宮崎の給食からパンが消える!? 物価高騰が食育に与える影響
- 2023年01月13日
昨年末から日南市と串間市の公立小中学校で給食用のパンが提供できない事態になっていることがわかりました。パンの製造会社で最近の物価高騰などに加えて半数の従業員が離職したことが原因で再開の見通しはたっていないということです。物価高騰や少子化が食育に与える影響について取材しました。
パンが食べたい!でも提供ができない
子どもたちの給食で、週に数回、主食として提供されるパン。当たり前に食べていたこのパンに異変です。日南市教育委員会が出したこの通知。
諸般の事情により学校給食用パンの納品が困難となりました
と書かれています。日南市と串間市のすべての公立小中学校35校では給食用のパンが提供できない事態になっているのです。
日南市の小学校を訪ねると、子どもたちが食べていたのはご飯でした。シチューにごはんの組み合わせです。 献立を急遽パンからご飯などに変更して対応しています。
残念、事情はわかるけど、またパンを食べられるようにしてほしい
ご飯は好きだけど今日の給食にはパンが合う。なくなるのは寂しい
パンの給食の再開の見通しはたっていません。 なぜこうした事態に陥っているのか。大きな原因は業者の人手不足です。
日南市と串間市の2つの市で1日の給食に必要なパンはおよそ6000個。数十年にわたり一つの業者がすべてを製造してきました。 しかし、原材料となる小麦の価格や各学校への配送のためのガソリン代など物価高騰の影響を受ける中で、先月、従業員10人のうち半数が離職したのです。この会社では市販のパンの製造は続けていくということで、NHKの取材に対して、会社の社長は、
人手不足、物価高騰のなか、子どもたちにパンを届けようとこれまでなんとか頑張ってきましたがこれ以上は厳しかったです。ご迷惑をおかけします。
と話しています。 公立の小中学校向けに給食の食材提供を担っている「県学校給食会」によると、今の給食費で最近の物価高騰などに対応することは難しく、ほかの業者も苦しい経営となっているということです。
物価高騰の波が学校給食にも押し寄せる
日南市の給食費は全国平均並みで小学校で4400円、中学校で4900円です。1食あたりの費用は200円から300円ほどとなります。このうち、コッペパンは子どもたちの成長に合わせて少しずつ大きいものが提供されていて1個の価格は最も小さいパンでおよそ40円。そこから数円ずつ上がっていきます。
ただ、おかずや飲み物など多くの食材の値上げが相次ぐ中でも給食のパンの価格は据え置かれている状態だということです。「県学校給食会」によると、県内に20年前は27社あった給食用のパンの製造会社は今では8社にまで減少しているということです。
ほかの給食のパンの製造会社は
牛乳をはじめ多くの食材が値上がりしている中でそれらの価格上昇のしわ寄せが主食のパンなどにきているのではないかと感じてしまう
と話していました。
これは宮崎県に限ったことではなく全国的な問題だと全日本パン協同組合連合会は指摘しています。
小麦や、パンの輸送に必要なガソリンの高騰に加えて少子化が進んで児童数が減っているいま、学校給食パンを提供している業者はかなり厳しい状況。廃業という決断を迫られている会社もある。この流れを止めるためには行政からの助成が必要なのではないか。
このままだと給食からパンがなくなる可能性もあるかもしれないと感じてしまいます。学校給食をいかに成り立たせていくのか大きな課題です。