障害抱えるVTuber“多様な生き方を”

2023年12月27日

アニメやCGのキャラクターを使って動画を配信している「Vチューバー（＝バーチャルユーチューバー）」。若者を中心に人気があり、世界には2万人を超えるVチューバーがいるとされています。長野県佐久市では、障害のあるVチューバーが、バーチャルアイドルとして活動しています。その背景には「多様な生き方や価値観を認め合う社会になってほしい」という思いが込められていました。（長野放送局橋本慎也）

現実世界に抱く“生きづらさ”

私が取材したのは、佐久市を拠点にバーチャルアイドル「蘭茶みすみ」として活動しているVチューバーです。体の動きを感知するセンサーを使ってキャラクターを動かし、機械で声も変えて、動画を制作していました。

27歳の男性ですが、長年、女性になりたいと性別に違和感があったといいます。また、小学3年生の時には、発達障害の1つ「自閉スペクトラム症」と診断されました。「多様な生き方や価値観を認め合う社会になってほしい」と考え、一時、新聞記者になりましたが、多くの情報を素早く処理することが苦手で体調を崩し、3年あまりで退職したといいます。

自分の性別と体の違和感に気を取られるだけでなく、人との会話などコミュニケーションをとることも難しい日々を送っていました。現実世界にすごく生きづらさを感じていました。

そうした中…

ありのままの姿で活動できると感じた場所があります。それが、インターネット上の仮想空間「メタバース」でした。今ではみずから制作したバーチャルアイドル「蘭茶みすみ」として動画を配信しています。衣装のデザインには「虹」を取り入れ、“多様性の大切さを多くの人に届けたい”という願いを込めたとしています。

メタバース空間にいれば悩みが完全になくなるという訳ではありません。ただ、バーチャルアイドルでいる時間は、ありたい私で生きることができていると感じています。自分の性自認が尊重されますし、障害も感じにくい世界になっているので、非常に楽に生きられますし、ほかの人ともコミュニケーションをとりやすいです。

“多様性の大切さ”みずからの歌で

最近は、独学で作詞・作曲にも取り組んでいます。その理由は、新聞記者時代に果たしきれなかった「多様な生き方や価値観を認め合う社会になってほしい」という願いをバーチャルアイドルとして多くの人に届けたいと考えているからです。

これまでに作詞や作曲をした作品は14に上ります。初めて作詞したのが「カラフル☆メタバース」という曲。歌詞には「いつまででも私たちはここに生きてる」「カラダから放った本当の姿で」といったフレーズが含まれています。

メタバースというと現実から逃げているような印象を持たれるかもしれませんが、お互いに尊重できるような世界というものを動画配信を通じて現実世界に伝え、少しでも世の中の価値観を変えていけたらと考えています。

現実世界でライブ・講演も開始

2023年11月には、地元佐久市で障害のある当事者が経験を語る催しが開かれ、「蘭茶みすみ」としてオンラインで登壇しました。そして、障害のある人の家族や支援者など30人あまりを前に「家族が自身の生き方を理解してくれたことに救われた」などと訴えかけました。すると、参加者からはこんな質問も出されました。