茨城 新型コロナ5類移行から1年 県は「感染症予防計画」改定 水戸市保健所体制見直し
- 2024年05月08日
新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行してから5月8日で1年。
移行する前までの茨城県内での累計の感染者は64万人以上、死者は1300人に上ります。
あれから、暮らしはどう変わったか。新たな感染症への備えはどうなっているのか。
自治体や専門家に取材しました。
(NHK水戸放送局 記者 戸叶直宏 國友真理子 藤原陸人)
NHKプラスで配信5/15(水)午後7時まで
飲食店「徐々に客足が戻る」
2014年にオープンした、水戸市姫子にあるレストランです。
新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年には感染予防対策として、席の数を減らしたり、その後、一時テイクアウトだけの営業にするなどして売り上げは大きく落ち込みました。
店によりますと、去年の5月に新型コロナが5類に移行してから客足が徐々に戻っていて、店では
コロナ禍よりも席の数を数席増やしているということです。
また、団体の予約も歓送迎会などが多いことし3月には6件、4月は3件あったということです。
店では、引き続き来店客がアルコール消毒をできるようにするなどできるかぎりの感染対策をしたいとしています。
「レストランアオヤマ」青山理加さん
5類に変わってから、常連のお客さんが久しぶりに来てくれて、ランチなどを利用する方が増えてきていると感じます。コロナがまん延した当初は、店を営業していいのかなど気を遣い、模索しながら対応していました。その経験を生かして感染対策は行いながら、みなさんがリラックスできる場を提供していきたいです。
茨城県 新たな感染症流行に備え対策
茨城県内で新型コロナの感染が初めて確認されたのは2020年3月で、去年5月7日までの累計の感染者数は64万2582人、死者は1300人に上りました。
去年5月8日に感染症法上の位置づけが5類に移行してからは全数把握から定点把握に変わり、1週間の1医療機関あたりの感染者数は去年夏に27.74人と増加しましたが、直近では12週連続で減少していて、4月28日までの1週間は3.1人でした。
茨城県は、新型コロナへの対応経験をもとにことし4月、「感染症予防計画」を改定し新たな感染症が流行した場合に備えた対策を進めています。
具体的には、県は発生動向を迅速に把握して県民に公表し、状況に応じて必要最小限の行動制限措置も防止施策として盛り込んでいます。
また、県内各地の医療機関と協定を結び新型コロナで活用した入院病床を上回る873床を、新たな感染症の公表後、半年以内に使えるよう確保しています。
さらに、薬局や宿泊施設とも協定を結び、薬の配送や宿泊療養などにも対応することにしています。
水戸市保健所の備え「最大136人で対応」
水戸市保健所は、新型コロナウイルスの感染拡大のさなかの2020年4月に水戸市が中核市に移行したことに伴って新たに開所し、当初から新型コロナ対応に追われてきました。
保健所では感染者を把握して感染経路を特定したり、市民からの相談に応じたりするなど業務がひっ迫し、休日出勤したり未明まで対応に追われたりする職員が相次ぎました。
新型コロナが5類に移行されてからの1年、水戸市は次の感染症の流行に備え茨城県と「感染症予防計画」の改定作業を進めるとともに、ことし4月、感染流行時の業務量や必要な体制などについて計画をまとめました。
この中では、新型コロナの第6波の際、89人体制で対応しても職員の業務負担が大きくなったことから保健所として最大136人の体制が必要で、市役所の各部から74人の応援を得る必要があるとしています。
今年度は応援にあたる職員を指定したり研修を進めたりするとともに、医療機関からの感染情報のファックスをパソコンに手で入力していた時期の反省も踏まえ、業務を効率化するICT環境を整備していきたいとしています。
水戸市保健所感染症対策課 大図要之課長
国からのさまざまな通知に合わせて体制を日々、再構築するのは正直、行き当たりばったりでした。この1年で計画を立て、ようやく一歩階段を上り始めることができたので、平時からの備えを進めて一歩ずつ上っていきたいです。
専門家「特効薬はまだない」
新型コロナウイルスとどう向き合うのか、茨城県の感染症対策連携協議会の委員を務める福島県立医科大学の安田貢 特任教授に聞きました。
福島県立医科大学 安田貢 特任教授
インフルエンザと同じく、どう共存していくかという時代になったが、インフルエンザと新型コロナウイルスの決定的な違いは特効薬の存在で、コロナは残念ながらまだ出ていない
そうしたなかで、ことしも秋に予定されている自己負担になったワクチン接種を受けたほうがいいかについては…
福島県立医科大学 安田貢 特任教授
直近の去年秋のワクチン接種を受けた人は高齢者で5割、全体では2割と減ってきている。
ワクチンの主な目的は重症化を防ぐことなので65歳以上の高齢の方は自分の命を守るため、接種してほしい。
若くても高血圧、糖尿病、肥満などのある人は重症化を予防するため接種を考えてもらいたいし、20代や30代の若い人についても祖父母と同居していたり高齢の方に接する職業についていたりする場合には周りを守るために接種する判断もあると思う。
対策は「仲間どうしで『共助』の姿勢を」
また、安田教授はコロナ禍で得られた有効な感染対策として、マスク、手洗い、換気の3つを挙げたうえで、この1年で、これらの対策への人々の意識がバラバラになってしまったと指摘しました。
福島県立医科大学 安田貢 特任教授
マスクの着用は自分の身を守るよりも拡散防止の意味合いが強い。
人が多い会議室や電車の中ではマスクをエチケットと捉えたり、食事の前の手洗いや会議室では換気しようと声を掛け合ったりするなど、5類になったことで1人1人の判断になったことを災害と同様『共助』で仲間どうしで話をしながら感染対策をする姿勢が望まれる。
「感染症との戦い続く」
5類への移行に伴って感染者数の全数把握が終了し、県内120の医療機関が1週間分の感染者数を
翌週にまとめて報告する「定点把握」に変わりましたが、今後も増加か減少かの傾向に注意することが大事だと指摘しました。
福島県立医科大学 安田貢 特任教授
これで感染症との戦いが終わるわけではない。世界的な経緯を見ると、SARSやMERSなど
感染症がおよそ10年ごとに流行していて、次の流行の際、今回の非常に貴重な経験を生かすために誤った情報に流されることなく共通認識を持って伝えていくことが重要だ。