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G7広島サミット 農業大臣会合 宮崎で電気を作る農業とは?

  • 2023年04月20日

G7農相会合が行われる宮崎で始まっている持続可能な、新しい形の農業。
今回は、やっかいものをエネルギーに変える取り組みを紹介します。牛が電気を作るってどういうこと?記者がわかりやすく解説します。

牛が電気を作る⁉

電気を作る原料となるのは、なんと牛のふん尿です。畜産農家にとって牛のふん尿は、数か月発酵させて肥料にするか、お金を払って産業廃棄物として処理するしかなく、長年、その処理に費やす時間や労力が大きな課題となっていました。

しかし、取材をした牛舎では、機械が数時間に一度自動でふん尿を回収する仕組みで、回収されたふん尿は牛舎の外に送り出され、自動的にバイオガスプラントに集められていきます。

タンクのなかに溜まった牛のふん尿は、発酵処理によってメタンガスが発生し、そのガスを燃焼させることで発電をしていきます。この牧場だけで発電量は1日あたり1,000キロワットアワー以上となり、これは一般家庭の約100軒分にあたるということです。この牛舎では、3年前に3億円以上をかけてこの設備を導入しました。

課題はコスト?

これまで処理に大変な労力を使っていた「ふん尿」から電気を生み出すというのは、まさに一石二鳥のシステムですが、気になるのはコスト面。今回の農家は3億円以上をかけて導入して設備ですが、設備投資は回収できるのか取材しました。

この牧場では、発電した電気を電気会社に販売していますが、初期投資の回収には約20年かかるということです。ただ、この電気を売るという利益よりも、システムを導入したことによる経費の削減効果が大きいということなんです。

ふん尿は、発電を終えた後に残りかすとして「液体」と「固体」に分けられたものが残ります。下の写真がその「液体」と「固体」です。

いずれも発酵の過程で雑菌は死滅しています。

このうち「液体」の残りかすは肥料として、牛の餌になる牧草を育てる畑などで利用されています。化学肥料が高騰しているなか、経費削減につながっています。そして「固体」の残りかすは牛の寝床に利用しているということです。

これまでは大量の木くずを買って、牛のベッドにしていましたが、ふん尿のかすを使うようになり、1年間で1800万円ほどの削減につながるといいます。そして効果は経費削減だけではありません。

本部博久さん

木のくずは石灰消毒して使っていたんですけど、それでも牛の病気が出ていました。でもふん尿のかすは殺菌されているので、牛の寝床で使っても、病気が出にくくなっています。しかもお金がかからないので一番いい資材ですね。

牛が電気を作るシステム

家畜のふん尿を少しも無駄にすることなく、有効活用するシステムその仕組みをわかりやすくまとめたのがこちらの写真です。

こうして循環する持続可能な農業が作られています。宮崎県はG7農相会合をきっかけにこの取り組みを広げようとプラント会社などと連携協定を結びました。さらに事業規模を拡大し、地域でふん尿を集めて、活用する集約型のプラントについても活用を検討するとしています。

県と新富町などがバイオガスプラント連携協定

宮崎県や新富町が、畜産ふん尿を利活用する北海道のプラント設計会社と連携協定を結びました。

行政側は畜産農家からふん尿を集める調整や肥料としての活用を検討するほか、企業側は発電方法や肥料化の技術などの検証や試算を行うということです。

バイオガスプラントは多額の費用がかかるなど課題も多く、今後、数年かけて検討を進め、実用化を目指していくということです。新富町の小嶋崇嗣町長は「ふん尿処理が問題となっていた畜産農家にとって、大きな効果のある技術で、導入や運営のコストなど経済的な問題も含めてクリアにしていきたい」と話していました。

  • 坂西俊太

    NHK宮崎・記者

    坂西俊太

    県政などを担当
    獣医師の資格を持ってます

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