男女格差全国ワースト 山梨の「政治」は昭和のまま?!
- 2024年05月02日
"0.138"って何の数?
都道府県ごとの男女の平等の度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」。
大学教授らのグループが「政治」「行政」「教育」「経済」の4分野について、男女比を都道府県ごとに分析していて「政治」の分野は、国や県、市町村議会の議員数の男女比や女性議員のいない議会数などの指標を総合して算出しています。「1」に近い数値であるほど男女格差が小さく、「0」に近くなるほど格差が大きいことを示しています。
山梨県の「政治」分野の指数は"0.138"
山梨県は男女格差が全国で最も大きく、不平等な実態が浮き彫りになりました。
(立町千明記者)
山梨県議会をのぞいてみると
37分の2
2015年から2期8年間にわたって、山梨県議会の37議席中、女性議員はたったの1人。
それが2023年4月の統一地方選挙で2人に増えました。しかし・・・傍聴席から議会を見渡してみてもスーツ姿の男性がずらり。この現状を女性議員はどう見ているのかー。
保守系の会派に所属する久嶋成美さんは、保育所や役場で勤務した後に市議会議員を経て「上野原市・北都留郡選挙区」で初めて当選した女性議員です。
ずっと男性中心の政治で、議会の構成もすべてそう。
「嫁の立場でできるわけないだろう」という否定的な言葉を言われたことも
しかし、夫や地域の支援者に励まされて、前向きに議員活動を続けてくることができたといいます。
男性だから女性だからではなく、両方の意見を取り入れることが大事。意思決定の場には両方の意見があって、初めて住民の福祉向上が進んでいく。
やっぱり古い慣習から抜け出す男女共生社会の過渡期、長い過渡期
そしてもう1人。「甲府市選挙区」で初当選した共産党の菅野幹子さんはシングルマザーで、2人の子どもを育てながら活動しています。この日は小中学校の給食費無償化を目指す勉強会に出席して、自治体の動きについて情報を共有していました。
なんだここはと、どうしてこんなに男性ばっかり多いかと。議会って実社会と私たちが日々暮らしている社会と違うというのはすごく衝撃で
なかなか増えない女性議員。何がネックになっていると思うかと聞いてみると。
休みや土日なく、時間も朝から夜までみたいなことが、いわゆる選挙活動だと考えると、時間的な制約とか体力面とか、そういったところでは負担になることが一般的には多いんだろうなと
そうしたなかで、女性議員の存在意義をこう考えています。
世代ごとに生じてくるお金や環境の課題にも共感を持ってもらえる、同じ立場や目線で共感しながら話せるのが心強い存在だと思っていたので、そういう意味では男性ばかりの県議会ではなくて、別の視点で別の考え方を議会に反映させるという意味では女性がいる意義は大きい
市町村議会ごとに見てみると
市町村議会ごとに見てみると、27議会のうち19の議会に女性が進出していますが、裏を返せば8議会で女性議員はゼロです。
議員の数も男性が360人に対し、女性は40人。男女比は9分の1です。
こうした議会をめぐる状況の中、子育てをしながら奮闘している女性議員がいます。甲斐市議会議員の若尾彰子さん(35)は、2022年の選挙で初当選しました。小学生と保育園児の2人の子どもの母親で、2人目の出産後に当時の仕事を続けることができなかったことが、政治の世界を志したきっかけだといいます。
やる気とスキルと資格がある人材が家庭の事情で、子育てとか両親の介護とかで働けないのは社会にとって本当にいいことなのか、すごく疑問に感じていました。それを変えられるのはどこかを考えたときに、議員の仕事にたどり着いた
しかし、地盤も経験もなく、さらに子どもも幼いため「いま、議員を目指さなくてもいいのではないか」という意見も多かったといいます。それでも挑戦したのは、子どもたち、将来世代のための地域づくりが必要だと感じたからでした。
子育て世代が抱えているもどかしさとか困難さを、本当に本腰を入れてやってくれる方たちはいるんだろうか。50年100年先を見据えてしっかりと考えて決定してくれる人たちはいるんだろうかを考えたときに、よし自分でやってみようって
若尾さんは子育て世代の目線で、地域の課題を解消しようと取り組んでいます。学校現場の状況や通学路の安全対策など、小学生の母親たちの声に直接、耳を傾けます。
通学路でブロック塀が傾いているのが大丈夫かなと
いざ倒れたときに、避難する通路すらない
子育てしている議員があまりいなくて、しかも女性だとすごく話しやすいし分かってもらえる。男性の年配の方とかだと、多分言ってもわからないだろうしピンとも来ないだろうし
若尾さんは「何か意見があればSNSで連絡をください」などと呼びかけて、議員へのアクセスのしやすさをアピールします。議員は遠い存在。そんな意識を変えようという狙いがあります。そして若尾さんは、みずからが立候補した当時は、女性議員の前例が少なく、議員の生活が見えにくかったことに不安を感じていたと言います。
女性で子どもを育てながら選挙をやって、議員活動をしているという人が県内でいなかったです。当時。夜とか休日ってどうなっているんだろうっていうのがすごく疑問だったんです。9時から5時が就労時間ですって決まっている職業ではないので、本当に日常生活、プライベートと両立ができるのかっていうところはすごく不安であって。なってみて分かったのは本当にそれぞれ、いろんなスタイルの方たちがいる。いろんな議員の形があるんだなっていうことを知ってもらう必要があるのかな
朝から晩まで、土日休みもなしーーーいわゆる「議員」の働き方ではなくても「できる」ということを発信すれば、議員を志す女性も増えてくるのではないかと考えています。
議会中に子どもの急な発熱の対応に追われることもありますが、夫や地域が子育てを支援する「ファミリーサポート」の協力も得つつ、自分なりに子育てとの両立を模索しています。
そんな若尾さんを支えているのは子どもたちからの手紙です。子どもたちが生きる社会をより良くしたいという初心を思い出し、勉強にも熱が入ります。
そんな若尾さんに対する先輩議員からの評価はー。
いろいろ勉強しているし、積極的に子育てしながら大変だと思うけど、頑張っているなと、僕らも逆に刺激を受けます
こういったケースもあるんだっていうのを、一例が既にあるっていうのを見て、じゃあ私もできるかもしれない、やってみようかなって思ってもらえるような存在になれたらいいな
地方議会に詳しい専門家は
取材を通して、「政治は男性」とか「前例が少ない」ことが、女性議員が増えない一因になっていると感じました。こうした山梨の現状について、地方議会に詳しい専門家はこう指摘しています。
『昭和』のままでいいと思ってる。お父さんの言ってることを聞いてお母さんも投票する。それで十分だという環境がまだまだ残ってる
山梨の政治は「昭和」を引きずっているとズバリ。
やっぱり時代の変化に合わせてどう変えていくか。高度経済成長の時代は経済が大事でしたが、いまの人口減少社会は子育て、環境、福祉という女性が非常に活躍しやすい課題が地方政治の重要トピックになっている。子どもを産む世代や子育て世代に選ばれない地域はやはり困った状態になって、持続可能性がある自治体を作れなくなっている。女性や若い人の声を聞く場を作っていくことが大事だと思います
河村准教授がメンバーの「全国町村議会議長会」は、女性議員を増やすための対策として以下のような提案をしています。
女性議員が増えるのをただ待つのではなく、議会が先んじて女性を受け入れる体制を整備することが必要だというのです。
人口減少が進み、地方議員のなり手不足が深刻な地域では、女性が立候補してくれるような環境を整えている。今までお父さんに任せていたという女性の中から、地方の政治や行政に関心を持ってもらい、立候補してみようという人たちが出てくることが期待できる
そして、河村准教授を含めて取材した3人の女性議員が口をそろえて必要だと話していたのはーーー。
性別だけでなく、年齢や経歴など様々な立場の人が集まることで議論が充実し、社会や地域がより良くなるための政策につながることが期待されます。山梨の「政治」に多様性が広がるのか、これからの議会運営にも注目です。