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祭りを受け継ぐ者たち ~山鹿灯籠まつり~

灯籠師と郷土芸能伝承部
  • 2023年09月14日

2023年8月15・16日、4年ぶりに「山鹿灯籠まつり」が開催されました。きらびやかな金灯籠(かなとうろう)を掲げた踊り手が町を練り歩き、2日間で13万人が訪れました。祭りの名前にもなっている山鹿灯籠は和紙とのりだけで作られる伝統的工芸品です。灯籠を作る灯籠師、部活動で山鹿灯籠踊りを受け継ぐ高校生たちに密着しました。

灯籠師

山鹿市にいる灯籠師は現在8人。そのうち最も若いのが、34歳の中村潤弥(じゅんや)さんです。幼い頃から手を動かすことが好きで中学時代の職場体験がきっかけとなり、故・徳永正弘灯籠師のもとに弟子入り、8年の修業期間を経て灯籠師となりました。灯籠師は祭りの最後に市内の大宮神社に奉納する灯籠「奉納灯籠」を毎年制作しています。中村灯籠師は過去に、ブルーインパルスをデザインしたり、廃棄される野菜や果物を原料としたフードペーパーで灯籠を作ったりするなど、独自の柔軟な発想でさまざまな奉納灯籠を制作してきました。「見に来た人々が楽しめる灯籠」を作ることを目標に、今年は約8カ月をかけて6基の灯籠を制作しました。

奉納灯籠を制作している中村灯籠師
中村灯籠師

奉納灯籠を作ることが灯籠師として重きを置く大事な仕事なので、完成した灯籠を多くの人に見ていただいて楽しんでほしいです。

鹿本農業高校・郷土芸能伝承部

山鹿市にある鹿本農業高校・郷土芸能伝承部は山鹿灯籠踊りを中心に、全国各地で踊りを披露しています。部員7人、週6日の練習に励み、祭り直前には踊りの合宿も行いました。3年間の祭りの中止で先輩たちは祭りに出られずに卒業していきました。部員全員が初めての「山鹿灯籠まつり」参加ですが、出られなかった先輩たちの想いを胸に祭りに挑みます。3年生の冨吉葉月(とみよし はづき)さんに意気込みを聞きました。

鹿本農業高校・郷土芸能伝承部
冨吉さん

部員みんなで祭りを楽しみ、見に来てくださる人たちに拍手をもらって初めての山鹿灯籠まつりを成功させたいです。

8月15日 祭り1日目

祭り当日の朝、中村灯籠師のもとに地域の人々が集まります。完成した奉納灯籠は神社に奉納される前の2日間、各町内に飾り付けて展示されます。飾り付けの場所まで送り届けることも灯籠師の役目です。届けられた灯籠は、地域の人々で協力してひとつひとつ丁寧に飾り付けられました。8人の灯籠師によって制作された全28基の灯籠が各町内に展示され、訪れた人々を楽しませました。

中村灯籠師が自ら各町内に灯籠を運ぶ
日吉町7番灯籠「さくら湯 内観」
原町8番灯籠「世界平和の鐘」

郷土芸能伝承部 いよいよ本番

日暮れ頃、待ちに待った「山鹿灯籠まつり」が始まりました。豊前街道に沿って出店が立ち並び、山鹿灯籠踊りの各団体が町を練り歩きます。郷土芸能伝承部もいよいよ本番。当日は卒業生も踊りの列に加わり、共に会場を盛り上げました。

卒業生と共に踊りを披露
冨吉さん

お客さんを笑顔にできてよかったです。このメンバーで山鹿灯籠まつりに参加できたことがとても嬉しかったです。

8月16日 祭り2日目

祭りの2日目には、見どころの1つ「千人灯籠踊り」が行われました。約1000人の踊り手が金灯籠を掲げて、円を描くように舞い踊りました。

千人灯籠踊り

室町時代から続く神事 "上がり灯籠"

踊りが終わる頃、各町内に飾られていた奉納灯籠のもとにはっぴ姿の人々が集まってきます。祭りの最後に行われる神事「上がり灯籠」の準備のためです。「上がり灯籠」は飾られていた灯籠を大宮神社に奉納する伝統の神事で、室町時代から600年以上続いています。「ハーイ、トウロウ」の掛け声と共に中村灯籠師も町内の一員として、灯籠の入ったみこしを大宮神社に担いでいきます。深夜0時頃、今年制作されたすべての灯籠が奉納されました。

大宮神社に灯籠を奉納する「上がり灯籠」
みこしを担ぐ中村灯籠師
中村灯籠師

奉納灯籠は毎年やっていましたが、実際にみこしを担いで持っていくのは久しぶりだったので、実感の湧くお祭りになりました。

今年の祭りで奉納された灯籠は来年の祭りまでの期間、大宮神社の燈籠殿で見ることができます。中村灯籠師は祭りが終わった後、既に来年の灯籠の題材を考え始めており、年明けから6基の奉納灯籠を制作予定です。郷土芸能伝承部も宮城県で行われるイベントに向けて、日々の練習を続けています。伝統ある祭りはまた来年に受け継がれていきます。

  • 吉村聡志

    コンテンツセンター(技術)

    吉村聡志

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