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岩手取材ノート

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くらしラボ 全国で急増「梅毒」って?

岩手でも急増中 正しく知ろう「梅毒」
  • 2023年06月06日

「最近、岩手県内でも梅毒が増えているらしいです」
取材チームのメンバーの気付きをきっかけに、梅毒についての取材が始まりました。
取材前は、「毒」とつく病名で恐ろしいイメージもあり、なんとなく知っているつもりでいましたが、実は飲み薬や注射で完治が可能で、感染したら何よりも早く病院に行くことが大事だということが分かりました。
あなたは「梅毒」について知っていますか?これを機会に正しく理解をしてほしいと思います。
(盛岡局ダイバーシティプロジェクト 取材班)

「梅毒」を知っていますか?

まずは、全国における梅毒の感染報告数を調べてみました。

2013年(平成25年)から増えはじめ、去年には1万2966人と、急増していることが分かります。現在の方法で統計を取り始めた1999年(平成11年)以降で最多です。
10年前の2012年(平成24年)は875人。この10年で15倍にまで急増しています。

そして、岩手県についても、同様に調べてみると・・・

かつて年間0人から3人程度だった患者数が、去年は29人と、2018年(平成30年)と並んで過去最多になっています、
さらに、ことし5月28日時点では、既に17件の感染が報告されていて、例年よりも速いペースで増え続けています。 

                          ※報告件数は6月5日16時時点

取材班で「梅毒が増えているらしい」ということは分かっても、
 梅毒がどんな病気なのか
 もし感染したらどうなるのか
 完治はするのか…
分からないことだらけだと気付き、取材を深めることにしました。

 

まずはまちの人に、梅毒についてのイメージや、知りたいことを聞いてみました。

「梅毒について知識がないから、漠然とこわい」(10代女性)
「聞いたことあるくらい。初期症状を全く知らない」(20代男性)

やはり、「聞いたことはあっても、詳しくは分からない」という声が多く聞かれました。
それでは、梅毒についてどんなことを知りたいか、聞いてみると。

「仮にかかったらどういう病院に行けばいいのか、知りたい」(10代男性)
「かからないようにするには、どういうことを気をつけたらいいのか」(20代女性)
「性行為以外で、例えば温泉などで感染することはあるのか」(30代男性)

まちの人から挙がった質問をまとめました。

▽ 梅毒ってどのような症状?
▽ もし感染したらどうすればいい?
▽ 予防するには?
▽ 性行為以外で感染する?

こうした疑問を解決するべく、病院の先生に話を聞きました。

梅毒って、どのような症状?

そもそも、梅毒はどんな病気なのでしょうか。盛岡市の皮膚科や泌尿器科を中心とした専門病院の医師に話を聞きました。

赤坂病院 赤坂俊幸 院長

「梅毒っていうのは、性感染症の1つです。病原体が性行為によって人から人にうつります。
 小さな傷や、粘膜から細菌が入って、発症します」

感染後に現れる症状は大きく3段階あります。

①梅毒に感染しておよそ3週間で感染部位に小さなしこりや炎症がおこります。
その後、症状はいったん治まりますが・・・。
②数ヶ月後には手のひらなどに湿疹ができます。
この症状も数週間で軽くなるということですが。
③さらに数年後、ゴムのようなこぶが皮膚や筋肉・骨などに現れ、最終的には神経が侵されます。
治療を行わない限り、病状は進行し続けるといいます。

また、症状の特徴についても説明してもらいました。

「性感染症だからといって全部必ず陰部にできるんじゃなくて、菌が入り込んでいったら増えていく。それは唇かもしれない。梅毒で特徴的なことは、湿疹までの初期の段階では痛みがないこと。潰瘍(炎症によって出来る深い傷)を作っても、痛みはない」

いったん症状が治るなどして病気が進行してくと、どうなるのでしょうか。

「歩行が困難になるとか、麻痺するとか、尿と便がコントロールできなくなるとか、さまざまな症状が出ます」

また、感染に、より気をつけてほしいのが「妊娠中の女性」です。

「梅毒は、妊娠中には母親から子どもに感染する可能性があります。これを『先天梅毒』といい、生まれた子どもが病気を発症することがあるほか、流産や死産になることもあるため、より早い発見、早い治療が大事になります」

もし感染したらどうしたらいい?

小さなしこりや炎症など初期症状が見られたら、どのような対応をとればいいのでしょうか。

「梅毒が疑われる症状があれば、泌尿器科や皮膚科、婦人科を受診してください。『感染したかもしれない』と伝えると、採血して血液の検査をしてくれます。血液の中に梅毒の菌があるかを見るもので、結果は1週間程度で分かります。しかし、反応がでるのは感染後4週間から6週間後のため、感染初期には陰性になる場合があり、注意が必要です。その場合は2週間ほどあけて再度検査することが必要になります。もし結婚相手やお付き合いをしているパートナーがいるのであれば、一緒に病院に行ったほうがいいです」

梅毒に感染した場合、どんな治療が行われ、治るまでにどれぐらいの期間がかかるのでしょうか。 

「一般的には、ペニシリン製剤の内服が多く、注射による治療を行うこともあります。感染初期であれば1回の注射で治ることもあります。感染してから治療を始めるまでの期間が早ければ早いほど、回復する期間も短くなり、一方で、第2期、第3期と、病気が進んでから治療を始める場合は、当然お薬を飲む期間も何ヶ月かにわたることになります」

予防するには?

梅毒を効果的に予防するには、どうすればいいのでしょうか。

「性行為をする場合には、コンドームを着けることが一番の予防法です。しっかり性行為の最初から着けることが大切です」

そもそも、近年なぜ?梅毒の感染報告が急激に増加しているのでしょうか。

「SNSなどを通じて、不特定多数の人と気軽に出会いやすくなっていることや、感染しても症状が消える期間があることで、受診が遅れ、広めてしまうことが原因のひとつではないかと考えられます。また、梅毒の症状の特徴も影響していると思います。感染初期では、症状が出ても、しばらくすると消えていく時があります。それを治ったと勘違いして、その時期に性行為をすれば、当然感染は広がります。また、症状が出ていても初期は痛みがないので、薬を飲むのを忘れてしまったり、自分でやめてしまったりして、不十分な治療のまま広めてしまうということも考えられます。そうした何種類もの要因が重なって、最近ぐっと増えてきているのだと思います」

性行為以外で感染する?

性感染症の「梅毒」は性行為のほかに感染することはあるのでしょうか?例えばお風呂で感染してしまう可能性はないのでしょうか。

「普通にお風呂に個々に入るだけであれば、感染しません。また、『梅毒の方と握手した』とか『同じ食事を箸でつついた』なども、普通の生活の中ではまず感染しないと思った方がいいです。あまり気にしすぎると精神的に参ってしまうので、過剰に警戒する必要はありません」

必ず治る病気 早期発見・早期治療を

赤坂医師は、初期症状が出るなど梅毒に感染したかもしれないと少しでも不安に感じたら、すぐに病院を受診してほしいと呼びかけています。

「必ず治る病気だっていうことを知っておいてほしいです。適切に診断してもらって、 適切な医療を受ければ必ず治ります。変だなと思ったら、必ず医療機関に行くようにしてください」

不安な時は、相談窓口もあります。 
県内各地の保健所では、梅毒に関する検査や電話や面接による相談を無料・匿名で受け付けています。少しでも不安があれば病院や保健所に相談してみてください。 

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