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突如あらわれた日之影バンクシー その正体と作品は?

  • 2024年04月12日

【日之影バンクシー】

「誰が描いたの?」「mysterious(外国人旅行者)」
作品を前にした人たちは口々にそう話します。
4年前、その絵は突如、宮崎県の山あいの日之影町に現れました。作者不明・謎のアーティストは、社会風刺で知られる覆面アーティストになぞらえて、いつしか【日之影バンクシー】と呼ばれ始めます。
1日に数本のコミュニティバスしか走っていないバス停のそばには有名なシーンを再現するようにあのキャラクターが描かれています。

強烈なメッセージを放つ「本家」とは違い、“ゆるかわ”な作風。作品は、これまでの4年間に町の中心部に5つ見つかっており、寂れた道ののり面にびっしりと生えたコケを削って絵を浮かび上がらせています。町の人たちにとっては、いつの間にか日常として溶け込んでいたこけの壁を削ることで描く作品は、時の流れを逆戻ししようとしているかのようでした。

【日之影バンクシー】によって描かれた5つの絵

“落書き”が町を変えた

車の行き交いも少ない町のメインの通りとなる県道沿いには、最も大きい全長4メートルほどのロボット兵が描かれています。その視線の先には60年以上前から営業する町で数少ないガソリンスタンド。自身のSNSのアイコンに、このロボット兵を選んでいるという米良まさ子さんは、仕事場から地域の変化を目の当たりにしていました。

米良まさ子さん

平日でも人は絶えず、春休みとかは家族連れとかカップルとか、年配の方まで訪れていますね。県外ナンバーも増えてるし、これを目当てに来る人もいて、これまでにはなかった光景です。日之影バンクシーが誰かは知らないけど、このアートができたことで、さみしかった町がぱっと明るくなった。今はないとさみしい感じなんですよ。

どこにでもある小さな町

日之影町は、宮崎県の北部の山あいに位置し人口3200人あまり。高齢化率は48.6%。主な産業は農林業で、日本全国にあるような人口減少や過疎化が課題の小さな町です。観光でこの町を目当てに訪れるという人は多くありません。
しかし、このアートの第一発見者の重信誠さんは「活気を失っていた町がちょっと変わるかもしれない」そんな“予感”に包まれたといいます。

重信誠さん

自然豊かな日之影町に、ぽつりぽつりとあるこけのアートが町の雰囲気にあっている気がしたんです。

町の人たちが感じ始めていた変化。それを決定づけたのはSNSでした。日之影バンクシーというネーミングと作品とのギャップも注目を集めました。この流れに町もあやかり広報誌などでも紹介。町は“バンクシー”の登場で沸きました。

SNSに投稿された写真とコメント

次はどこに現れ何を描く?

町を騒ぎに巻き込んだ【バンクシー狂騒曲】今は少し落ち着き始めています。しかし、こけの成長とともに消えていってしまう作品は、今も町の有志が“貴重な作品”として保護活動を続けています。

一方、最後の作品からすでに4年ほどたち、待ち望まれている新作。
ともすれば、ただの落書きですが、町にとってはその謎に包まれたアーティストの出現がかけがえのない財産となっています。

ロボット兵とともに写真をとる観光客
  • 山本華子

    宮崎局・記者

    山本華子


    延岡生まれ 日々県北を駆け回る支局生活も9ヶ月目。 北方町の廃校の壁画に続いて、壁に作られた苔アート、そして記者としてのさらなる成長への壁、、何かと"壁"に縁があります。

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