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開局90周年「長崎あん時ものがたり」②春の風物詩「ハタ揚げ」

  • 2023年04月17日

これまでNHKに保存されてきた映像を紹介する「長崎あん時ものがたり」。
今回は長崎の伝統のたこ揚げ、「ハタ揚げ」についてです。過去に放送された「ハタ揚げ」の貴重な映像を振り返るとともに、ハタづくり一筋50年の職人の物語をお届けします。

NHK長崎放送局  張 晗陽

長崎「ハタ揚げ大会」の歴史

こちらは68年前の「ハタ揚げ大会」の映像です。

1955年4月 長崎唐八景 ハタ揚げ大会

(ナレーション)「4月3日は九州長崎のハタ揚げ。唐八景と呼ばれる、小高い山で行われる独特なたこ揚げの行事です。思い思いのたこが春風に乗って飛ぶ、うららかな南国の一日でした」

大会のなかでも特に盛り上がるのは、ハタ同士で糸を切り合う「ハタ合戦」。名人たちが腕を競う真剣勝負です。

1969年4月 長崎唐八景 ハタ揚げ大会

長崎市では昔から市内各地でハタ揚げ大会が行われてきました。

1993年4月 金比羅山でハタ揚げ大会

子どもから大人までハタに夢中です。

ハタ職人・小川暁博さん

こちらは1987年に放送された番組です。

1987年8月放送 九州730サマースペシャル

紹介されているのはハタ職人の小川暁博さん。

(ナレーション)「この長崎で3代にわたってハタを作り続けるのが小川暁博さんです。小川さんは骨からすべて自前で作るという根っからの職人」

「ハタ」は今も昔も変わらない伝統工芸品

今年で73歳になった小川さん。およそ半世紀にわたって
同じ場所でハタを作ってきました。

作り方は50年間まったく変わっていません。
骨組みから模様付けまですべてが手作業です。

1987年の小川さん
現在も同じ場所・同じ手順でハタを作り続ける小川さん

(ハタ職人・小川暁博さん)
「形はまったく同じ、昔から。これを崩したら長崎の伝統工芸じゃなくなるので、形だけは昔からこの形」

毎年春に行われる「長崎ハタ揚げ大会」。
小川さんは「ハタ合戦」で使われるハタをすべて一人で作っています。

大会はコロナの影響で中止になっていましたが、ことし4年ぶりに開催されることになりました。

(ハタ職人・小川暁博さん)
「この時期がハタ揚げのシーズンなので、ハタ揚げがなかったらさびしい。楽しみを通り超えているだろうね。一生懸命に準備しないといけないので、4年ぶりだから知らないうちに緊張している」

4年ぶりに開催された「長崎ハタ揚げ大会」

迎えた大会当日。

4月2日「長崎ハタ揚げ大会」当日 唐八景公園

子どもからお年寄りまで多くの人が唐八景に集まりました。

裏方として大会を支える小川さん。
4年ぶりとあって、いつも以上に気合いが入っていました。

出場者に渡すハタを入念に確認し、完璧な状態に仕上げます。

競技用のハタを試しに揚げる小川さん

小川さんがハタ合戦にかける情熱は、50年前と変わりません。

小川さん「もっと引っ張って!こっちが勝った!」

(ハタ職人・小川暁博さん)
「すごくいい風だった。きょうはすごくよかった。春の風物詩だから春はハタ揚げを楽しんでもらえるのはハタを作る職人としては安心する。安堵の気持ちになる」。

「生涯現役で頑張るので、私が倒れたら作れないけど、倒れるまでは作っていきたい」

長崎伝統の「ハタ揚げ」。

1955年 唐八景
1969年 唐八景

昔も今も、春の空を彩ります。

2023年 唐八景

取材後記

今回の取材にあたり、局内にある「ハタ揚げ」関連の古い映像を調べたところフイルムからテープまでさまざまなハタ揚げ大会の様子を見つけることができました。
ハタの模様や作り方は伝統を守り続けていて、昔から何ら変わっていません。
そして一番印象的だったのは、モノクロ映像の時代から現在に至るまで、大人も子どももお年寄りも皆がハタに夢中になっている姿が全く変わっていなかったことです。
伝統を守ることは、技術を継承するだけでなく人々の笑顔や風景も変わらず残すことなのだと、今回の取材と過去の映像から学びました。

  • 張 晗陽   

    NHK長崎放送局

    張 晗陽   

    2018年入局 
    おととし、息子の誕生記念に初めてハタを買いました

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