朝の子どもの居場所がない?“小1の壁”問題 寄せられた声を取材しました
新学期が始まり、小学校に進学した子どもをもつ保護者の中には「小1の壁」と呼ばれる問題に直面している人も少なくありません。これまでは主に放課後の子どもの預け先がないことが議論されてきましたが、実は“朝の子どもの居場所”に関する悩みも明らかになってきています。
こうした朝の「小1の壁」についてアンケート募集を行ったところ、“共働き世帯”の保護者や学校の教員などから、110件以上の声が寄せられました。「おはよう日本」では声を寄せていただいた複数の方を取材し、放送でお伝えしました。
情報を寄せて下さったみなさま、ご協力いただきありがとうございました。実際にどんな情報が取材・番組へつながったのかをご紹介します。
(おはよう日本 取材班)
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情報提供➀ 子どもを送り出すのは“スピーカーの音声”
愛知県で暮らす40代の女性から寄せられた声です。夫婦は共働き。小学2年生になった娘と3歳の息子を育てながら、大手メーカーで正社員として働いています。
保育園は朝7時から預けることができましたが、小学校の集団登校の時間は7時45分。それを待ってから家を出ると、夫婦ともに勤務時間に間に合わなくなります。
悩んだ末、これまで通りの時刻に3歳の息子を連れて保育園へ向かい、そのまま出勤。小学生の娘には、リビングにあるスピーカーで小学校の出発時間を合図。1人で戸締まりをして登校してもらうことにしました。
本当は玄関で直接かけてあげたい「いってらっしゃい」の一言。それをスピーカーに任せて出勤せざるをえないことに、葛藤を抱えています。
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声を寄せてくれた女性
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「やっぱり親として、“いってらっしゃい”と声をかけてあげたいというのはあります。私が仕事休みの日で娘を見送ると“いてくれてよかった”と言っていて、本当は私に“いってきます”って言いたいんだろうなって…。私も新しい部署に移って役職がついていて、育児と仕事をなんとか両立したい気持ちがあります。ただ定時の勤務を確保するために、結構“綱渡り”に近い状態で、しわ寄せが子どもにいってしまっているのが申し訳ない気持ちです」
情報提供② 娘を見送るため大手企業を退職
声を寄せてくれた方の中には、「朝の“小1の壁”」が原因で転職を決断した人もいました。
神奈川県内に住む40代の男性は、ことし1月に大手通信会社の管理職を退職。妻は金融関係の企業の管理職で、毎朝確実に子どもの世話をするには、夫婦どちらかが仕事を変えるしかありませんでした。
現在、フレックス勤務など柔軟な働き方ができるベンチャー企業で働いている男性。子どもを見送ることができる環境を重視しました。
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声を寄せてくれた男性
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「(娘の入学を迎えて)楽しみって思えているのがよかったなと思います。おそらく今までの環境だったら不安でしょうがなかったので。以前の会社で長く働き続けられたら、それはそれでよかったなとは思いますけれども、家庭環境や社会の変化とかも考えたうえで、今回、転職をして新しい職場と環境で次のステップを進んでいくというのは、間違った選択ではなかったなと思っています」
情報提供③ 「校門の外に置いて出勤せざるをない」
さらに、都内の小学校に入学した子どもがいる契約社員の女性から、このような声も。
小学校に進学する前は、朝7時15分に家を出て、保育園に子どもを預けてから出勤していました。ところが、小学校の開門は午前8時。夫婦どちらもその時間まで出勤を遅らせることは難しく、子どもを学校の外で10分ほど待たせることになるといいます。
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声を寄せてくれた女性
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「冬の寒い雪の日とか、真夏の暑い日に外に置いていかなきゃいけないことがやはり厳しいなと思いまして。小学1年生になるとこんなに変わるの?っていうのはみんな悩んでいるところなんですよね」
情報提供④ 「時短勤務がきれて対応できない」
夫婦共働きで、3人の子どもを育てる女性からも声が寄せられました。
子ども7歳、5歳、2歳。現在は時短勤務が認められていますが、一番下の子が3歳となる
今年6月からは通常勤務に戻る決まりになっていると言います。
下の2人が小学校にあがっても同じ問題に直面するため、子どもを朝送り出せる勤務時間の仕事への転職も検討していると言います。
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声を寄せてくれた女性
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「小学校になった途端、ぽんって放されるというか。働く女性に限らず男性でもメインで子育てを担う方にとっては、すごくしんどいというか負担が大きくなる」
ディレクター取材後記
朝の“小1の壁”は、親の仕事の問題だけではなく、学校現場の働き方改革や、女性のキャリア形成の課題、夫婦間の偏った役割分担など、さまざまな要因が絡んでいて、とても複雑です。
「寿退社」が死語になったように、いつか「“小1の壁”で仕事を辞めるなんて昔の話だね」と言える日がくることを願って、子育てと事の両立について取材を続けていきたいと思います。