あなたもできる!映像を作るコツ04~「テクネ映像の教室」影×辻川幸一郎~
2023年10月12日(木)
10月12日(木)にも放送した「テクネ映像の教室」。
この「まなびノート」では番組ディレクターが取材を通じて知った「映像を作るコツ」を発信します。
「テクネ映像の教室」の<テクネトライ>というコーナーは、第一線のクリエーターたちに「〈お題〉の技法で実際に映像を制作してもらう」もの。
クリエーターたちが普段映像を制作する際には「この音楽の世界観を表す映像」とか「この商品の良さを伝える映像」が大半で、「この技法の映像」という依頼を受けることはまずなく、
番組に参加したクリエーターたちは、その依頼が新鮮だと引き受けてくれ、普段とは違う七転八倒しながらチャーミングな映像を作ってくれたそうです。
番組ディレクターの織田聡さんが綴ってくれた「映像を作るコツ」あなたもできるかも!?
技法「影」の映像制作にチャレンジしたのは辻川幸一郎さん。
日常の中でふと浮かび上がる妄想や幻覚を、手遊びの感触で映像化する映像作家です。
Cornelius のMVをはじめとして、CM、WEB、ショートフィルムなど、様々なジャンルで企画演出をてがけています。
「影」技法とは
物体に光を当てることによりできる影を利用して映像を作る技法。
光のあたる方向、光の色や強さ、また元となる素材によって様々な表情を生みだすことが
できます。
これまで多くの広告作品やミュージックビデオを制作してきた辻川さんですが
NHKのスタジオに用意したセットはとてもシンプル。
白い四角のステージに、釘が一本のみ。
「影」という現象自体をシンプルに映し出すことはできないか?
と考えて、動かない釘にさまざまな方向から光を当てて出来た
“いろんな方向へ伸びた釘の影”を静止画で撮影しようという企画を持ってスタジオ入りした辻川さん。
「影」を使った、というよりは「影」そのものを捉えたいと考えていました。
撮影が始まりました。
細部までこだわりが感じられる現場。
まず、あらゆるサイズや形の違う釘を持ち込み、その中からしっくりくる釘の形を選び抜きます。
この釘に決めた! と思っても念のためにと用意した鉛筆と
どちらがモチーフにふさわしいか、辻川さんはまた悩み始めます。
ようやく「釘で行こう」と決定したところで辻川さんがひとこと。
「コマドリだと影の面白さを表現できないねー」
自ら照明装置を持って釘の周りをぐるぐる回ったことで、釘の影の動き自体が面白いと
気づいたとのことでした。
静止画の撮影の予定が、急きょ動画の撮影に切り替わりました。
・四角い白いステージの中心に釘が一本打ち込まれている
・ステージの周りに円形のレールを敷き、照明装置がさまざまな軌跡で移動する
・カメラは一箇所に固定して釘とその影を動画で撮影
・釘の影は刻々と形を変えて変化し続ける
・光の強さや距離を変えると変わる、影の濃さも作品に取り入れることに
膨大な映像素材を音楽に合わせタイミングなどを編集すると
一本の動かない釘の周りを不思議な影たちが動き回る、なんとも不思議で楽しい作品が
完成しました。
タイトルは「くぎかげ」