むりやりセックスされることも…技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）への性暴力（せいぼうりょく）

【国際（こくさい）コミュニケーションネットワークかけはし・代表（だいひょう）越田（こしだ）舞子（まいこ）さん】

技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）などを支（ささ）えている、佐賀県（さがけん）にある「国際（こくさい）コミュニケーションネットワークかけはし」。代表（だいひょう）の越田舞子（こしだまいこ）さんは、2015年（ねん）から100人（にん）以上（いじょう）の実習生（じっしゅうせい）の相談（そうだん）をうけています。もともと「かけはし」は日本語（にほんご）教室（きょうしつ）でしたが、SNSなどで実習生（じっしゅうせい）の相談（そうだん）をはじめ、家（いえ）をなくした実習生（じっしゅうせい）のためにシェルターをつくって生活（せいかつ）を支（ささ）えるようになりました。

【「かけはし」で保護（ほご）された外国人（がいこくじん）たち　※写真提供（しゃしんていきょう）越田（こしだ）さん】

とくに最近（さいきん）多（おお）いのが、性暴力被害（せいぼうりょくひがい）の相談（そうだん）です。ベトナムやカンボジアからきた実習生（じっしゅうせい）の女性（じょせい）たちが、「高齢者（こうれいしゃ）の施設（しせつ）で、利用（りよう）している人（ひと）からよく体（からだ）をさわられていやだ」、「会社（かいしゃ）が用意（ようい）した家（いえ）に毎日（まいにち）社長（しゃちょう）がきて、むりやりセックスされる」などと相談（そうだん）しています。この2年間（ねんかん）で相談（そうだん）は１０件（けん）ほどありました。しかし越田（こしだ）さんは、被害（ひがい）はもっと多（おお）いはずだといいます。

支援団体（しえんだんたい）・越田舞子（こしだまいこ）さん

「はじめて実習生（じっしゅうせい）から性被害（せいひがい）を相談（そうだん）されたときはおどろきました。なぜそんなことができるのかと。しかしいまは、被害（ひがい）が多（おお）いため、“またか…”と思（おも）うようになりました。女性（じょせい）たちが性被害（せいひがい）を『おかしい、いやだ』と思（おも）って相談（そうだん）してくれれば、まだいいほうなんです。ほとんどの実習生（じっしゅうせい）たちは、自分（じぶん）がされたことが性被害（せいひがい）だとわからず、自分（じぶん）をせめています。なかには、相談（そうだん）することをあきらめてしまったり、相談（そうだん）の途中（とちゅう）で連絡（れんらく）がとれなくなってしまったりするときもあるんです。ていねいに、ゆっくり話（はなし）を聞（き）くようにしています」

ある技能（ぎのう）実習生（じっしゅうせい）が伝（つた）える性被害（<

【オンラインで話（はなし）を聞（き）いた、いまベトナムにいるグエンさん（仮（かり）の名前（なまえ））】

性被害（せいひがい）のことを伝（つた）えたいと、ひとりの女性（じょせい）が話（はなし）を聞（き）かせてくれました。ベトナム人（じん）のグエンさん（仮（かり）の名前（なまえ）・30才（さい））です。

「ベトナムの家族（かぞく）にお金（かね）をあげたい」、「いつかベトナムで給料（きゅうりょう）の高（たか）い仕事（しごと）をしたい」と、実習生（じっしゅうせい）として2018年（ねん）の夏（なつ）に日本（にほん）にきて、佐賀県（さがけん）の建築資材（けんちくしざい）をあつかう会社（かいしゃ）ではたらきはじめました。しかし、日本（にほん）にくるまでは、給料（きゅうりょう）は月（つき）に10万円（まんえん）ほどと聞（き）いていましたが、実際（じっさい）は６万円（まんえん）ほど。仕事（しごと）の内容（ないよう）も、製品（せいひん）の検査（けんさ）だと聞（き）いていましたが、体（からだ）をつかう鉄筋（てっきん）をくみたてる作業（さぎょう）で、男性（だんせい）が多（おお）かったといいます。

グエンさんが性被害（せいひがい）にあったのは、はたらいてすぐのことでした。会社（かいしゃ）の社長（しゃちょう）や上司（じょうし）から体（からだ）をさわられ、さらに社長（しゃちょう）からはびっくりすることを言（い）われました。

グエンさん

「社長（しゃちょう）から食事（しょくじ）のとき『おれの精子（せいし）を飲（の）むか』と、なんども言（い）われました。そのときは意味（いみ）がわからなかったのですが、家（いえ）に帰（かえ）って辞書（じしょ）で調（しら）べて、かなしい気持（きも）ちになりました。ほかにも、仕事（しごと）にむかう車（くるま）のなかで、女性（じょせい）がはだかでおどっている映像（えいぞう）を見（み）させられ、『男性（だんせい）の性器（せいき）や女性（じょせい）の性器（せいき）は日本語（にほんご）でなんというか』と聞（き）かれて、くりかえし言（い）うようにもとめられました」

社長（しゃちょう）のことばや、ほかの男性社員（だんせいしゃいん）から体（からだ）をさわられることを「いやだ」と思（おも）っていたグエンさんですが、からかわれているのは自分（じぶん）にも原因（げんいん）があると思（おも）ってしまい、だれにも相談（そうだん）することはできなかったといいます。そして、はたらきはじめて８か月（げつ）ほどたった2019年（ねん）の春（はる）。仕事（しごと）をしているときに男性社員（だんせいしゃいん）から体（からだ）をさわられたグエンさんは、抵抗（ていこう）するために、作業（さぎょう）していた鉄（てつ）パイプをとっさに投（な）げたといいいます。

グエンさん

「現場（げんば）を監督（かんとく）する男性社員（だんせいしゃいん）が私（わたし）のおしりをさわってきたんです。まわりに人（ひと）もいるなかでとてもはずかしくていやだったので、とっさに作業（さぎょう）していた鉄（てつ）パイプをその男性（だんせい）に投（な）げてしまいました。男性社員（だんせいしゃいん）が私（わたし）のせいでケガをしたと社長（しゃちょう）に言（い）ったため、私（わたし）はその日（ひ）のうちに会社（かいしゃ）をやめさせられました。体（からだ）をさわられたことがきっかけだったと話（はな）そうとしましたが、だれも私（わたし）が話（はな）すことを聞（き）いてくれず、そのことを言（い）うことはできませんでした」

会社（かいしゃ）は、実習活動（じっしゅうかつどう）を管理（かんり）・監督（かんとく）する監理団体（かんりだんたい）に対して「グエンさんが上司（じょうし）の言（い）うことにしたがわず、会社（かいしゃ）での問題行動（もんだいこうどう）がめだつ」と報告（ほうこく）。グエンさんの実習期間（じっしゅうきかん）は２年（ねん）以上（いじょう）残（のこ）っていましたが、監理団体（かんりだんたい）からも実習（じっしゅう）をやめることと、ベトナムに帰（かえ）ることをうながされたといいます。

実際（じっさい）にどんなことがあったのか。私（わたし）たちはグエンさんがはたらいていた会社（かいしゃ）の社長（しゃちょう）に聞（き）きました。

会社（かいしゃ）の社長（しゃちょう）

「日々（ひび）の話（はなし）のなかで性的（せいてき）な言動（げんどう）はあったかもしれないが、冗談（じょうだん）だ。セクハラをしたという認識（にんしき）はまったくない。日常的（にちじょうてき）に勤務態度（きんむたいど）がわるかったので会社（かいしゃ）をやめさせたが、実習生本人（じっしゅうせいほんにん）や社員（しゃいん）からセクハラについてなにか言（い）われたことはない。（グエンさんが）自分（じぶん）にとって都合（つごう）がいいように話（はなし）をつくったのではないか」

私（わたし）たちは監理団体（かんりだんたい）にも、なぜ会社（かいしゃ）をやめたのか、性被害（せいひがい）があったのかと聞（き）きましたが、こちらも「性被害（せいひがい）についての報告（ほうこく）はうけていない」と答（こた）えました。

監理団体（かんりだんたい）は、会社（かいしゃ）へのききとりに加（くわ）えて、グエンさんにも通訳（つうやく）といっしょにききとりしたといいますが、会社（かいしゃ）をやめた理由（りゆう）はグエンさんの問題行動（もんだいこうどう）にあり、本人（ほんにん）から性被害（せいひがい）についての訴（うった）えがあったという記録（きろく）は残（のこ）っていないといいます。

監理団体（かんりだんたい）の担当者（たんとうしゃ）

「ほかの技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）のケースでも、文化（ぶんか）や言語（げんご）のちがいでトラブルになることはよくある。今回（こんかい）の性被害（せいひがい）についても本人（ほんにん）の認識（にんしき）と事実（じじつ）にちがいがあったのではないか」

実習（じっしゅう）の途中（とちゅう）でベトナムへ　“もっと日本（にほん）ではたらいていたかった”

【越田（こしだ）さんにであい、笑（わら）うグエンさん　※写真提供（しゃしんていきょう）越田（こしだ）さん】

会社（かいしゃ）をやめたあとも、グエンさんは日本（にほん）に残（のこ）ってはたらきたいと考（かんが）えていました。多（おお）くの実習生（じっしゅうせい）は、日本（にほん）に行（い）く飛行機（ひこうき）や研修（けんしゅう）をうける費用（ひよう）をつくるために、本人（ほんにん）や家族（かぞく）が借金（しゃっきん）しています。グエンさんも、家族（かぞく）が１００万（まん）円（えん）以上（いじょう）の借金（しゃっきん）をしてくれていたため、実習（じっしゅう）の途中（とちゅう）でベトナムに帰（かえ）れば、その借金（しゃっきん）を返（かえ）すことができないと不安（ふあん）になりました。

グエンさんは、実習生（じっしゅうせい）を支（ささ）える「国際（こくさい）コミュニケーションネットワークかけはし」の越田（こしだ）さんのことをSNSで知（し）り、新（あたら）しくはたらく会社（かいしゃ）を見（み）つけたいと相談（そうだん）。越田（こしだ）さんは、なぜ会社（かいしゃ）をやめたのか、１０日間（かかん）にわたってていねいに聞（き）いた結果（けっか）、ようやく性被害（せいひがい）のことがわかったといいます。

支援団体（しえんだんたい）・越田舞子（こしだまいこ）さん

「はじめは自分（じぶん）がうけた性被害（せいひがい）について、なかなか言（い）おうとしませんでしたが、泣（な）きながら少（すこ）しずつ話（はな）してくれました。なんとかして力（ちから）になりたいと思（おも）い、日本（にほん）に残（のこ）る方法（ほうほう）がないかさがすことにしました」

グエンさん

「日本語（にほんご）がうまく話（はな）せないので、越田（こしだ）さんに話（はな）すまで、体（からだ）をさわられたことをだれにも相談（そうだん）できませんでした。ベトナムの家族（かぞく）や友人（ゆうじん）にも男性（だんせい）に体（からだ）をさわられたことを言（い）えば、自分（じぶん）がおこられると思（おも）ったので言（い）えませんでした。越田（こしだ）さんに相談（そうだん）できたことで、プレッシャーから解放（かいほう）されたことをおぼえています」

グエンさんは雇用保険（こようほけん）を使（つか）って越田（こしだ）さんの団体（だんたい）のシェルターで生活（せいかつ）することにしました。その間（かん）に、新（あたら）しい会社（かいしゃ）として別（べつ）の建設会社（けんせつがいしゃ）が見（み）つかりましたが、男性（だんせい）が多（おお）く、重（おも）いものをはこぶ仕事（しごと）をつづけることはできないと思（おも）い、あきらめました。

ほかの種類（しゅるい）の会社（かいしゃ）ではたらくことをのぞんだものの、技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）には原則（げんそく）、日本（にほん）にきたあとで仕事（しごと）の種類（しゅるい）を変（か）えることは認（みと）められておらず、新（あたら）しい会社（かいしゃ）を見（み）つけることはできませんでした。

越田（こしだ）さんは外国人（がいこくじん）の在留許可（ざいりゅうきょか）を管理（かんり）する出入国在留管理局（しゅつにゅうこくざいりゅうかんりきょく）にも、グエンさんの在留資格（ざいりゅうしかく）を延長（えんちょう）できないかと相談（そうだん）しましたが、はたらく会社（かいしゃ）がないため技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）として日本（にほん）に残（のこ）ることは認（みと）められず、ベトナムに帰（かえ）らざるをえませんでした。

ほんとうなら2021年（ねん）の４月（がつ）まで実習生（じっしゅうせい）として日本（にほん）ではたらくはずだったグエンさん。ベトナムに帰（かえ）り、いまはふるさとの会社（かいしゃ）ではたらいていますが、月（つき）の給料（きゅうりょう）は日本円（にほんえん）で2万（まん）５千円（せんえん）ほど。借金（しゃっきん）はまだ６０万円（まんえん）ちかく残（のこ）っており、すべて返（かえ）すことができるかどうかわからないといいます。

グエンさん

「もっと日本（にほん）ではたらいていたかったです。会社（かいしゃ）での性被害（せいひがい）がなければ、私（わたし）はものを投（な）げることはなかったし、いまでもはたらくことができたのではないかと感（かん）じています。私（わたし）が外国人（がいこくじん）で女性（じょせい）なので、弱（よわ）い立場（たちば）を利用（りよう）されたのだと感（かん）じました」

越田（こしだ）さんは、国（くに）が所管（しょかん）し、技能実習（ぎのうじっしゅう）の適正（てきせい）な実施（じっし）や技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）の保護（ほご）をになう法人（ほうじん）、外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）（OTIT）にも相談（そうだん）。性被害（せいひがい）について監理団体（かんりだんたい）や会社（かいしゃ）を調査（ちょうさ）するようはたらきかけましたが、答（こた）えはなかったといいます。

外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）の広報担当者（こうほうたんとうしゃ）は、グエンさんのケースについて、個人情報（こじんじょうほう）のため答（こた）えられないとしたうえで、実習生（じっしゅうせい）への性被害（せいひがい）には次（つぎ）のように対応（たいおう）しているといいます。

外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）の広報担当者（こうほうたんとうしゃ）

「特別（とくべつ）に性暴力（せいぼうりょく）を対象（たいしょう）にした相談窓口（そうだんまどぐち）はないが、生活（せいかつ）や仕事（しごと）にかんする相談（そうだん）を多岐（たき）にわたって母国語（ぼこくご）でうけつけている。相談内容（そうだんないよう）にもよるが、基本的（きほんてき）には、相談（そうだん）をうけた段階（だんかい）で事実関係（じじつかんけい）の確認（かくにん）のために受（う）け入（い）れ先（さき）や監理団体（かんりだんたい）にききとりをおこない、法令違反（ほうれいいはん）がみとめられる場合（ばあい）については実地検査（じっちけんさ）をおこなう」

越田（こしだ）さんは、技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）の性被害（せいひがい）は、給料（きゅうりょう）やはたらく時間（じかん）などの相談（そうだん）にくらべて重視（じゅうし）されにくく、対応（たいおう）がおろそかになっているのではないかといいます。

支援団体（しえんだんたい）・越田舞子（こしだまいこ）さん

「性暴力（せいぼうりょく）について外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）や出入国在留管理局（しゅつにゅうこくざいりゅうかんりきょく）などに話（はな）したものの、うやむやになってしまった。仕事（しごと）の内容（ないよう）や給料（きゅうりょう）の話（はなし）については対応（たいおう）してくれても、実習生（じっしゅうせい）の性暴力（せいぼうりょく）についてはとりあってもらえない。性暴力（せいぼうりょく）でつらい思（おも）いをしている外国人労働者（がいこくじんろうどうしゃ）たちが声（こえ）をあげられる社会（しゃかい）になってほしい」

専門家（せんもんか）は構造的（こうぞうてき）な問題（もんだい）を指摘

【ジャーナリスト・巣内尚子（すないなおこ）さん】

著書（ちょしょ）「奴隷労働（どれいろうどう）―ベトナム人（じん）技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）の実態（じったい）」（2019）などで、技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）について取材（しゅざい）してきたジャーナリストの巣内尚子（すないなおこ）さんは、実習生（じっしゅうせい）の性被害（せいひがい）は、受（う）け入（い）れ企業（きぎょう）や監理団体（かんりだんたい）など複数（ふくすう）の支配関係（しはいかんけい）にもとづいた性暴力（せいぼうりょく）であり、外国人技能実習制度（がいこくじんぎのうじっしゅうせいど）の構造的（こうぞうてき）な問題（もんだい）があると指摘（してき）します。

ジャーナリスト・巣内尚子（すないなおこ）さん

「技能実習生（ぎのうじっしゅうせい）は会社（かいしゃ）の寮（りょう）などに住（す）んでいるケースが多（おお）く、職場（しょくば）だけでなく家（いえ）も会社（かいしゃ）に管理（かんり）されていることが多（おお）いんです。そうした職場（しょくば）と住（す）む場所（ばしょ）がおなじ環境（かんきょう）で、仕事以外（しごといがい）のプライベートの場面（ばめん）でも性暴力被害（せいぼうりょくひがい）にあう可能性（かのうせい）が高（たか）まります。さらに、性被害（せいひがい）を訴（うった）えたことで雇用主（こようぬし）の機嫌（きげん）を損（そこ）ねてやめさせられれば、給料（きゅうりょう）だけでなく家（いえ）も失（うしな）いかねません。さらに、仕事（しごと）を失（うしな）えば在留資格（ざいりゅうしかく）を失（うしな）うリスクもあるため、実習生（じっしゅうせい）たちは簡単（かんたん）に声（こえ）をあげることができません」

さらに、外国人技能実習生（がいこくじんぎのうじっしゅうせい）として日本（にほん）にくるアジアの女性（じょせい）たちは、性被害（せいひがい）に対（たい）する認識（にんしき）にちがいがあるとも指摘（してき）します。巣内（すない）さんは２０１５年（ねん）～２０１６年（ねん）に、ベトナムの農村（のうそん）などで、日本（にほん）で技能実習（ぎのうじっしゅう）をおえた女性（じょせい）らにききとりをおこないました。

ジャーナリスト・巣内尚子（すないなおこ）さん

「日本（にほん）で実習（じっしゅう）した女性（じょせい）たちに『会社（かいしゃ）でいやなことをされませんでしたか』と聞（き）くと、『いいえ』という答（こた）えが返（かえ）ってきましたが、聞（き）きかたを変（か）えて『体（からだ）をさわられていやな思（おも）いをしましたか』と聞（き）くと、返（かえ）ってきた答（こた）えは『はい』でした。つまり、性的（せいてき）な言動（げんどう）でいやな思（おも）いをしているにもかかわらず、性被害（せいひがい）という概念（がいねん）がとぼしいため、相談（そうだん）するという考（かんが）えさえもてない実態（じったい）があります。だからこそ、日本（にほん）は実習生（じっしゅうせい）たちへの性被害（せいひがい）に責任（せきにん）をもって対応（たいおう）するべきだと思（おも）います。実習生（じっしゅうせい）を受（う）け入（い）れた以上（いじょう）、国（くに）は企業（きぎょう）や監理団体（かんりだんたい）に対（たい）してきびしく指導（しどう）し、ハラスメントへの取（と）りしまりを強化（きょうか）すべきです」

巣内（すない）さんは、性被害（せいひがい）にきずつく実習生（じっしゅうせい）をなくすために、受（う）け入（い）れ企業（きぎょう）や監理団体（かんりだんたい）、外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）とは別（べつ）に、独立（どくりつ）した性暴力（せいぼうりょく）の相談窓口（そうだんまどぐち）が必要（ひつよう）だといいます。

ジャーナリスト・巣内尚子（すないなおこ）さん

「受（う）け入（い）れ企業（きぎょう）や監理団体（かんりだんたい）、そのほかの相談窓口（そうだんまどぐち）においても、セクハラをはじめとする性暴力（せいぼうりょく）は証拠（しょうこ）が残（のこ）りにくいため、問題（もんだい）がなかったことにされるケースは少（すく）なくありません。だからこそ、専門知識（せんもんちしき）をもったスタッフが母国語（ぼこくご）で対応（たいおう）するなど、実習生（じっしゅうせい）たちのSOSを聞（き）き、支（ささ）えていく仕組（しく）みが必要（ひつよう）だと思（おも）います」

日本（にほん）ではたらく外国人（がいこくじん）のみなさんへ

職場（しょくば）や学校（がっこう）で、会社（かいしゃ）の人（ひと）や先生（せんせい）から性的（せいてき）な言葉（ことば）を言（い）われたりしていませんか。また、同意（どうい）していないのに体（からだ）をさわられたり、むりやりセックスをされたりして、いやな思（おも）いをしていませんか。それらはすべて、性暴力（せいぼうりょく）です。

性被害（せいひがい）にあっても「相談（そうだん）したら怒（おこ）られるのでは」「仕事（しごと）を失（うしな）うかもしれない」と不安（ふあん）になるかもしれません。でも、声（こえ）をあげることで、必（かなら）ずあなたの力（ちから）になってくれる人（ひと）がいます。また、被害（ひがい）にあうのは女性（じょせい）だけではありません。男性（だんせい）もいやな思（おも）いをすることがあったら、相談（そうだん）してください。

性暴力（せいぼうりょく）にきずつく気持（きも）ちに国籍（こくせき）や在留資格（ざいりゅうしかく）のちがいは関係（かんけい）ありません。あなたがこれ以上（いじょう）、性暴力（せいぼうりょく）にきずつくことがないよう、力（ちから）になってくれる人（ひと）が相談窓口（そうだんまどぐち）でまっています。

【相談窓口（そうだんまどぐち）はこちら】
●国際（こくさい）コミュニケーションネットワークかけはし
https://www.facebook.com/kakehasi.come/
●外国人技能実習機構（がいこくじんぎのうじっしゅうきこう）
https://www.otit.go.jp/
●SNSによる性暴力（せいぼうりょく）の相談窓口（そうだんまどぐち）「Cure time（キュアタイム）」
https://curetime.jp/
※対応言語（たいおうげんご）：英語（えいご）、中国語（ちゅうごくご）、韓国朝鮮語（かんこくちょうせんご）、タイ語（ご）、タガログ語（ご）、スペイン語（ご）、ポルトガル語（ご）、ベトナム語（ご）、ネパール語（ご）、インドネシア語（ご）
※受付日時（うけつけにちじ）：月（げつ）・水（すい）・金（きん）・土曜日（どようび）の16時（じ）～21時（じ）

＜あわせてお読（よ）みいただきたい記事（きじ）＞
・ 【vol.59】大好きな日本で 性被害に… （前編）
・ 【vol.60】大好きな日本で 性被害に… （後編）