駅名のナゾに迫る! なぜ日向市駅だけ『市』がつくの?
- 2023年06月22日
視聴者の皆さんからの疑問や質問に答える「てげ探!」。今回、調査したのはこちらの疑問。
依頼者 shuumassuさん
『延岡市駅』とか『宮崎市駅』とは言わないのに、なぜ日向市駅だけ『市』がつくの?
まずは路線図で駅名を確認
日向“市”駅があります。たしかに市の文字が入っています。ほかの駅名を見てみると・・・。
宮崎、都城、延岡、そして小林、日南・・・。市がついている駅は確かに日向市駅の1つだけ。
また、"市"駅以外にも気になるところが。
「日向新富」「日向住吉」「日向沓掛」「日向長井」「日向大束」「日向北方」「日向前田」「日向庄内」
「日向○○」という駅。県内に8つもありました。
「市」がつく謎と「日向」がつく謎。2つの疑問に迫ることにしました。
日向市駅前で調査!
まずは、日向市駅前の人に突撃取材です。
なぜ日向『市』駅なのかご存じですか?
なぜなのかと思ったことはある。区別つけてるのかな。
全然わかりません。不思議です。
考えたことなかった。
きっかけは「日向市の誕生」!?
地元の人からは有力な情報は得られなかったので、訪ねたのは日向市役所。
日向市生まれの日向市育ち。市街地整備課の黒木康文課長。
出てきた資料はいかにも歴史を感じる市の広報誌。中には「富高駅が日向市駅に」という見出しが。今から60年前の1963年のことです。この中で気になる言葉が。
地元の要望で駅名が変わっていたようでした。きっかけは「日向市の誕生」。駅名が変わる10年ほど前のことで、まさにこれから市が発展をしていく、まっただ中でした。
その時代背景もあり、新たな日向市の発展を願ってという意味もあったのかなと。推測ですけども。
一方でこんな話も。
入庁以来、先輩から聞いた話としては、千葉県に日向駅という同じ国鉄の駅があった。その駅と名前変えなくてはいけないので、あとでできた日向市駅に市をつけたときいている。
餅は餅屋に 駅名はJRに聞いてみた
まだはっきりしない"市がついている理由。次に訪ねたのはJR九州宮崎支社。企画運輸課の小谷彩乃さんです。疑問の答えを探すべく、会社の社史をひもといてくれました。
この中にあった唯一の記述がこちら。
これだけしか書かれておらず、"市"のナゾはわからない?と思いきや。こんな考え方が出てきました。
日向は宮崎県の旧国名で、日向駅とすると、宮崎県全体と誤解されるかもしれません。市制となった日向市をそのまま駅名にすることで、日向市の玄関口として地元の人の親しみにつながることから、日向市駅に改称したのではないかと思われます。
つまり、日向駅にしてしまうと「宮崎県のどこにあるの?」ってなってしまうと。
さらに8つの「日向○○駅」についても“市”がつけられたのと同じ考え方ではないかとのこと。
(他の駅と)重複をしないように考えてつけられたと思われる。日向をつけることでほかの県と区別をつけることになることと、旧国名なので地元の人に愛されるので、つけられたのでは。
日向市駅も日向○○駅も元々は、地域・地元を思う気持ちとわかりやすさから生まれたようです。九州にはほかにも、福岡県の「筑前○○駅」や熊本県の「肥後○○駅」などがあります。
旧国鉄時代、なるべく同じ名前の駅名は避けようとはしていたそうです。ただ、同じ名前を持つ駅は存在します。別に同じ名前の駅をつけてはいけないという訳ではなかったようです。
専門家に聞く駅名研究の醍醐味
鉄道といえば、多くのファンがいる奥深い世界。実は、駅名の由来を調べる熱狂的なファンもいるんです。
中学生の頃からの愛読書は「時刻表」。生っ粋の鉄道ファンで地名の由来なども研究している今尾恵介さんです。駅名の研究をすること30年近く。大手出版社の鉄道地図の監修もしています。駅名の醍醐味は「誕生までの裏側」だそうです。
県内にも駅名の誕生に紆余曲折を経た駅がありました。三股駅です。
三股町にできたのが三股駅。場所が分からないので、通りのよい東都城にした。そのうちコンテナターミナルなくなって『なんで隣の市をうちの看板の駅名に』ということで、地元からの要望があって三股駅に戻った。
一度変わった名前が、またもとの駅名に戻る。駅名はその地域の歴史を表しているようです。だからこそ、駅名には長年研究の対象にするほどの魅力があるということです。
駅名は命名されたときの時代の空気を反映する。なんでこういう駅名が最初命名されて、どうして変わったか、背景まで調べるとその時代の地域の歴史が浮かび上がってくる。たかが駅名されど駅名。みんなの思いがつまっている。
駅名は奥が深く、地元の人たちの思いが詰まっていることがわかりました。全国の鉄道では、採算が合わず廃線が検討される路線も出てきています。そうした中、この疑問を追いかけて、より宮崎を知ることができ、貴重な経験ができたと感じました。