「攻め」と「守り」の闘いが、恐竜に進化をもたらした!【守り】を極めた鎧(よろい)竜の「ズール」は、トゲトゲの皮膚とハンマーのような尾で敵から身を守った。ズールの化石には生きていた時の皮膚も残る。一方、【攻め】を極めたのは2020年に発見された新種の肉食恐竜「マイプ」。それぞれの化石から進化の謎をひもとく。最強恐竜はどっちだ!?(悪霊マイプvs.鉄壁ズール)
【Nスぺ公式】恐竜超ノート ゴンドワナ恐竜編
2023年7月29日(土)
2023年3月21日(火)19:30~総合テレビで放送されたNHKスペシャル「恐竜超世界2 前編 巨大恐竜の王国 ゴンドワナ大陸」。番組では伝えきれなかった最新の恐竜研究の一部を「恐竜超ノート」として、ご紹介していきます!
目次
1.最強肉食恐竜・マイプの骨はスカスカ!?
超巨大恐竜・プエルタサウルスと互角の死闘を繰り広げた南アメリカ最強の肉食恐竜・マイプ。
マイプ発見物語はこちら
長さ30cmにもなる巨大なカギ爪を備えた前足が最大の武器だが、実はもう一つ、強さの秘密があった。
それはなんと、スカスカの骨!こちらは、発掘されたマイプの背骨の化石(下記画像1枚目)。その断面(下記画像2枚目)をよく見てみると・・・ハチの巣のような模様が見える。実はこれは、骨の中に小さな空洞がたくさんあった痕跡。マイプの骨は、まるでスポンジのような空洞の多いスカスカの構造になっていたのだ。
このスカスカの骨は、マイプが属するメガラプトル類という肉食恐竜のグループの特徴で、マイプはメガラプトル類の中でも、特に骨の“スカスカ化”が進んでいた。このスカスカの骨のおかげで、マイプはその巨体にも関わらず、俊敏に動くことができたと考えられている。
軽やかにジャンプし、獲物にツメで襲い掛かるマイプ。
その強さの裏には、骨の中にまで及んだ進化が隠されていたのだ。
2.プエルタサウルスの前足にはツメがない!?
番組のドラマの主人公・ハルカも注目していた、プエルタサウルスの「ある特徴」。
プエルサウルスの産卵はこちら
こちらは、アルゼンチンの博物館で撮影したプエルタサウルスと同じティタノサウルス類と呼ばれる巨大恐竜の前足の復元骨格。やはり、前足(写真中央)にはツメがない。
実は、恐竜の中でも特に巨大化したグループであるティタノサウルス類では、巨大化を伴う進化の過程で、前足のツメの数が減っていく傾向が見られる。その理由はまだよくわかっていないが、竜脚類の前足は厚いパッド状の組織で覆われており、それが体重数十トンにもなるティタノサウルス類が歩く際に、大きな荷重のかかる前足への衝撃を和らげた、という研究がある。もしかすると、このツメのない前足も、ティタノサウルス類の重い体重を支えるのに、適した構造だったのかもしれない。
3.バジャダサウルスの首のトゲは「帆」だったかも!?
バジャダサウルスは2019年に記載された、ゴンドワナの異形恐竜のニューカマーだ。首にそびえ立つトゲの強烈なインパクトで多くの恐竜ファンを魅了している。
このトゲは、神経棘と呼ばれる首の骨の一部が突き出したものだが、実は最近、下のスピノサウルスのように、骨と骨の間に膜が張られた「帆」のような構造だった、という研究も発表されている。
しかし、バジャダサウルスを記載した研究チームは、帆ではなく、角質に覆われたトゲ状の器官だったという考えを支持しており、今回番組では帆ではなくトゲ状の復元をした。
このバジャダサウルスのように骨の特徴から、その姿かたちを復元していくことが、恐竜研究の面白いところ。
はたして、10年後のバジャダサウルスの復元は、どのようになっているだろうか・・・?