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中田敦彦さん「気候変動に耳を傾けてもらうには」

「気候変動を取り上げるのは善意というより、メガトレンドの一環」と話すのはお笑いコンビ・オリエンタルラジオの中田敦彦さん。ユーチューバーとしても活躍中です。
中田さんは500万人以上の登録者がいる自身のユーチューブチャンネルで、気候変動や異常気象について取り上げています。

メディアや専門家からは、「大事なテーマなのに取り上げてもなかなか視聴者や読者に見てもらえない」と嘆く声も聞かれる気候変動についての話題。

なぜ中田さんはこのテーマを取り上げるのでしょうか。
NHK民放6局連動の気候キャンペーンの番組に出演した中田さんに聞きました。
(NHK「1.5℃の約束―いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」取材班)

【総合】9月24日(日)午前10:05~11:00 放送

「気候変動はメガトレンドの一環」

シンガポールからオンラインでインタビューに答える中田さん

中田さん

「気候変動とかサステイナビリティーを取り上げた理由としては、そうした方がいいという善意というよりは、正直なところメガトレンドの一環として捉えているという側面が大きいと思っているんですよね。


ブロックチェーンやNFT*、宇宙産業と同様、これからの世界の10年20年の動向として、サステイナブルと気候変動は大きな流れになってきます。


皆さんがシンプルにそれだけで興味があるかというと、そうではないジャンルだと思うので、自分なりに工夫しながらやってきたつもりです。基本的に人間は正義ではあまり動かない、というところが重要だと思います。社会正義につながるということで、動く方もいらっしゃると思いますが、多くの人は自分の生活で手いっぱいだと思います。


ですので、いつもその生活を少しでも改善するのに役立つのかという視点でお話できたらと思っています」

*「Non-Fungible Token」の略称で「代替不可能なトークン(インターネット上でやりとりする暗号資産)」。

「気候変動」でも視聴者が見てくれる コツとは?

中田さんのユーチューブより

中田さん
「地球を救おうとなると、『じゃあ私の仕事ではない』と多くの方は思います。『それはもうトップの大統領だとか首相、官僚の方々がやればいいのではないか』と考えてしまうのです。


(私が取り上げるのは)グリーンビジネス*1とかそういうところです。車を買い替える時に、ガソリン車とEV、どっちを買えばいいんだろうという時に、ガソリン車はいつまで販売されるんだろうとか、EVは減税がどうなんだろうとか。お金が優遇されるなら、EVにしてみようかとかですね。


あと、グリーンビジネスでこっちの企業がこれから伸びますよ。ESG*2投資などを行っている企業に関してはこれから伸びるし、そうでないところは税制とかで業績が悪くなる。


だから就職する時に、そういう視点のある企業の方がいいのではないかと言うと、就職を考える人が少し環境に配慮してる企業に入ろうかということで聞いてくれたりとかします」


あくまで生活導線の中に置くというのが重要だと思って、企業とか就職とか購入とか、税金といった話に落とし込んでお話したという覚えがあります」

*1環境問題の解決に役立つ製品やサービスなど提供するビジネスのこと
*2環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)


「気候変動に限らず、例えば投資の話や政治の話でも遠くに感じてしまう方が多いと思うのですが、できれば身近な投資であるとか政治に関しても、『これはちょっと』というテーマは皆さん見てくださる印象があります。


企業でも中古車の企業の不祥事とかになると、身近ですし、生活に関わっているので見られますし、政治でも税金の話になると『税金が上がると嫌だな』という気持ちで見てくれます。


ですので、気候変動が生活に支障をきたす。または、気候変動に取り組めば生活が改善するということを導線として描ければ、見てくれるだろうと思って工夫しています。ただ難しいほうのジャンルではあるなと感じます」

「損したくない」という気持ちをくすぐる

さらに、中田さんが気候変動について関心を持って見てもらえるポイントとして挙げたのが「損をしない」ということ。いったいどういうことなのでしょうか?

中田さん
「損か得かの両面からお話していくと、人は得したいっていう気持ちも多いのですが重要なのが損したくないという気持ちが多いということなんです。


心理学的に少し得をするのと損するのでは、どっちがいいかというと、少し損するほうが嫌なんですよね。『これをやってしまうと損ですよね』という話は、『業績がよくても環境に配慮してない企業に勤めると、この先危なさそうですよね、怖いですよね』という話し方にすると、『そうなの?』っていうことで耳を傾けてくれたりします。


本気で*1.5℃を目指そうが、きれいごとじゃない人も確かにいるわけですよね。
そういう人と、実利を伴って1.5℃を目指そうという人が混ざっているところがあると思います。視聴者の方の大半が実利とか実損を恐れている以上、私だったら実利実損の方で聞いてもらうようにしていくという感じです」

*異常気象が頻発する危機を食い止めるため、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えるという国際目標。

ユーチューブでは強いことばで、気候変動について訴える中田さん。日本がきちんと気候変動対策を行わないことで、経済的に世界から遅れをとってしまうとの危機感をもっていました。

中田さん
「EVだとか環境税だとか、そういう形で世界と日本企業が水をあけられて、そのニュースで目が覚めるのかなと思っています。あと発電ですよね。このルールチェンジの本質っていうのが、非常に日本に不利な形で動いていることも事実だと思います。


このままだとヨーロッパとか中国とかが、違う形の新しい時代の発電の仕組みやモビリティーの仕組みを牛耳ることになります。メインを取ってる企業の利益になるルールなので、日本は発電と自動車において、次の時代を迎える準備ができていない国になっているので、このまま行くと間違いなく、劣勢の20年30年を迎えなければいけないと思います。


厳しい話になってくると思うのですが、その危機感は恐らくまだないのかと思います。
私の感覚と視聴者の感覚が一致してるかというと、まだそうではないと思います」

メディアが伝える災害、どうみる?

中田さん
「気候変動と各災害がひも付いていないことのほうが多いと思いますね。多くの水害が気候変動の影響で非常に激しくなっている。それは、被害が大きくなっているという現象に関して、もっとメディアが伝えるべきではないのでしょうか。


そういうふうに考えていらっしゃる方が増えるといいなと思いつつ、これからはやっぱりメディアが多様化しているわけですよね。ジャンク、フェイクと、良質なものっていうのがないまぜになっている中で情報の価値も二極化していると思います。


きちんとした情報を取ろうと思ったら、コストを払って時間をかけてとらなくてはいけません。むしろ、根本的なことをみんなで知っていくことのほうが重要なのかなと思います。


今までは学校で教わらなかった、国が言ってくれなかった、テレビが教えてくれなかったという時代だったと思いますが、自分たちの身を守る情報であったり、次の時代を生き抜く情報は自分たちで選んで、お金とか時間をかけて、きちんといい情報に触れようねっていうことを言っていくほうが現実的かなと私は思ったりしています」

ひとつのメディアだけでは届かない…

左から高瀬耕造アナウンサー(NHK)、鈴江奈々アナウンサー(日本テレビ)、山口豊アナウンサー(テレビ朝日)、日比麻音子アナウンサー(TBS)、松丸友紀アナウンサー(テレビ東京)、安宅晃樹アナウンサー(フジテレビ)

NHKと民放6局が行っている気候キャンペーン「1.5℃の約束、の約束―いますぐ動こう、気温上昇を止めるために。」

2年目となることしもキャンペーンの旗印として、メディアの垣根を超え、6局連動で番組を制作しました。自身も多くの視聴者を抱える中田さん、テレビが発信するということをどうみているのでしょうか?

中田さん
「テレビのストロングポイントはユーチュブと比べてどこなのか。そこを大伸ばしていくことが重要だと思います。組織力と信頼度だと思います。攻撃力よりも防御力がストロングポイントになってきていると思います。その安心感とか信頼度とか、そこにいる人材の層の厚さです。


局が合同でやること自体がすごく大きい試みですよね。連携して情報を伝えるというのは非常に重要なことだと思います。キャンペーンに関しては、まさに組織力ですよね。動画を配信しているわれわれみたいな、個人でやっている者たちではなかなかできないことなので、それは期待していることです。


伝わるところには伝わっていると思いますし、メディア自体が多様化していますので、昔みたいに誰もがこのメディアしか見ていないという時代ではないと思います。


私も自分の娘にTikTokやYouTubeショートで流れているような短い動画のトレンドを教えられるのですが分かりません。今は国民全員が見ているコンテンツ自体がないと思います。


テレビで届く層に向かって伝えるし、ユーチューブで届く層にも伝える、ショート動画はショート動画で届ける。一度に全員が見るという、すべてが集中していた時代を目指すことはすばらしいことだと思うのですが、私自身も自分の事を見てくれる視聴者のことを見ないといけないと、最近よく思っています」

最後に、中田さんからわれわれテレビメディアへの叱咤(しった)激励も…

中田さん
「マス・メディアというものがもうない時代だと私は思っているので、ターゲットが何歳から何歳のどういう人なのか、そういうことを明確にして深く刺していくっていう覚悟は必要だと思います。だから、一部の人にしか届かないという感覚で、私はいいと思っています。


どのメディアも一部の人にしか届けられない時代だからこそ、メディアごとに連携して、ユーチューブはユーチューブ、TikTokはTikTok、民放は民放、NHKはNHKの届く層に、深く刺して一人でも多く、これは自分事なんだという人を増やせられれば、そういった人たちが増加していく中で、ある時、社会の空気がガラッと変わることが起きると思います。


私は私の視聴者層に深く刺していきたいなと思いますし、皆さんは皆さんで信頼している視聴者の皆さんに深く刺していく。そういう気持ちが重要なのかなと思うので。


古いも新しいもないと私は思っていますから、今の時代のそれぞれの立ち位置で自分の信じることを自分の言葉で届けるしかないと思っています。そんな中で私もね、ここにお邪魔させていただいたのは何か敵じゃないっていう(笑)気持ちですよね。

テレビの方にネットを敵だと思っている方もいますし、お互いが理解し合えないのも厳しいと思います。われわれは一つのメディアをやっている同じ星の住民であるという気持ちです。これから協力しながら、いろんなコンテンツを作って励まし合っていけたらなと思っておりますので、ぜひご自身の職を全うしていただければと思います。応援しております」

テレビの力を信じて伝え続ける

こうした中田さんの率直な声は、番組に参加していた各局のアナウンサーに驚きと反省も含めて受け止められていました。

松丸友紀アナウンサー(テレビ東京)

「今ネットの時代って言われるようになってきていますがこういうオールドメディアだからこそ、テレビだからこそ伝えられる層もいるわけで、生活の軸にテレビがあるような世代の方々にもしっかりと届けていくことが大事です。


やはりこの問題は、一つの層だけがやればいい問題ではなくて、全体で取り組んでいかないといけないからこそ、そういった方々に伝わるように丁寧に伝えていく。私たちは信頼を積み重ねて放送してきたと思いたいです」

TBSの日比アナウンサーは、中田さんの「どのメディアも一部の人にしか届けられない」といったことばにハッとさせられたようで…。

日比麻音子アナウンサー(TBS)

「自分に問うているまださなかではあるのですが、テレビだからと思って私自身が勝手に抱いていた欺まんがあったと思います。みんなに伝えなくてはと思っていたことです。


今ここで目があった視聴者の方お一人に届けば、つながってくる日がくるんだということを誰よりもまずテレビの一員である私が信じないといけなかったなと思いました」

「反論したい部分がある」と切り出したのは、フジテレビの安宅アナウンサー。人は正義では動かない、と中田さんが言ったことに対して、「やっぱり愛じゃないか」と反論。「愛」という思わぬキーワードも飛び出し、スタジオは驚きと笑顔に包まれました。

安宅晃樹アナウンサー(フジテレビ)

「今この社会って核家族化であったり仕事もリモートワークになって人と関わりがなくなったりと、もちろんいい部分もありますが、人との結びつき、これが社会全体そして地球全体を救う最後のラストピースになるんじゃないのかなと思います。


できればお互いにお互いのことを褒めあって好きでいるそういった正義っていうのを僕は大切にしたい」

山口豊アナウンサー(テレビ朝日)

「若い世代の方こそそういうとこを大事にするんですよね。若い世代の特徴じゃないかと僕、思っていまして。


今おっしゃったように、愛ってとても大事なところ。家族とか昔からの友だちとか愛を大事にすることはひとつ世の中を変えていくもの、すごく大きな要素じゃないかなと思っています。


そういうことを思っている人が多くなれば多くなるほど社会がいつか変わっていくのだと思います」

NHKの高瀬アナウンサーは改めて、届けるためにさまざまなアプローチが必要であることを問いかけていました。

高瀬耕造アナウンサー(NHK)

「どう身近なこと、自分のこととして気候変動の問題を取りこんでくれるかということで言うと、中田さんの言うようなアプローチは誰に対してなのか、正直この番組は関心がある人が見てくれる番組になっていないか。


私たちが『今こういったことが起きている、大事ですよ』と伝えるのは、そういった意味で意識が高い人に向けての放送になっているかもしれません。


こういった番組から目をそらす人や関心をもってくれない人にどう振り向いてもらうかにおいてはまた違うアプローチが必要で、そこには中田さんが言うような生活導線の中に気候変動を置くこと、安宅さんの言うように愛で振り向いてもらうっていうようないろんなアプローチが本当に必要なんだと思いました」

鈴江奈々アナウンサー(日本テレビ)

「とにかく頻度を上げて皆さんの接触を増やして意識を変えて社会の空気を変えていく。その取り組みに、もうとにかく力を注いでいきたいですね。

100点満点を求めるのではなくって、加点方式で、これ1個できた、これ1個できたっていう感じで、みんなで頑張ろうっていう」

収録を終えて

一人ひとりが自分ごととして考えることが大切な気候変動の問題。

最後まで記事を読んでくださったあなたは、どんなメッセージなら多くの人に伝わると思いますか?これからも一緒に考えていきたいので、ぜひコメントをお寄せください。お待ちしています。

担当 地球のミライの
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みんなのコメント(2件)

感想
白い巨人
60代 男性
2023年10月9日
私は残念ながら番組を見逃したのですが、私が読んでいるある人のブログでNHKの1.5Cの約束や、中田敦彦氏の「気候変動に耳を傾けてもらうには」が紹介されていました。NHKホームページを読んだ感想を遅ればせながらコメントさせていただきます。私は地球環境問題に強い危機感を感じており、日頃から関連するメディアにも眼を通すよう心掛けていますが、それでもNHKの番組1.5Cの約束は見過ごしておりました。
一つの番組が全員に届くわけではありません。放送後に大きな反響があるとも限りません。しかしながら、当番組を見てそのことをブログに書いている人が存在し、そのブログを読んで私は番組放送後にNHKのホームページをチェックしました。このように、NHKの放送は大きな影響力を持っています。
真摯に問題に取り組んで放送すれば、少しずつ浸透していくと思います。
今後の放送に期待しています。
感想
econeco
20代 女性
2023年9月26日
番組見ました
ホント!意識も高くなく関心の薄い人は見ないですよねー
各局ニュース報道の際には色々な意見がある事や事実確認に注意が必要な苦しい裏事情、メディア向けのガイドブック紹介に込められてたのかしら?
世界に遅れる日本だけど関心ない人もニュースは見るから、キャスターさん最後にまとめ意見でハッと気付く言葉をお伝えするだけでは不足なのかも。
例えば、HVが強い日本とEV対比する報道だけど、PHEVなら長距離も安心だし、近距離EVなので環境配慮して充電スタンド整備にもつながりますよ的なの早くから報道して、タバコ増税みたいに社会全体で合理的な道筋を示す役割がメディアかも