性的行為への“同意”どう示す?性暴力ってどんな行為? 10~50代男女1,046人アンケート
“性暴力”について 人々がどのような意識や考え方を持っているのか。「性暴力を考える」取材班はLINE社と協力して、10~50代の男女1,046人にアンケート調査を行いました。
2019年7月30日放送のクローズアップ現代「“顔見知り”からの性暴力 ~被害者の苦しみ 知ってますか?~」で、その一部を紹介しましたが、このページで全ての結果を公開します。 それぞれのデータを見て、皆さんは何を感じますか?
20代女性の半数以上 「性暴力被害 自分の周囲で聞いたことがある」
今回のアンケート調査はLINE社と協力し、15歳以上の10代から50代男女に限定して、個人が特定されない形で行いました。調査結果データを「日本の15~59歳の縮図」としてみることができるように、総務省が国勢調査をもとに公表している人口を元に算出した人口構成比率に合わせて集計しています。
まず尋ねたのは、「同意していないのに無理やり性的行為をされた」「そうした行為をほのめかされたことがあり、嫌だと感じた」というような話を自分の周囲で聞いたことがあるかどうか。全体では「聞いたことがある」と答えた人は 3人に1人に上りました。誰にとっても身近なところで性暴力が起きている実態、または起こり得るリスクがあることがわかりました。
世代・男女別でみると、「聞いたことがある」は20代女性がもっとも高く51%。またすべての世代で、男性よりも女性のほうが多くいました。男性に比べて女性のほうが、性暴力の被害に遭っている、あるいは被害に遭うリスクが高い可能性がうかがえます。
一般的に「性暴力」とはどのような行為を指すと考えられているのか。
もっとも多かったのは「相手が“嫌だ”“やめて”と言うなど拒絶の意志を明確に示しているのに性的な行為をする」(89%)。続いて「相手が嫌だと感じているのに、体のプライベートゾーンを触る」(83%)、「痴漢行為」(82%)でした。相手の体を無理やりに触る行為を「性暴力」と考えている人たちが多いことがわかりました。相手の体を触らなくても、裸の写真や動画を見せたり、相手の裸を見たりするなど、相手が望まない性的行為はすべて「性暴力」です。
世代・男女別でみるとさまざまな傾向が見えました。世代が上がるほどそれぞれの行為を“性暴力”と捉える人が増える傾向があります。
ほとんどの行為について、“性暴力”と捉える人が最も多かったのは50代・女性でした。また10代、20代、30代、50代では、それぞれの行為を“性暴力”と捉える女性は男性より多い傾向がうかがえる一方、40代では逆の傾向がみられました。「相手が嫌だと感じているのに髪を触る」「裸の写真や動画を見せる」「相手の裸を見る」「痴漢行為」などを“性暴力”と捉える人は、男性より女性のほうが少なかったです。各世代の男女によって“性暴力”の捉え方が少しずつ異なることがわかりました。
“相手の家や部屋に行ったら” “キスをしたら” 性行為への同意?
次に、一般的に「性的な行為への同意があった」とみなされてもしかたがないと思うものについて尋ねました。
もっとも多かったのは「キスをする」(67%)、続いて「二人きりで同じ部屋で寝る」(66%)、「相手の家や部屋に行く」(46%)でした。一方「二人きりで飲酒」(14%)や「二人きりで車に乗る」(9%)などは、仕事などで陥ることがあり得そうな状態ですが、“性的行為への同意があった”と一般的にみなされてもしかたないと思っている人もいました。
世代・男女別でみると、世代が高くなるにつれていくつかの項目で「“性的行為への同意があった”と一般的にみなされても仕方ない」と思う人が増える傾向がありました。中でも「二人きりで個室に入る」は、10代男性(23%)・女性(31%)に比べて、50代男性(46%)・女性(57%)はほぼ2倍に上りました。10~20代の若者世代の人が、40~50代の中年世代の人と二人きりで「個室」に入ったとき、前者は“性的行為”などはまったく想定していないのに、後者は“性的行為への同意”と捉えてしまう傾向があるかもしれません。
50代男性の4割 「性的同意 相手の態度からわかる」
では、人々は「性的行為への同意」をどのように取るのが望ましいと考えているのか。
2人に1人が「毎回は同意をとる必要はないが、つきあいはじめは明確に言葉で確認するべき」を選択した一方、4人に1人が「言葉で確認しなくても相手の態度からわかる」を選択していました。性的行為への同意を取る場合、言葉による明確なコミュニケーションは必要ないと考えている人たちが少なくない傾向が見えました。
世代別にみると、若い世代のほうが「毎回、明確に言葉で同意をとるべき」を選択した人が多かった一方、世代が高くなるほど「言葉で確認しなくても相手の態度からわかるものである」を選択した人が多い傾向がありました。中でも50代男性が最も多く、40%でした。
しかし身近な相手などから無理やりに性的行為を迫られたときに、被害者は相手の態度がひょう変することを恐れたり、その後の関係性などを考えたりして、言葉でも行動でも「断れなかった」「抵抗できなかった」というケースは決して少なくありません。「性的行為への同意は、言葉で確認しなくてもわかるものではない」というのが取材班の実感です。
8割超が「ワンストップ支援センター」を知らない
最後に、もし性暴力の被害に遭ったり、そうした行為をほのめかされたりした人が自分の近くにいた場合、相談先としてどんな立場の人や機関を勧めたいと考えているのか聞きました。
もっとも多かったのが「性犯罪や性暴力被害の支援窓口」(48%)、続いて「同性の友だち」(42%)でした。
世代・男女別にみると、30代~50代の男女は「性犯罪や性暴力被害の支援窓口」をもっとも多く選んでいた一方、10代~20代・男女は「同性の友だち」をもっとも多く選んでいました。若い世代のほうが、身近な存在を相談相手として重視している傾向が見えます。
「性犯罪や性暴力被害の支援窓口」として代表的な機関が、ワンストップ支援センターです。
産婦人科、泌尿器科などの医療機関、カウンセリング、法律相談などの専門機関とも連携して性犯罪・性暴力に関する相談窓口です。全都道府県に設置されています。
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しかし全体および世代・男女別に見ても、「性暴力被害ワンストップ支援センター」などの支援機関があることを知らない人は 8割を超えました。
性暴力被害ワンストップ支援センターの存在や活動内容が、社会にまだ広く知られていないことがうかがえます。
【注】アンケート調査はLINE社と協力をして、個人が特定されない形で行いました。
回答者内訳は以下のとおりです。
10代 男性106名 女性105名
20代 男性105名 女性105名
30代 男性105名 女性104名
40代 男性105名 女性101名
50代 男性105名 女性105名
※設問の特性から、10代は15~19歳の方に限定してご回答いただきました。
※各数値は、数点第一位を四捨五入し、整数で表記しています。
※アンケート結果の集計には、ウェイトバック集計(回収されたアンケート結果を母集団の構成比に合わせて集計)を用いました。「日本の15~59歳の縮図」として調査結果データをみることができるように、総務省が国勢調査をもとに公表している人口を元に算出した人口構成比率に合わせて集計しています。
調査主体:NHK
調査方法:「LINE Research Platform」を活用したスマートフォンリサーチ(※以下参照)
調査対象者:全国15~59歳(「LINE アンケート」モニター)
有効回答数:1,046名
調査時期:2019年7月4日(木)~7月6日(土)
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