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四国のローカル線 予土線50周年 “地方鉄道の価値”とは

  • 2024年03月06日

高知県と愛媛県を結ぶJR予土線が全線で開通して50周年を迎えました。風光明媚(めいび)な路線として観光客に人気があるものの、利用者の減少による赤字が続き、どう路線を維持・存続させるかが課題となっています。“予土線の価値”について取材しました。

50年の予土線の歩み

1974年3月1日に全線開通したJR予土線。全長は76点3キロにおよび、四万十町の「若井駅」から宇和島市の「北宇和島駅」まで高知と愛媛を結ぶ唯一の鉄路です。

高知県側では四万十市と四万十町の1市1町を経由。
清流・四万十川を車窓から眺めることができ、トロッコ列車は観光客にも人気があります。

一方、人口減少が進み、長年、赤字路線になっています。
JR四国によりますと、1キロメートルあたり1日に平均何人の乗客を運んだかを示す予土線の「輸送密度」は旧国鉄から民営化された1987年度に676人でした。
しかし、人口減少や新型コロナウイルスによって利用客の減少が続き、昨年度の「輸送密度」は220人となっていて、路線の維持・存続が課題となっています。

予土線の利用状況は

予土線はJR四国が運行する路線の中で最も採算が悪くなっています。
JR四国によりますと、100円の収入を得るために必要な経費を示す「営業係数」は1718円17倍のコストがかかっています。

こうした中、地方鉄道は転換点を迎えています。その大きなきっかけが去年秋の法改正です。
新型コロナの感染拡大をきっかけに地方路線の慢性的な赤字が顕在化し、地域の公共交通機関を持続可能な形で再構築することは喫緊の課題です。
ただ、赤字などを理由に議論を進めたい鉄道事業者と、地域の住民の移動手段を確保したいという自治体の間で考え方や意見が異なり、議論が進んでいません。

そこで、制度として新たに設けられたのが「再構築協議会」です。
国が積極的に関与し、事業者と自治体の意見などを聞いて、話し合えるようにしました。
対象路線は輸送密度が1000人未満の区間を優先するとしていて、予土線はその対象にあたります。
すでに広島県と岡山県を結ぶJR芸備線で再構築協議会が全国で初めて設置されています。

再構築協議会ではどんな議論が

「再構築協議会」では、「廃止ありき」とか「存続ありき」といった前提をおかずに、ローカル線の利用促進や、鉄道を廃止してバスに転換すべきかを調べる実証実験など、地域の実情に沿ったあり方を検討する場になります。

予土線でも再構築協議会は設置されるのか

JR四国は、予土線など3路線の一部区間を候補に挙げ、再構築協議会という形式にはこだわらないとしつつも、「2024年度には何らかの形で進めたい」として協議を始めたいという意向を自治体側に打診しています。

一方、地元の自治体は廃線につながるのではないかと警戒感を示していて、現状発展はありません。

地元沿線では、高校生の通学や買い物など、日常の足として使っている人もいます。
残してほしいという声が多いものの、利用者が少ない現状に複雑な思いも抱えています。

開業してから利用しているが、最近はほとんど貸し切り状態でさびしい。路線を残してもらいたい一方、沿線住民である自分たちもあまり利用していないという矛盾があり、いずれなくなっていくのかなと現実的には思う(住民)

利用促進に向けた取り組みも重要に

地元では新しい動きもあります。高知・愛媛の両県それぞれに設置されていた利用促進のための協議会が、去年1つにまとまり、県境を越えて連携を深めることになりました。

鉄道のあり方をめぐっては、北海道の夕張市で2019年に「攻めの廃線」を行って鉄道の代わりに路線バスを運行しましたが、その路線バスが運転手不足に見舞われる事態となるなど、慎重な検討が必要であることは明らかです。

予土線は50周年を迎えて土地に根ざしています。鉄道は地域のシンボルであり、観光資源という側面もあるだけに、改めてその価値について議論してほしいと思います。

  • 中川聖太

    高知放送局 記者

    中川聖太

    2020年入局。名古屋局で警察や中部空港を担当し、2023年夏から高知局へ。高知市政や経済を担当。得意料理はキーマカレー。

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