Aさん(37歳・女性)は、皮膚のことで悩んでいました。
きっかけは20歳頃にできた左肩のニキビ。気がつくと、肩のニキビあと(ニキビによってできた傷あと)が、赤く盛り上がり、大きな2つの丸い形に変わっていたのです。
「いつの間にか、ホタテが開いたような丸い形2つになっていました。我慢できないかゆみや、ズキズキする痛みもあり、痛み止めの薬をのむときも。ただ、いつもというわけではないので、まあいいかなと思って、そのままにしていました」
ただ、夏になると困ったことが。
「肩にできているので目立ち、ノースリーブの服が着られないのがとても残念でした」
肩が出る服を着たいときには、ばんそうこうで傷あとを隠していたそうです。
治療をせず10年以上が経ったころ。知人が「その傷あとは治るかもしれない」と教えてくれました。そこで専門の病院を受診すると、「ケロイド」と診断されたのです。
ケロイドとは?
ケロイドとは、皮膚が赤く盛り上がり、痛み・かゆさを伴うこともある病気で、自然に治ることが少ないと言われています。皮膚は「表皮」「真皮」「皮下組織」で構成されています。ここに、にきび・けが・やけど・手術などで傷ができると「炎症」が起きます。すると、傷をふさごうと「コラーゲン」などが作られます。ただ、皮膚の中で、炎症が何らかの理由で長引いてしまうと、コラーゲンなどが過剰に作られ、傷あとの範囲を超えて、盛り上がってしまうことがあるのです。こうしてケロイドができます。
「ステロイド」でケロイドを治療する
Aさんは「ステロイド」による治療を受けることになりました。
ステロイドには炎症を抑える効果があるため、ケロイドの治療の基本となっています。
治療は「ステロイドのテープ」から始めました。テープを貼ることで炎症が抑えられ、コラーゲンが減り、ケロイドの硬い部分がやわらかくなりました。テープは、周りの皮膚に影響が出ないようにケロイドの形に合わせて貼りました。Aさんは1か月の間、毎日、貼り替えました。そして、ケロイドが少しやわらかくなったところで、ケロイドの深い部分に向けて「ステロイドの注射」を打ちました。2か月に1度のペースで、合計3回。さらに「ステロイドのぬり薬」も併用しました。Aさんはこうした治療を2年続けました。
上の画像の左は治療前。右は治療から2年後です。盛り上がっていたケロイドは平らになり、赤みもおさまってきました。今後も治療を続けることで、傷あとはさらに目立たなくなるといいます。
「前よりとてもきれいになったので、もっと早くやっておけば良かったと思いました。おしゃれも楽しめるようになったので、すごくうれしいです」
ケロイドは、健康保険で治療できます。Aさんの場合は、10年以上たってから治療を始めたこともあり、治療に時間がかかっていますが、ケロイドなどの傷あとの多くは、早く治療をはじめるほど、早く治せるようになってきています。気になる傷あとがある場合は、形成外科などに相談してみてください。