命を守る“防災の呼びかけ”ワークショップin長野
- 2023年12月08日
“命を守る呼びかけ“とは
本格的な大雪のシーズンに入る信州。
思いがけない災害は、いつどこで起きるかわかりません。
自分自身や大切な人の命を守るのは、人のことばによる呼びかけです。
NHKでは、2011年の東日本大震災をきっかけに、災害が予想される前や、
災害が起きたときにどんなことばで避難を呼びかけられるのか、改めて見つめ直しました。
全国のNHKアナウンサーが、被災した方、地域の方、行政、専門家などに
話を聞いて、より適切なコメントを練り上げてきました。それが“命を守る呼びかけ”です。
ふだんは努めて、冷静なNHKアナウンサーの聞きなれない口調をあえて使うことで
「自分は大丈夫だろう」「今回も大したことないだろう」という正常性のバイアスを
取り除いてもらい、緊急事態の行動を促すことを目的としています。
呼びかけをより多くの人に届けるために
これまで積み上げてきたこのコメントを、去年からNHKはホームページで公開しています。
行政や消防団はもちろん、一人ひとりが呼びかけの“当事者“になることで地域の減災、防災につなげてほしいと、NHKのノウハウの公開に踏み切りました。
実は、NHKのアンケート調査で、被災した方が、実際に避難行動に移すきっかけになったものは何だったかを聞いたところ「近所の人、友人、家族からの呼びかけ」のだったとことばだったという人の割合が「テレビ・ラジオの呼びかけ」だったという人を大きく上回りました。
顔を知っている身近な人のことばは、人の心をより動かします。
情報を共有して、より高める
長野放送局でも、今後もさらに幅広く呼びかけのことばを考えていこうと
先日、長野県内のケーブルテレビ7社、鉄道会社、長野市の百貨店の担当者22人が
長野放送局に集まり、みんなで呼びかけについて意見交換や情報共有をしました。
今回は【地震】【大雪】の呼びかけについて検討しました。
例えば
百貨店では、日ごろから、万が一の地震に備えて、館内放送の文言を準備していることを
共有してくれました。
そこでは、来店した人がパニックにならないように
建物の安全性や火災の有無などの安心情報を、
ゆっくりとしたアナウンスで伝えていることを教えてくれました。
また、しなの鉄道の担当者は
ことしの夏、花火大会の時、大雨になり多くの観客が一気に駅に集まってしまい混雑した状況での経験を話してくれました。
はじめはいつも通りのアナウンスをしていた担当者は、
これでは誰も聞いてくれないと判断し
「みんな聞いてくれ!本当に危ない」
「このままでは去年の韓国での事故のようになってしまう」
あえて感情的に伝えたそうです。いつもと明らかに異なるアナウンスに、
乗客が耳を傾け、結果、けが人無くスムーズに誘導できたそうです。
命令口調、過去の事例を引き出すなど、NHKがこれまで積み上げてきた呼びかけを
担当者はこの時は意識せずとも実践していました。
他にも、山間部をエリアに持つケーブルテレビの担当者は
「山間で暮らす高齢者の顔を浮かべながら、その人に向けて語り掛けるように情報を伝えている」
そうです。
別の担当者からは、スマートフォンが身近になった今の時代。
災害時も、ニュース速報だけでなくSNSでも情報が届きすぎることを意識して
あえて「もし疲れてしまったときは、スマートフォンの電源を切り、
いったん情報から離れてはどうでしょうか」と呼び掛けてみるなどの意見も出ました。
届くことばを考え続ける
被害が長期化してくると、同じようなことばの繰り返しでは、
どんどん届かなくなってしまいます。
寄り添う、心に届くことばを紡げないか。
信州の人に届く特別なことばはないかということもみんなで考えました。
広い長野県、地域によってことばや風土も違いますが
「~してくんな」「~おくらい」「~ずら」など、語尾を変えてみたり、
諏訪地域では、御柱祭(おんばしらさい)の時に使う「協力一致」ということばを、
励ましに用いるのはどうかなど、地域に合わせて考えていく必要があると再認識しました。
NHK長野放送局では、今後も、防災・減災につながる情報を発信し続けます。
それでも、自然災害をなくすことはできません。呼びかけに正解やゴールはありません。
放送事業者や行政だけが取り組むものでもありません。
大事な人のために、みんなでみんなの命を守り
災害に強い信州を作れるように、全員で意識を高めていきましょう。