高知で報道ヘリの訓練 南海トラフ巨大地震に備えて
- 2023年02月01日
大規模災害時、様子を伝え迅速な被災者支援につなげるために欠かせないのが報道ヘリコプターです。
南海トラフ巨大地震に備え、高知県内でも定期的に訓練を行っています。
(高知放送局 チーフカメラマン 松川敬)
NHKの報道ヘリコプターとは
写真の機体が、訓練のため広島から飛来したNHK報道ヘリコプターです。
訓練について説明する前に、NHKの報道ヘリコプターとその役割についてご紹介します。
NHKは15機のヘリコプターで全国をカバーしています。
機種にもよりますが、最高時速は200km以上、飛行できる時間は2時間から3時間です。
40倍以上の高倍率レンズが付いた防振カメラを積み、カメラマンが機内で操作しています。
600mの高度から撮影すると、乗用車がアップになるくらいの倍率です。
撮影した映像は電波に変換しアンテナを経由してリアルタイムで地上に送ります。
送られてくる映像をそのまま放送に乗せれば「生中継」ということになります。
取材の際はカメラマン、機長、整備士の3人が乗り込み現場に向かいます。
現場が近くなったら、送られてくる映像を地上のデスクが確認し、無線でカメラマンに情報や指示を伝える、という仕組みです。
ヘリコプターは災害取材の「要」
ヘリコプターが特に力を発揮するのが、災害時の取材です。
人が近づけない場所でも上空から撮影して映像を届け、災害現場がいまどうなっているのか、どんな支援が必要な状況なのかといった、「命を守るための情報」を届けます。
高知県は南海トラフ巨大地震による被害が想定されています。
もし津波が押し寄せてきたら、発生当初は地上から現場に近づくことはできません。
そのため広島基地からヘリコプターを呼び寄せ空から取材をする想定となっています。
しかし、高知空港は浸水域にあるため使用できなくなる可能性が高く、そうなると離着陸や給油はできません。
災害時への備え 離着陸・給油訓練
そこでNHKでは、香南市と大月町の高台に専用の場外離着陸場を整備し、燃料も備蓄して災害に備えています。
その場外離着陸場が問題なく使用できるか確認するため、定期的に訓練を行っています。
離着陸場に異常がないか事前に確認した上で、ヘリコプターが実際に着陸します。
災害時は給油車の手配も難しいため、手動のポンプを使ってドラム缶から燃料を給油する訓練も行いました。
香南市に備蓄している燃料は200Lのドラム缶20本。大月町には30本です。
今回の機体なら、香南市の離着陸場では3回程度の給油が可能です。
「命を守る報道」のために
報道ヘリコプターは、直接人の命を救う救助活動はできません。
そのかわり、現地の映像を全国にいち早く伝えることで、被災者支援の手助けとなる情報を広く提供します。
さらに、上空のヘリコプターは機長同士が無線で連絡を取り合うことができます。
NHKのヘリコプターが上空で見つけた災害や要救助者の情報を、周辺を飛ぶ消防などのヘリコプターに伝え救助につなげた事例も数多くあります。
情報を伝えることで1人でも多くの命を救い、守る。
それが災害時における報道の使命だと考えています。
NHKは、さまざまな制約がある中でも情報を発信し続けるための取り組みを続けていきます。