞ」って言われると、やっぱり一番に出てくるのがオリンピックなので、入社したときからずっとパリオリンピックを目標にしています。
まずはMGCで内定を獲得することを目標に自分は走っていきたいと思っています。
【プロフィール】
山下一貴(やました・いちたか)選手
長崎市出身 25歳
経歴:瓊浦(けいほ)高校→駒澤大学→三菱重工
マラソン自己ベスト:2時間5分51秒