AIホスピタル 高度な医療と心あたたまる医療現場を実現する試みとは?

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AIホスピタルとは

AIホスピタルとは

AIホスピタルとはAI(人工知能)を活用して、医療の最適化や医療従事者の負担軽減などを目指したプロジェクトです。
「AIホスピタル」と聞いて、多くの人はAIやロボットに診療される寒々とした場面を想像されるかもしれません。しかし「AIホスピタル」が目指す医療現場はこれとは全く異なるものです。AIやデジタル技術を用いて高度な医療を提供しつつ、医師や看護師などの医療従事者が、患者さんと目を見て話す時間を増やす温かい医療を目標としています。ポイントとなるのは「負担を減らす」「いつでもどこでも正しい診断」「AIが可能にする新しい治療」です。

負担を減らす取り組み

自動運転車いす

慶應義塾大学病院などで運行されている自動運転車いす。簡単な操作で看護師などの付き添いなしに自動で目的地まで移動することができます。衝突回避機能があり、障害物や人などを感知してよけて安全に走行します。さらに位置や運行状態もリアルタイムに把握することが可能です。歩行に不安のある患者さんや足腰に障害がある患者さんなどが、自身で目的地まで快適に移動することが可能になりました。病院内を迷わずに検査・診察・調剤など目的の場所まで移動できるようなったことは、患者さんの負担を減らすことにつながります。

AI問診票

問診票からカルテへの入力にかかる時間は、平均30分と言われています。一方、AI問診票では患者さんが直接タブレットに入力することで手間を省き、患者さんが待合室にいる時間を削減することができます。
また、問診結果をAIが分析し、症状に当てはまる疾患を絞り込んで補助し、より正確な診断につながると期待されています。さらに処方ミス副作用リスクを避けることも可能です。

AIによる自動音声入力

AIによる自動音声入力の運用が開始された国立成育医療研究センターのドクターカー。救命処置などで医師の両手が塞がった状況下で、AIが医師の音声を解析、血圧や体温などの患者さんの状況および医師の処置を整理して自動的にカルテに記録します。こうした情報は、搬送先の病院と共有できるので受け入れ準備も可能になります。一刻を争う状態の患者さんでは救命率アップにつながると期待されています。

いつでもどこでも正確な診断

がんの病理診断の様子
がん細胞のデータ

がん研有明病院には全国の病院からがんの病理診断の依頼が寄せられています。がんかどうかの確認はもちろん、がんの種類や広がりを調べてもらうためです。顕微鏡で細胞を見て判定をするのは熟練した技術と経験が必要で、専門医は限られています。また、時間もかかります。そこで、AIを使って、病理診断を行う研究が始まりました。これまでに20万枚のがん細胞のデータをAIに学習させています。

AI診断のメリット

病理診断だけでなくCTやMRIなどの画像検査の量も増えていますが、それらを読み解き、診断する病理医や放射線診断医は少ない状況です。そこで、画像をすべて人間が見るのではなく、AIに読み込ませることによって、がんや病気などの疑いのあるものを見つけ出せるように学習させ、それを診断に生かす試みが始まっています。質の高いデータを使ってAIを教育していけば、精度はどんどん上がっていくと期待されています。AIは人間と異なり休みなく働くことができますし、疲労を感じません。
また、人間は特定の部分に目が向きがちですが、AIは全域に注意を払うことができます。こうしたAI診断で最も期待されているのが「遠隔診断」です。病理データや画像をデジタル化しさえすれば、AIで病理診断や画像診断の補助ができます。過疎地や離島などの遠隔地でも正確な診断が可能になり、地域による医療水準の偏りをなくすことができると考えられています。

AIが可能にする新しい治療

AI搭載の義手を使っている様子
AI搭載の義手の特徴

左手の指に障害を持つゆめさん。ゆめさんは最近、AI搭載の義手を使い始めました。筋肉で発生する電気信号の量や周波数をAIがとらえて学習。つけた人が意図したように義手を動かします。ゆめさんは洗濯物を干したり、人形に服を着せたりできるようになりました。技術の進歩によって、手足に課題を持っている人が身体機能や自立を取り戻すことができるようになると期待されています。

この記事は以下の番組から作成しています

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    ニュース「AIホスピタル」