「聖地」しまなみ サイクリストは何を?走るだけじゃない場所に
- 2024年05月10日
開通から25年を迎えた西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」。今では「聖地」と呼ばれるまで国内外のサイクリストからの人気が高まっています。一方でサイクリストには走って通り過ぎてしまうだけの人も多く、いかに長く滞在してもらうかが課題となっています。そこでサイクリストたちの行動を徹底分析して経済効果につなげようという実験が始まっています。
特集の内容はNHKプラスで配信中の「ひめポン!」(NHKGTV午後6時10分~)でご覧いただけます。
サイクリストは何をしている?
世界有数の「サイクリングロード」として高い知名度を得ているしまなみ海道には、国内外から年間のべ30万人以上のサイクリストが訪れます。
しかし、彼らのしまなみ海道での行動は詳しく把握できていません。
どんな人たちが島のどこを走り、何にお金を使っているのかを分析することが課題となっているのです。
行動の「見える化」を
そこで去年秋から始まったのがサイクリストたちの行動を「見える化」しようという実証実験です。
愛媛と広島でレンタサイクル事業を運営する団体は、東京のIT大手などとアプリを共同開発。自転車を貸し出す時にダウンロードしてもらい休憩場所やおすすめスポットなどの情報を提供します。
利用する際にはそれとあわせて、年齢や性別、居住地などを入力してもらうほか、利用の同意を得た上で位置情報を提供してもらっています。走行中にどこを通りどこに立ち寄ったかを把握しようというのです。
実験を始めて以降、アプリのダウンロード数は1万を超えました。蓄積したデータをもとに共同開発したIT大手と分析を重ねています。
なぜ何もない場所に?
位置情報をもとにサイクリストたちが止まっていた場所を分析すると、観光施設や店もない意外な場所に多くの人が立ち寄っていることが見えてきました。
現場を訪れると付近に目印や看板などはありません。サイクリストたちはいったい何をしに来たのでしょうか。
「美しい潮流を偶然見つけたので、ゆっくり眺めて楽しみます」
「地図で渦巻きのイラストがあったんだけど、ここのことだったんだね」
潮が速く激しく波打つ海に対岸の島が重なり合う景観を眺めて写真に収めていたのです。
ほとんどの人たちが偶然見つけたと話していました。
「走って楽しむテーマパーク」に
一方で、サイクリストたちは、写真を撮ってひと休みすると走り去ってしまいます。
サイクリストたちが多く立ち止まっていた場所は村上海賊ゆかりの地近く。そこでレンタサイクル事業の運営団体では、こうした人たちを近くの関連するミュージアムなどへ誘導することができればより満足度を高められるのではないかと検討しています。
さらにデータを沿線の店などに提供して販売戦略の参考にしてもらうことで経済効果を生み出したい考えです。
「自転車の人を中心に地域を潤していくことが観光の1つのパートを担っていて、25年間かけてしまなみ海道をここまで変えてきたのでさらにもう1段上げていきたい。魅力的なポイントがあちらこちらにいっぱいあるとなれば、おのずと滞在時間も延びてくるのではないかと思う。走るだけでなく、楽しむテーマパークみたいな、そんな風にできればいい」
特集の内容はNHKプラス配信終了後、下記の動画でご覧いただけます。