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第1254回
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平成28年2月26日(金)公表

日本放送協会第1254回経営委員会議事録
(平成28年2月9日開催分)

第1254回 経 営 委 員 会 議 事 録

<会 議 の 名 称>

第1254回経営委員会

 

<会 議 日 時>

平成28年2月9日(火)午後1時30分から午後4時20分まで

 

<出 席 者>

〔委  員〕

  浜 田 健一郎 本 田 勝 彦 井 伊 雅 子
    石 原  進   上 田 良 一 佐 藤 友美子
    中 島 尚 正   長谷川 三千子 美 馬 のゆり
    宮 田 亮 平   室 伏 きみ子 森 下 俊 三
  ◎は委員長 ○委員長職務代行者(以下、「代行」という。)

 

〔役  員〕

  籾 井 会 長 堂 元 副会長 塚 田 専務理事
  吉 国 専務理事 板 野 専務理事 福 井 専務理事
  森 永 理 事 井 上 理 事 浜 田 技師長
  今 井 理 事 坂 本 理 事 安 齋 理 事

 

 

<場   所>
放送センター  22階経営委員会室  21階役員会議室

 

<議   題>

 

付議事項

 

○ 「視聴者のみなさまと語る会(松山)」の開催について

 

○ 情報公開請求への対応について

 

○ 会長報告(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 

1 議決事項

 (1) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 

2 報告事項

 (1) 「平成28年度収支予算・事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見について(資料)

 

○ その他事項

 (1) テレビ放送の同時配信の試験的提供(試験的放送B)報告

 

 

議事経過

 

 浜田委員長が開会を宣言し、経営委員会を開催。

 

 

○ 「視聴者のみなさまと語る会(松山)」の開催について

 平成28年度の「視聴者のみなさまと語る会」の第1回目は、平成28年4月9日(土)に松山放送局で開催することを決定した。

 

○ 情報公開請求への対応について

 視聴者より求めのあった経営委員会に関する情報開示請求について、NHK情報公開・個人情報保護審議委員会の意見に沿って対応することを決定した。

 

<会長、副会長、専務理事、技師長、理事入室>

 

 本日の付議事項および日程について説明。第1253回(平成28年1月26日開催)の議事録を承認し、所要の手続きを経て、平成28年2月12日に公表することを決定した。

 

○ 会長報告(資料1)(資料2)(資料3)(資料4)

 (浜田委員長)
 会長報告は、まず役員人事について報告をお願いします。
 (籾井会長)
 まもなく任期を迎える2人の専務理事についてお伝えいたします。塚田 祐之専務理事、吉国 浩二専務理事の二人は2月17日に任期を迎え退任されます。
 2人の退任後、理事は当面8名となりますが、定款第35条では「協会に役員として理事7人以上10人以内」と規定していますので定足数を満たすことになり規程に抵触することはございません。
 担務につきましては、お二人が担当しておられますターゲット80プロジェクトの統括補佐重点地域については、プロジェクト統括の堂元副会長、統括補佐の福井専務が引き継ぎます。塚田、吉国両理事がきめ細かな営業活動や、都市対策など率先して取り組んでくれた結果、支払率80%に向けこの1年間順調な出だしとすることができました。よろしくお願い申し上げます。

 (美馬委員)

 今回の人事で、ターゲット80の担当を兼務とするというご報告をいま受けましたが、塚田専務と吉国専務がターゲット80のご担当になった時の第1235回経営委員会で、私から会長に、ターゲット80の担当区分を二つに分けて、お二人の専務の担当がターゲット80だけになるのは効率的な経営としてどうなのかとご質問させていただきました。その時に、会長が、「これはとても重要な任務である。もしかしたら一番難しく、結果が出てしまう。そこは理解していただきたい。」ということで、この業務だけにお二人を割きました。それほど重要なものだとおっしゃっていたものに対し、今回はそこを誰にも引き継がずに兼務としていることについて、十分だとお考えなのでしょうか。

 (籾井会長)

 お二人が、いろいろとやってきていただいたおかげで3か年計画の中での計画は順調に進んでおります。衛星放送は1年前倒しで目標達成ができていますし、支払率も予定以上に順調に推移しているということで、お二人の担務は、堂元副会長と福井専務にお願いするということです。やはり、こういうことは最初が大事ですので、非常に難しい最初のステップをきっちりと進めていただいたと思っております。

 

 (浜田委員長)
 さいたま放送局記者によるタクシー券不正使用について報告をお願いします。
 (籾井会長)
 この件については、先日1月29日に懲戒処分を発表いたしました。再発防止策を含め、福井専務から説明してもらいます。
 (福井専務理事)
 さいたま放送局記者によるタクシー券の不正使用について報告いたします。さいたま放送局の3人の記者が、平成27年11月までの1年あまりの間に業務用タクシー券を私的な理由で使っていたことが内部調査で明らかになりました。1月29日に責任審査委員会を開き、記者と上司あわせて8人の懲戒処分を決め、同日午後に記者会見を行い報道発表しました。
 私的利用の主な内容は、友人との会食で都内との往復に利用、バイクの免許を取るために教習所への移動に利用、バッティングセンターへの移動などといったものでした。
 処分内容は、私的利用がおよそ36万円にのぼった記者については、諭旨免職としました。私的利用がおよそ12万円の記者については、停職1か月、6,850円の私的利用が見つかった記者は、出勤停止5日としております。
 また、管理・監督責任のある上司についても処分をしております。まず、さいたま放送局局長、放送部長、前放送部長はいずれも出勤停止3日、タクシー券の使用を直接管理する立場にあった副部長は2人ともそれぞれ出勤停止14日としております。このうち、さいたま放送局長については、2月8日付で本部総務局主幹に異動させ、すでにさいたま放送局は新しい局長が着任しております。
 現在、再発防止策を打ち出すプロジェクトチームを総務局、報道局を中心につくり、できるものから速やかに着手しております。2月1日には、本部と地方あわせ86の部局を対象に、緊急調査を始めております。ほかにも私的利用がないかどうかを調査し、2月中をめどに結果を取りまとめたいと考えております。さらに、タクシー券の管理責任体制を明確化すると共に、使用後のチェックを徹底する通達を出し、再発防止に向けた取り組みを進めております。また、記者の職業倫理を高めるために、今回の問題点を分析した上で、2月後半以降に全国で勉強会を実施し、放送現場と管理する側の双方で意識改革を推進していきたいと考えております。
 (浜田委員長)
 タクシー券不正使用について一言、申し上げます。
 今回のタクシーチケットの不正使用は、受信料で支えられているNHKとしては、決して許されるものではなく、視聴者の皆さまの信頼を失う行為であります。経営委員会としては、遺憾であります。いま一度、役職員一同、自らを厳しく律し、組織一丸となって、信頼回復に取り組むよう求めます。

 

 (浜田委員長)
 次に、「NHKアイテック多額不正事案調査報告」 について、報告をお願いします。
 (籾井会長)
 この件は、担当の今井理事より報告してもらいます。
 (今井理事)
 執行部の緊急調査チームで調査を継続しておりました「NHKアイテック多額不正事案」について、調査がまとまりましたのでお手元の報告書に沿って報告いたします。
 資料の1ページをご覧ください。「本件事案発覚の経緯」について、去年秋の東京国税局の税務調査の過程で発覚した経緯を記載しています。事案の重大性、規模の大きさに鑑み、初動の証拠保全が重要であるとの判断から、子会社ではありますが、本体で緊急に調査チームを編成し、調査を開始したものです。
 2ページに、調査の目的、期間、体制などについて書いています。この調査の対象期間は、実体のない会社、ケイネットが設立された平成21年10月から、この会社を通じA、Bの2人の社員に最後の振り込みがあった平成27年10月までの6年間としております。その間に2人がケイネットを通じて行った金の着服、およびこれに係るアイテックの内部体制を調査対象として実施したものです。
 3ページ目に、対象会社であるアイテックの概要を記載しております。
 また、4ページ目からは、本件事案の概要を記載しております。
 ここから本文に沿ってご説明いたします。4ページをご覧ください。
 調査対象者は2名で、それぞれ、アイテック本社と千葉事業所の社員です。そのうち1名は、正社員になったのが去年4月であること、その以前からアイテックで働いていたことなどを記載しています。
 事案は大きく、東京本社での不正と千葉事業所での不正に分かれております。それぞれについて、不正の手口と典型例を示しています。
 (2)からが東京本社の不正です。まず、不正が始まった端緒を記載していますが、平成20年10月にAがアイテックの社員ではなく、まだ電気工事会社の社員としてアイテック内で作業をしていたころに、同じ職場で働いていたBから、会社をつくったらどうか、仕事を回すなどとアドバイスを受けて、ケイネットという会社を設立したこと。その際に、アイテック社内のシステムに登録申請して、審査も行われないまま支払先の一つとして登録されたことが、のちのちの不正行為の端緒となったことなどを記載しております。
 5ページには、平成22年6月ごろから、社員Bがケイネットに架空発注して、その代金をアイテックに支払わせ、Aにキックバックを要求して利益を得るようになっていったこと。この年の10月ごろから、その金額が膨らんでいったこと。その典型的な手口の例などを記載しています。
 6ページには、平成24年7月になり、Bが千葉事業所に異動してからの不正を記載しています。異動後、上司がケイネットへの発注を認めなかったために、1年近く不正が途絶えましたが、その後、別の会社を経由するという手口で、ケイネットへの架空発注やキックバックが再開されました。
 さらに、7ページには、新たな難視対策の個別訪問業務で書類を偽造して、委託費を不正に取得した手口等について記載しています。
 これらの典型例については、資料3、4、5にそれぞれの構造、手口等について図で記載しております。
 8ページをご覧ください。(4)に、平成21年10月から6年間に及ぶ不正件数と不正取得額の全体をまとめて記載しております。その間のケイネットへの発注523件を不正と認定した上で、ケイネットに流れた金の総額は2億6,105万円。このうち、実際の工事や業務に支払われた金額を除いた1億9,802万円が着服額です。調査チームとして、その内訳を、Aが1億5,963万円、Bが3,839万円と認定しました。
 この間、ケイネットという実体のない会社に振り込まれた金額や着服、キックバックされた金額などの推移を資料2に記載しております。
 資料2をご覧いただくと、月次でケイネットという会社に金の出入りが非常に激しく頻繁に繰り返されたということが記載されております。
 再び、8ページをご覧ください。一方でアイテックに工事や業務を注文した施主との関係では、アイテックが請け負った工事や業務に瑕疵があるなどの苦情が来ているという事実は確認されなかったということも記載しています。
 8ページ下のほうからは調査対象者の弁明を記載しています。
 Aは、生活困窮やアイテックの正社員ではないという立場から、自分の中で正当化していた面があったと話しています。
 また、Bは、「借金が膨らみ、どう返すかで頭がいっぱいになった。キックバックを要求するようになった」と話しています。また、東京本社、千葉事業所のいずれでも、担当業務が自分1人に任され、上司の厳しいチェックが入ることはなかったと話していることを記載しています。
 10ページからは、このような多額不正事案が可能だった原因について、事案が見逃されてきた事実関係や、内部統制のあり方について記載しています。
 12ページをお開きください。まず、事案発生を見逃した直接原因について記載しています。アイテックでは、品質管理の認証制度であるISO9001を取得して、これに準拠した規程や手順書を定め、受注から外部支払いまでを管理する業務支援システムを導入していました。
 その業務フローが資料6です。電気設備工事会社ですので、発注を受けてから下請への支払等々の工程を記載しています。この図の中で、管理職の承認が必要とされるのは、物件登録、外注・発注、仕入計上、支払依頼の4つのプロセスですが、それぞれの承認にあたっては、品質規程や各種手順書で確認が必要な証ひょうを定めております。
 ところが、本件事案523物件を確認したところ、このシステムで承認した管理職は、大半のケースで、必要とされる証ひょうの内容や存在の有無を確認しないまま承認行為をしていました。このため、2人は架空案件の場合であっても容易に外注先への発注や支払いの承認を得ていたことなどを記載しております。
 報告書の12ページに、上司が証ひょうの確認を怠った理由について、2人を信用していた、あるいは、自分も多忙だったため、証ひょうに目を通さなかった、証ひょうの確認は別の上司が行ったものと思っていたなどと話をしております。
 12ページ下のほうですが、特に外注・発注のところは、ここできちんと確認をしていれば、外注費が必要以上にかさんでいることに気づき、本件事案の発生を阻止できたか、あるいは早期に発見できた可能性がある重要なポイントです。しかし、原価管理に必要な書類である「工事計画書」、あるいは外注先からの見積書の多くが存在していませんでした。管理職は、原価管理を十分に行わず、見積書もないままに発注の承認をしていたことになります。ある管理職は、大体のところで赤字になっていないから大丈夫だと思い、発注を承認していたなどと話しております。
 14ページには、不正が長期に及んだ理由について記載をしております。
 アイテックでは、このページに記載しているように、さまざまな監査や各調査をみずから、あるいは外部の団体等から受けていましたが、長年にわたって本件事案の発見には至りませんでした。
 この点については、個別には事情が違いますが、それぞれの調査、監査に応じて、15ページ(イ)に記載しているように、監査や調査に際して証ひょうを作成するという妨害行為の例があったことが判明しています。
 NHK内部監査室による調査のときには、ケイネットについて調査されることをAが危惧し、ケイネットが購買先リストに登録されていないことを隠すために、登録に必要な調査票等を1年余りさかのぼった日付で作成し、管理職もこのことを知りながら承認していました。これについて、2人の管理職は、「調査の際に書類を整えた、本来あるべき書類であり、ないのなら用意するのは仕方がないと思った」「その段階でつくるということであれば、それはそれでよいのかなと思った」と、事実を認めております。
 また、本件事案の発覚の端緒となった国税局の調査のときにも、千葉事業所では、受命内容確認書等々の必要な書類はありませんでしたので、上司がBに証ひょうを整えるように指示し、Bがさかのぼった日付でこれらを作成していました。また、上司は、このような指示をしたメールを削除するようにBらに命じておりました。
 さらに、「ISOの内部品質監査は抜き打ちではないために、必要な証ひょうは監査直前に作成していた、昔からそういうやり方だった」等々の証言があったこともこれに記載しております。
 16ページ(3)からは、これらの不正事実の背後にある本件事案を招いた根本的な理由について記載しています。
 まず、「低いコンプライアンス意識」です。千葉事業所には900余りの印鑑がありました。これらが不正に利用されたということです。管理職はこのことを承知しておりましたが、特に疑問の声は聞かれませんでした。
 次に、「ルールの形骸化」です。2人が担当した物件以外の通常の案件で、きちんと業務等が処理をされている案件について、抽出調査を実施していますが、その中でも確認できない証ひょうが数多く見つかっています。必須の証ひょうが全てそろっていたのは、抽出調査の中では1件だけでした。どこも同じようにルールが形骸化されていたということがうかがわれるという状況です。
 17ページの「システム設計の不備」です。規程で定めた金額区分に応じた承認権限者のランクと、このシステム上での金額区分とが異なり、承認権限のない管理職もシステム上では承認行為を行える状態になっていました。
 また、購買先は、きちんとした審査を経ないままシステムに支払先として登録することができるようになっていたために、実際には、審査を経ないままで支払いが可能な状態となっていました。これが購買先リストに未登録のケイネットに支払いが行われた直接の原因となっております。
 18ページの⑤では、「実情に合わない業務プロセス」ということを重ねて記載しています。ISO9001の認証では、従業員数の少ない事業所などは対象外となっていましたが、アイテックでは認証に準拠する各種手順書を全社共通のルールとしていたため、人の少ない千葉事業所ではルールにそぐわない運用が恒常的に行われていました。千葉事業所の管理職は、「ISOの手順は機能していなかったかもしれない、業務量が多くて対応できなかった」と話しています。
 こうした上司のヒアリング内容は、それぞれの記述内容を補強する形で記載していますが、19ページ(4)「上司の責任」のところでは、まとめて「本件事案を承認した管理職の責任が大きい」ということを記載しています。
 19ページ(5)からは、アイテックの取締役のヒアリングの内容を書いています。数々の不備の状況を知っていたのかどうかを中心にヒアリングをしておりますが、これらを踏まえ、22ページ(オ)に、「責任の濃淡はあるが、取締役にはいずれも怠慢があった」という認識を記載し、また、「不正行為が継続していることを考えると、現在の取締役に限らず、この間の取締役についても責任があったと考える」旨記述して、まとめております。
 24ページの全体のまとめでは、以上を総括して記載しております。
 「本件事案の発生を防ぐことができたチェックポイントはいくつもあったが、そのいずれもが有効に機能していなかった」などとして、こうした全体状況を考えれば、税務調査で発覚するまで効果的な改善策がとられず、今回の深刻な事態を招いた責任は、この調査対象者や管理職だけではなく、従業員の先頭に立ってコンプライアンスやリスクマネジメントに取り組むべき、この間のアイテック経営陣にも負うものがあるという認識を示しております。
 報告書の最後に、「親法人であるNHKについても、放送法の規定に基づく内部統制関係議決等々により、子会社を指導監督する責任を負っている。長年にわたってこうした事態を把握できなかったのは、子会社のコンプライアンス体制に対する指導監督が十分ではなかったからである」という認識を示して記載しております。
 報告は以上ですが、この報告の内容は、この後、本日記者会見をして公表することとしています。

 (美馬委員)

 この報告書には、何が起こったのか、なぜ起こったのか、どこに問題があるのかについては、ずいぶん記されていたと思いますが、今後どうするのか、については25ページの最後のパラグラフだけなのでしょうか。ここの「子会社のコンプライアンス体制に対する指導監督が以前から不十分であったからだと言わざるを得ない。このことを厳粛に受け止め、指導監督体制の強化を早急に図るともに」に続けて、「いつまでに何をする」ということを最後に述べるものではないのでしょうか。そこまではできなかったということでしょうか。

 (籾井会長)

 ただ今の報告の見解については、そのとおりですが、NHKには、子会社を指導・監督する責任がありますので、今回の件でNHK側の責任がどうであったか、については、現在、外部有識者の方に調査をお願いしています。これを踏まえて、改めて経営委員会に報告したいと思います。また、今後の全般的なことについては、われわれとしては大きな対応策は決めて、できることからやっている。やれることはすでに着手し、実行しています。例えば、帳票のチェックを丁寧にやるだけの話ではありますが、ひとつひとつチェックすることは大変な数になります。さらにアイテックの場合は本社でもチェックを行ったうえでないと、支払いを行えないようにしました。また、各関連企業に社外の第三者的な方に監査役に就いていただく。これについては、人選し、すでに何名かの候補者が出てきて選考している最中ですので、早急に実行できると思います。やらなければならないことは、本当に膨大な数になりますが、ひとつひとつやっていきたいと思っております。

 (佐藤委員)

 今のご説明で、これからやろうとしていらっしゃることが少し分かりましたが、この報告書自体に、NHK本体とアイテックの関係の分析が全くないように思います。

 (籾井会長)

 それについては、NHKの関連企業との関係について規程がございますのでご紹介します。

 (今井理事)

 今回の調査については、ただいまご説明したように、証拠保全などの観点から、本体の緊急調査チームで総合リスク管理室を中心に調査に入りました。アイテック事案の解明ということに主眼をおいていますので、いったん調査報告で原因関係、事実関係その他をきちんと確定させた上で、今ご指摘のように、内部統制関係議決等々に基づく、本体の指導・監督上の責任はありますので、その点については、外部の有識者の方々にもお願いし、すでに調査を開始しております。速やかに事実関係を踏まえて、次回の経営委員会までに、ご報告させていただければと考えております。

 (室伏委員)

 前々回の第1252回経営委員会の時にも申し上げましたが、こういったことが起こってNHK本体としてはどうしたらよいかということを視聴者の方々、国民の方々の理解を得るような形で触れておく必要があると思います。報告書の全体を拝見して、現在50人の体制でさまざまな調査をなさったということで、かなり詳しく現状と原因についてはお調べになっていると思いますが、先ほどからいろいろとご意見が出ているように、今後のことについての記述が非常に少ないです。有識者会議の意見を待って、というお話でしたが、こうした不祥事が起こったときに、NHK本体の信頼を失わないためには、今後に向けてこれだけのことをしようとしているという姿勢を示すことが必要だと思います。これが本日の記者会見で外に出ていったときに、国民の皆さまが納得するかというと、たぶんしないと思います。ですから、NHK本体の責任として、国民の信頼を損なわないような形での説明責任はあると思っています。何となく全体的に他人事のような感じがしますので、その辺はもう少し配慮が必要ではないかと思っています。

 (籾井会長)

 今のご意見はごもっともなのですが、これは調査報告書という位置づけなので、NHK本体としてのメッセージは入っていません。ただ、先ほども少し触れましたが、今後われわれがどうするかということについては、公式の場で報告も出しております。それについて井上理事よりご説明します。

 (井上理事)

 今のご指摘は、実はわれわれも非常に認識しております。今井理事から説明がありましたように、かなり詳しい調査をしてきた結果を、経営委員会でまずはご報告をしました。当然、NHK本体の責任の明確化という大きな課題がないと納得していただけないのは、非常によくわかります。きょうの記者会見で、本報告を受けて私から、「NHK関連団体に対する指導・監督の強化と抜本的改革」について報告する予定にしております。その中で、アイテックの再発防止策や、NHKグループ全体の今回の事案を受けた経営改革の方針について丁寧に説明しようと思っています。
 その内容を今ご報告します。「NHKアイテックについて親法人であるNHKは、放送法の規定に基づく内部統制関係議決及び関連団体運営基準によって、子会社を指導・監督する責任を負っております。今回の事案を長年にわたって把握できなかったのは、指導・監督がこれまで不十分だったことが原因であるとNHKとしても認識しております。本日のこの調査報告を踏まえてNHK本体の責任については、直ちに調査し速やかに明らかにいたします」先ほど、今井理事からお伝えしましたが、次の経営委員会までには明らかにしたいと考えております。「NHKは、以下のとおり関連団体に対する指導・監督の強化に取り組むと同時に、NHKグループ一丸となって、全ての団体のガバナンス強化と内部統制の徹底に不退転の決意で取り組んでまいります。NHKアイテックの再発防止策と抜本改革については、再発防止に向けて緊急対策を直ちに実施するとともに、これまでの調査結果を踏まえて以下の改革を、可及的速やかに行う」としております。まず1つ、「不正を防止するために、支社の支払い処理を本社も審査し、本社が認めない限り支払いできないルールとする」これは既に去年12月から実施しております。「出金管理、お金の支払いにあたっては、責任に応じた手続きや証ひょう類のチェックのさらなる徹底に取り組みます。常勤監査役への外部人材の起用、アイテックの業務については、真に必要な業務の継続確保の可能性を図りつつ、業務をゼロベースで精査し、廃止・統合等も視野に、アイテックの会社組織のあり方についても検討する」という内容です。
 NHKグループ経営改革の全体の方針として、抜本的に見直す検討推進体制を1月に立ち上げました。以下の施策を断行いたします。「なれ合いを排除したグループ各社の規律ある経営の確立、この中では監査役は原則として常勤化し外部人材を投入する。外部人材の経営陣への積極登用、NHK若手幹部のキャリアパスとしての役員任用等による取締役会の活性化、機能強化を図る」それから「グループ会社に必須の機能の再精査、NHKの各機能に照らしてグループ会社の各業務を精査し、統合・廃止も視野に再整理する。自主事業についても同様に対応する」「コンプライアンス、不正防止策の徹底」として「出金管理等について、基本に立ち戻り責任に応じた手続・チェックを徹底し、実施状況については定期的な報告を求める。なれ合いをなくすために人事の固定化を排除する。グループ各社の企業風土改革の取り組みを断行する。こうした改革施策を可及的速やかに策定し、順次実行してまいります。関連団体を所掌するNHKの管理組織のあり方等も見直しを図っていきます。NHKがグループ一丸となって視聴者・国民の一日も早い信頼回復に努めてまいります」という方針を、きょうこの報告書に続けて表明しようと考えております。

 (室伏委員)

 それはとても重要なことだと思います。今お話を伺っていて一点足りないと思ったのが、「倫理観の醸成」ということです。制度などをいろいろとお考えになったことは、とてもよいことだと思いますが、不祥事が起こるのは、調査報告にあったように「倫理観が低い」ということがあるわけです。個人個人が倫理観を持って仕事にあたるとことが重要ですので、何らかの講習、研修などについても検討していただきたいと思います。

 (長谷川委員)

 今の3人の委員の方々のお話に続いての補足のような話になりますが、この報告書は、われわれが聞きたいと思っていた情報が詳細に調査されていて、報告書としては非常によくお調べになったなという印象です。ただし、これをきょう記者の方々に配る場合には、報告書であると同時に広報としての意味があると思うのです。その広報としての観点から考えるときに、先ほどからほかの委員がご発言なさったような点が、この文章では十分に表現されていないという気がいたします。問題は25ページだと思います。ここからは、不祥事に対するNHKおよびNHK会長の毅然とした姿勢というものがどうも伝わってこない。それが非常に問題だと思うのです。例えば、25ページの最後の段落を読みますと、ほかの委員の方がおっしゃったとおり、他人事という印象を受けてしまいます。それが一番強いのは、この3行目からの「子会社のコンプライアンス体制に対する指導・監督が以前から不十分であったからだと言わざるを得ない」の部分です。もちろん、これは自分の責任ではない、自分の以前の役員たちの責任だ、などと言うおつもりが絶対ないことは確信していますが、下手をすればそう受け取られる可能性がある。今後の取り組みの具体策を示すと同時に、これが本当に自分たち自身の問題なのだという決意が伝わる文章で表現していただきたいと思います。

 (籾井会長)

 おっしゃっていただいたように私は、他人事とは思っていませんでしたが、どうもそのように聞こえるらしく、それは反省しなくてはいけないポイントです。文章で熱さが伝わるかどうかはわかりませんが、それをつけ加えましょう。アイテックはじめNHKグループの経営改革につきまして、会長である私の責任として身を賭す覚悟で取り組んでまいります。一連の不祥事につきましても、不正を許さないという意識改革を組織の隅々まで徹底させるため、私が率先して風通しをよくし、全役員が一丸となって全力を尽くす所存です。

 (上田委員)

 既に委員の方からご質問やアドバイスが出て、執行部からもお答えいただいていますが、昨日、監査委員会を開催して、監査委員会の席上でも同様の報告を受けております。その報告を受けて監査委員会で協議した結果を踏まえ、2点申し上げさせていただきます。
 まず1点目です。アイテックは、協会の指導のもとにより踏み込んで原因を究明し、業務遂行体制の見直しも含めた具体的な再発防止策を策定し実行することが、不可欠だと考えます。この再発防止策の策定、その前提となる原因究明にあたっては、協会が指導・監督を適切に行う必要があると考えます。
 加えまして、協会は、放送法、それに基づく内部統制関係議決によって、グループ全体の業務の適正を確保する責務を負っています。報告書に言及はありませんが、協会は、早急に、協会によるアイテックに対するこれまでの指導・監督について検証を行い、その責任を明確にすべきと考えます。

 この2点、すなわち再発防止策と協会の指導・監督の責任について、次回の経営委員会までに速やかに報告すべきだと考えます。いろいろやりとりがありましたが、監査委員会として正式に意見を述べさせていただきました。

 (森下委員)

 私の意見を若干加えさせていただきます。再発防止策を検討していただいていると思いますが、結局アイテック社員に、何のためのISO9001なのかということが、全く理解されてないためにこのようなことになっているわけです。先ほどほかの委員からもありましたように、社員に対してきちんとした教育がされてない。管理者も、部下を信用するということと仕事をきちんとやるということの区別がついていない。部下を信用しているからといって、確かめもせずに判を押すということは管理でも何でもないわけです。そういった管理職としての教育をきちんと定期的にしないといけない。ここに指摘されているとおりですので、再発防止の中で基本的なことである教育ということを定期的にきちんと行い動機づけをしないと、いくらルールを決めても倫理観が持てないと思うのです。

 もう一点、「親会社の協会の指導・監督」のほうです。今回もいろいろと事前に指摘は見つけていたということですが、これを見ると、少しきつい言い方すると「悪いことを見つけたけれど、やるのはあなたたち。自分の責任の範ちゅうのことだけはやっているけれど、それ以上のことはやらない」と言っているように聞こえます。本当にこれでよいのか。指導・監督の責任というのは、指摘したらそれがきちんと行われているかどうかをフォローする。そこまでしないと責任をとれないと思うのです。だから、きちんとしたルールを今後徹底させることが必要だと思いますし、定期的にチェックしないといけない。この点はほかのグループ会社もある意味では同じようなことだと思います。こういう事例があるかどうかは別として、協会とグループ会社の関係は、きちんと業務指導をすると同時にそれをフォローしていくことです。そのためには責任部局はしっかりしないといけないので、関連事業部門が13会社すべてを見るということがよいのか。これから業務をかなりルーティン化してきますので、責任部局が、その業務の効率的な運用も含めて見れるようにしていかないと、どうしても形骸化してしまうと思います。ぜひそういう面も含めて検討していただきたいということをお願いしておきます。

 (浜田委員長)
 この問題に対するNHK執行部の対応について、経営委員会として申し上げます。各委員からご発言があったわけですが、経営委員会といたしましては、ただいま説明があったNHK本体の役員の責任について、および再発防止策の策定と実行について、次回2月23日の経営委員会においてご報告いただくようお願いします。

 

 

1 議決事項

 (1) 国際放送番組審議会委員の委嘱について(資料1)(資料2)

 (坂本理事)
 国際放送番組審議会委員につきまして次のとおり委嘱を行いたいと思います。
 3月1日付のお二人、4月1日付のお一人、合わせて3人の新規委嘱となります。1人は、特定非営利活動法人JENの理事・事務局長 木山 啓子さんです。旧ユーゴスラビアをはじめとして、これまで一貫して難民に対する緊急援助活動に従事されてきた方です。
 もう一人は、国際政治学者で、東京大学東洋文化研究所教授の田中 明彦さんです。アジアの政治・経済全般にわたる幅広い研究で知られています。2012年から3年半にわたり国際協力機構(JICA)の理事長でいらっしゃいました。
 三人目の方は、4月1日付での新規委嘱です。東京大学大学院医学系研究科教授の神馬 征峰さんです。紛争地帯や発展途上国を中心に医療支援や衛生思想の普及に精力的に取り組んでいらっしゃいます。
 また、再委嘱の方がお二人いらっしゃいます。
 1人は伊藤忠商事株式会社 取締役会長の小林 栄三さん、もう一人は前駐米大使の藤崎 一郎さんです。
 なお、これまで審議会委員を務めてこられましたセーラ・マリ・カミングスさん、瀬谷 ルミ子さん、渡辺 靖さんは任期満了により2月29日付で退任されます。その結果、国際番組審議会委員12人の顔ぶれは別紙の委員名簿のとおりです。別紙には、分野別、年代別、性別等の委員構成をまとめております。
 採決の結果、原案どおり議決。

 

 

2 報告事項

 (1) 「平成28年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見について(資料)

 (井上理事)
 「平成28年度収支予算、事業計画及び資金計画」に付する総務大臣の意見についてご報告します。
 平成28年度のNHK収支予算、事業計画及び資金計画に付する総務大臣の意見が、2月5日の電波監理審議会への諮問・答申を経て取りまとめられ、収支予算等は、この意見を付して、国会に提出されることが、本日の閣議で決定されました。
 資料「別紙」をご覧ください。こちらが、28年度収支予算等に付された総務大臣意見です。
 冒頭は総論部分です。上から3段落目で、収支予算等について、「国民・視聴者の信頼と多様な要望に応える質の高い番組の提供、国際放送の充実等による海外情報発信の強化、我が国の経済成長の牽引力として期待される4K・8K等の先導的なサービスの推進、インターネットを活用した新たなサービスの創造、大規模災害等に備えた公共放送の機能の強靭化及び受信料負担の公平性の確保に向けて取り組むこととしており、おおむね妥当なものと認められる。」としています。
 そのうえで、次の段落以降で、「平成27年度において、事実に基づかず、自らの番組基準に抵触した放送が行われたことが明らかになったこと及び協会の子会社における不祥事が相次いで発覚したことは、国民・視聴者の協会に対する信頼を大きく損なうものであり、国民・視聴者の負担する受信料に支えられている公共放送としての社会的責任に鑑み、憂慮すべきこと」で、特に子会社の不祥事については、「ガバナンスを含め、子会社の在り方そのものをゼロベースで見直すことが急務である。」としています。そして、「平成28年度収支予算等の実施に当たって、協会がこの事態を厳粛に受け止め、子会社を含むグループ全体としての協会の改革に組織を挙げて迅速に取り組むことが強く求められる。」としています。
 以下、各論として特に配意すべき点として8項目挙げられています。
 「1 国内放送番組の充実」では、正確・迅速な報道の確保や多様な要望に応える質の高い番組の提供、意見が対立している問題について、多角的な報道を行うこと、平成26年5月14日の「クローズアップ現代」の放送に関して、再発防止に向けた取組等による国民・視聴者からの信頼回復、地方の魅力の紹介や地域経済の活性化に寄与するコンテンツの一層の充実及び国内外に向けた積極的発信に努めること、字幕・解説放送の充実を挙げています。
 「2 国際放送の充実等による総合的な海外情報発信の強化」では、我が国に対する正しい認識・理解・関心を培い、普及させるとともに、国際交流・親善の増進や経済交流の発展、地方の創生の推進等に資するよう国際放送のより一層の充実・強化を図ること、特に、「NHKワールドTV」については、引き続き、効果的な実施体制の確立、多言語化の取組も含めたインターネットの適切な活用、国内外の受信環境の一層の整備等の取組を、効果的かつ積極的に推進することや、認知度等について具体的指標を設定の上、PDCAサイクルを強化するよう努めること、などを指摘しています。また、海外への情報発信に関して、昨年11月に設立された株式会社海外通信・放送・郵便事業支援機構(JICT)の活用も含めた放送コンテンツの戦略的かつ積極的な海外展開等を通じ、強化に努めること、となっています。
 「3 4K・8K放送及びインターネット活用業務の積極的推進」では、4K・8K放送について、平成28年(2016年)に実施予定のBSによる試験放送において他の放送事業者による再放送やパブリックビューイング等を含めた視聴機会の拡大などの取り組みを進めること、また、平成30年に実施予定のBSによる実用放送の開始に向けて、視聴可能受信機やサービス内容に関する情報提供を適切に行うなど、その普及促進に先導的役割を果たすこと、インターネット活用業務について、国民・視聴者のニーズや視聴環境の変化に対応するよう取り組むとともに、成果の関係者間での共有や相互連携に努めること、情報セキュリティ、コスト、視聴者ニーズ、新サービスの可能性などを十分検討すること、4K・8K放送及びインターネット活用業務の実施に当たっては、視聴者利益を拡大する観点から総合的に取り組むこと、となっています。
 「4 子会社改革の推進」は、昨年はなく、新たに追加された項目です。子会社の在り方そのものをゼロベースで見直す改革を早急に実施すること、としたうえで、子会社の業務範囲の適正化、子会社における適正な経営及びコンプライアンスの確保、協会と子会社との取引における透明性・適正性の確保、子会社の利益剰余金の協会への適正な還元に十分留意すること、としています。
 「5 経営改革の推進」では、子会社を含むグループ全体におけるガバナンスの強化とコンプライアンスの徹底に向け、経営委員会及び監査委員会が更にその機能を発揮することができるよう、必要な情報提供を適時適切に行うこと、としており、業務の合理化・効率化に努めること、女性職員の役員・管理職への登用拡大など、女性の活躍に向けた取組の加速、などを挙げています。
 「6 受信料の公平負担に向けた取組」では、平成29年度末の支払率80%を達成できるよう、未契約者及び未払者対策を着実に実施すること、受信料の公平負担の確保に必要な施策等について検討すること、としています。
 「7 新放送センター整備」では、建設基本計画がまとまった場合には、国民・視聴者の理解が得られるよう、説明を尽くすこと、機能の地方分散についても積極的に検討すること、としています。
 「8 東日本大震災からの復興への貢献と公共放送の機能の強靭化」では、ニュースや番組の充実等を通じて被災地の復興への取組を支援すること、福島原発事故に関連して必要な受信環境整備等について適切に取り組むこと、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害に備えた公共放送の機能の強靭化を図ること、としています。
 以上が、協会の28年度収支予算等に付する総務大臣意見の内容です。

 

 

○ その他事項

 (1) テレビ放送の同時配信の試験的提供(試験的放送B)報告

 (井上理事)
 2015年10月から11月にかけて実施したテレビ放送の同時配信実験「試験的提供B」の結果を報告します。
 まず、試験の概要です。今回は10月19日から11月15日までの4週間、東京で放送している総合テレビを同時配信しました。時間は、毎日朝7時から夜11時までの16時間。権利の関係で配信できない番組やニュース項目は“フタかぶせ”ということで配信しませんでした。
 参加者はおよそ1万人で、全員受信料を払ってくださっている方たちです。この分析のため、2つの調査を行いました。
 1つは、「NHKネットクラブ」の会員から募集した8,941人です。「NHKネットクラブ」の会員は、いわばNHKの熱心なファンです。
 もう1つは、調査会社が一般に行っているネット調査のモニターの957人、今回の調査では「一般視聴者」と呼んでいます。受信料を払っていただいている方であり、NHKには一定の理解はありますが、同時配信に特段の関心があるわけでもない方も含んでおり、ごく一般的な視聴層と言えると思います。
 こうした2つの調査を行うことで、ふだんの生活習慣の中でどのように使われているかということと、世の中全体におけるニーズの大きさについてバランスの取れた分析ができると考えました。
 最初に、視聴ニーズについてご説明します。
 4週間の期間中に一度でも同時配信を利用した人の割合は、「一般視聴者」では8.9%、「ネットクラブ実験参加者」では66.4%となりました。
 同時配信サービスへの満足度は、利用した人の半数が「満足した」と答え、9割前後は「今後も利用したい」と答えています。
 具体的な利用シーンでは、朝の通勤時間といった移動時間や外出先での視聴はモバイル端末の利用が目立ちました。
 一方でパソコンでの利用は、1日を通し、モバイルほどの時間的な変動はありませんでした。
 利用した感想を尋ねたところ、「NHK総合以外の番組の視聴」や「見ることができない番組をなくす」に加え、「すでに放送された番組を見られる」見逃しサービスが一定度あがりました。
 次に、権利処理です。権利処理が完了して配信できたのが4週間全体で計345時間57分ほどで、実験対象とした時間全体の78%にあたります。残る22%は“フタかぶせ”となりました。“フタかぶせ”の作業について言いますと、通常番組はシステムを作って自動化しました。一方、日々のニュースは、その場その場で中身が変わるので、特別体制を敷いて手動で対応しております。本格運用の際には体制の整備が課題になってまいります。
 続いて、配信システムについてです。今回の実験では、トラブルなく運用することができました。
 「サービス品質の評価」ということで、モバイル端末の動作状況を調べました。その結果、主な機種の97%で正常に動作することを確認しました。
 また、「遅延」については、放送と比較して25秒程度の時間差がありましたが、これは一般的なライブ動画配信と比べても大きな差はないと考えております。
 今回の実験では、NHKネットクラブが使用している認証基盤を活用して、受信契約や視聴資格を確認するシステムを構築しました。そして、こうした機能が問題なく動作したのを確認しました。
 最後に、経費についてですが、今回の実験に要した経費は総額1億6千万円になりました。
 今回浮き彫りになった課題について、検討を進めたうえで、今年の秋ごろまでに、もう一度試験的提供Bの実験を行うことにしています。

 (石原委員)

 まずはフタかぶせをしないようにしないといけないのではないですか。

 (井上理事)

 今回の実験の結果で、非常に重要だと思うのはそのことです。現状では全部で8割弱しか出せないということがわかりました。権利処理の問題は、NHKに限らず放送事業者全体の問題でもありますので、その課題にまず取り組んでいくべきだと思います。もし、フタかぶせの割合が今後も続くようであれば、あわせて説明のしかたも工夫しなくてはならないと考えております。

 (安齋理事)

 フタかぶせの場合、非常に長い時間フタかぶせしていたのは、例えば1時間の番組の内で5分だけ使えないところがあった場合、今回は人手がなかったため、1時間全部フタかぶせをしてしまったわけです。そこにある程度対応ができれば、たった数分のために全部をフタかぶせする必要はないので、今後は対応できると考えております。

 (森永理事)

 現在、内閣府の知的財産本部でもさまざまなご議論が行われていますので、放送の同時再送信をめぐる著作権のあり方などについても検討されることがあるのではないかと考えています。

 (石原委員)

 法改正が必要だということですか。

 (森永理事)

 一部必要ではないかと考えています。

 (石原委員)

 ぜひ、それをやっていただきたいです。

 (美馬委員)

 今後また詳しいお話を別途お伺いしたいと思いますが、ここでは簡単に3点伺います。パソコン利用が半数近くということですが、このパソコン利用はどういう状況での利用であったのかということが1点目。2点目は、きょうご報告のあった中で、どういう番組あるいは時間帯に利用が多かったのか。そこから何か言えることはあるのか。3点目が、仮説どおりの結果になったというのはいくつかありますが、仮説と違ったところ、あるいは失敗、うまくいかなかったところ、予想と違ったところがあれば教えてください。

 (メディア企画室)

 まず、パソコン利用がどんなシーンかということですが、自宅での同時配信視聴が多かったようです。職場でお使いになっていたケースもあるかもしれません。最近モバイルでパソコンを電車の中等でお使いの方もあるので、そういったケースのシーンがあったのかもしれませんが、おおむね今申し上げたことかと思います。

 (美馬委員)

 その理由は、テレビがないから職場でパソコンで見るということなのでしょうか。

 (メディア企画室)

 テレビがあっても目の前にパソコンがある方はそちらのほうが便利ということがあるかもしれません。それから、2点目の利用時間帯は、やはり多いのは朝7時台、8時台にモバイル端末での利用が多かったようです。朝の通勤時間帯の移動中に視聴されたのではないかと考えています。3点目につきましては、また必要に応じてご説明させていただきます。

 (美馬委員)

 ありがとうございました。

 (森下委員)

 フタかぶせについてです。1つは、フタかぶせの際に出す画面が、あまりにも機械的な感じがします。どうしてもフタかぶせをしなければならないのであれば、もう少し見やすい形に工夫していただきたい。それから、フタかぶせをしたものの中には、配信について説明できていないものがあったのでしょうか。

 (メディア企画室長)

 総合テレビで、衛星放送の番組などをご案内をするケースが時折あります。その場合は、衛星の番組のご案内を総合テレビの番組として配信するという許諾の処理をしていないために未実施であるというような整理の部分があります。

 (森下委員)

 許諾の処理がされれば、かなり改善されるということですか。

 (メディア企画室)

 ご指摘のとおり、承諾をいただいた分は改善されると考えています。

 (井上理事)

 これは実は以前にあまり想定していなかったことであり、総合テレビで、かなり衛星放送番組の紹介をしていたということです。それが結構、実験結果に出たということです。

 (井伊委員)

 今回かかった費用が4週間で1.6億円というのは、高いように思います。このあたりはどのような議論があったのでしょうか。

 (メディア企画室長)

 今回初めて動画配信に認証機能を組み込むため作業に時間と手間がかかりました。いわばカスタムメイドでこのような仕組みをつくったために、どうしても費用がかさんでしまったということです。当初申し上げていた規模を超えてしまったということについて、おわび申し上げたいと思っています。ただ、次回の配信実験でも、こうしたシステムはしっかりと運用していきたいと思いますので、ご理解をお願いいたします。

 

 

 以上で付議事項を終了した。

 

 

 (浜田委員長)
 では、最後に2月17日をもって退任される、塚田専務理事、吉国専務理事からご挨拶をいただきたいと思います。
 (塚田専務理事)
 長い間、お世話になりました。ありがとうございました。
 私、今から41年前の昭和50年にNHKに入りました。番組ディレクターとして政治番組やニュース、「クローズアップ現代」などを中心にした報道番組を担当してまいりました。その後、広報、経営計画局長を担当して、役員として6年間仕事をさせていただきました。
 NHKでは平成16年から17年にかけまして、プロデューサーの制作費不正問題が発覚するというような不祥事が相次ぎました。そのさなかに、いきなり広報局長を担当するということになりました。NHKに対する視聴者の皆さまの批判が相次ぎ、半年余りで受信料の支払い拒否・保留が128万件に及び、支払率が60%台に落ち、400億円を超える減収が発生しました。その状況を乗り越えようと、広報局長としてできることは限られていますが、視聴者の皆さまへの説明責任を尽くすということと、何とかそれによって信頼回復につなげようということで取り組んでまいりました。当時、副会長がアナウンサーの出身だったものですから、毎月副会長がテレビに出て、視聴者の皆さまにテレビを通じて批判や声に直接答えるというような経営広報番組を新設したり、それから、それまではなかなか公表してこなかった受信料の支払率などの経営的な数字を公表するということで、経営の透明性、説明責任を尽くそうとやってきました。
 同時に全職員を挙げて、受信料の支払い拒否の方々を1軒1軒お訪ねして、おわびと支払い再開をお願いしたり、電話で支払い再開をお願いするということを全職員で、文字どおり全局体制で行いました。信頼回復活動として全員で取り組みました。その結果がプロジェクト810、今のターゲット80の活動に引き継がれております。現在の6,600億円を超える堅調な受信料収入、それから支払率77%への向上に結びついてきていると考えています。
 それにもかかわらず、きょうも報告しましたが、あれから10年余り、今また、さまざまな不祥事が続いています。役職員挙げてみんなであれだけ苦労して乗り切ってきた経験が風化してしまったのか、そんなことがあってよいはずがありません。10年たちましたが、職員の7割はあのときの経験を共有しているはずです。私としましては、視聴者の皆さまへの申しわけなさと同時に、やり切れない思いでいっぱいであります。
 今回の不祥事は、職員や関連団体の社員の問題とともに、経営の問題も顕在化していると思っています。信頼回復に向けて、福地茂雄会長は、お客様目線、視聴者第一主義を掲げて、先頭に立って全国を駆け巡って、職員のやる気を高めるとともに、記者会見の場などで積極的に視聴者の皆さまへの説明責任を果たされました。
 松本正之会長は、東日本大震災を受けて、どんなときでも放送を途絶えさせないという強い信念で放送機能の強化に取り組みました。同時に、組織や働き方の改革を進めてNHK全体で力を発揮できるように、「全体最適」ということを執行部役員全員で徹底的に議論して進めてまいりました。
 しかし、この2年間は一体何だったのでしょうか、という思いが募っております。会長の就任記者会見以来、相次いで発生する問題、課題への対応に追われ続け、どうしてもその場その場の対症療法的な対応を迫られました。その結果、経営として一致して目指す方向をなかなか打ち出すことができず、誰が責任を持って何を決めたのか、決めなかったのかがわかりにくい状況になってしまったと私は思っています。
 そして、経営委員会から求めがありました関連団体のあり方や、ネット時代の今後の受信料制度のあり方など、今後に向けて今やるべき本質的で骨太の議論がなかなか執行部挙げてできる状況ではなかったということに、役員の一人として本当に申しわけないと思うと同時に、じくじたる思いがあります。
 こうした経営の状況ですが、NHKは現場の力で何とか役割を果たしてきたと思います。しかし、そろそろ限界に近づいているのではないかと私は感じています。
 経営委員の皆さま。経営委員会として、視聴者の皆さまから受信料で支えていただいて、それで自主・自律で安全・安心、豊かで質の高い多様な放送サービスをお届けするという公共放送の原点に立って、これからのNHKのあるべき姿と体制をぜひ考えていただきたいと思います。
 これが私の退任に当たっての強い要望であります。
 2020年の東京オリンピック・パラリンピックが近づいてきています。公共放送NHKが前を向いて力を発揮できるよう切望しております。
 本当に長い間ありがとうございました。
 (吉国専務理事)
 皆さま、お世話になりました。
 私も塚田さんと同じ昭和50年の入局で、41年間務めさせていただきました。入局した際の新人研修で、指導役を務める怖い先輩記者から、35人いる同期の記者のうち、一番最初に辞めるのはおまえだと、そういう風に名指しされたのを覚えています。そういったあまり自信のない職員だったのですが、結局41年間一番長く務めることができたのは、ひとつは視聴者の方がいかにNHKを信頼しているかを実感できたこと、そしてNHKの組織が持っていたの懐の深さで、それによって私は育てられてきたものと実感しています。
 その後10年前の不祥事の直後、横浜の放送局長として、ちょうど不払いが急増しているときに着任しました。このときは、口座振替を廃止するという届けの件数が、すごい数にのぼり、本当にNHKが潰れてしまうのではないかと思いました。しかし、そこから営業を中心に全国の全職員が一丸となって、信頼回復に取り組んで成果を上げてきました。ところが、ここ数年のいろいろな問題、さらに不祥事の即発で再び信頼は失墜し、職員が肩身の狭い思いをしていることを、そうした事態を防げなかった役員の一人として大変申しわけなく思っております。私はここでNHKを離れますが、どうか経営委員の皆さまも、事態がしっかり収拾するよう信頼の回復に向けた取り組みに向けてご指導いただきたいと思っております。
 私と経営委員会の関わりですが、平成19年から3年間、経営委員会事務局長を務め、その後役員を6年間、あわせて9年間にわたって委員会に出席させていただきました。この間、経営委員会と執行部との関係は、必ずしもしっくりいかないときも正直言って多かったのですが、その中で、双方の関係が成果として結実したと思うのが年金改革です。
 当時、NHKの年金は、低金利やマーケットの混乱で、積み立て不足の金額が相当大きくなっていました。この不足額を長期間に分割して埋めていくやり方をとっていたのですが、資金の運用がなかなかうまくいかず、積み立て不足額は思うように減少しませんでした。しかし、年金改革はさまざまな痛みを伴いますので、当時の執行部は、なかなか踏み出せませんでした。これに対し経営委員会が、このまま放置すれば経営にも重大な影響を与えかねないとして、強く要求し、さまざまな議論を経て、予定利率の引き下げ、確定拠出年金の導入という成果にこぎつけることが出来たのです。これは、経営委員会の強い後押しがなければ出来なかったことだと思います。NHKの執行部はその時、1年1年の予算の編成と執行を円滑に進めることに追われますので、やはり、経営委員会による指導・監督については、もっと長期にわたる視点でご意見がいただければと思う次第です。
 NHKは、今の経営計画で2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向け総力をあげて、最高水準の放送サービスを実現することを目標としていますが、もうひとつ大事なことは、2020年以降にどう備えていくかということだと思います。オリンピックに向けて放送と通信の融合は飛躍的に進んでいくと思います。それによって、放送を取り巻く環境は大きく変わってしまうでしょう。NHKは、創立当初から、自分でお金を集め、放送も自前で中継拠点を作って視聴者に届けるという形で、放送に関わる業務をすべて自前で進めてきました。実態は大きく変わりつつあり、営業活動もケーブル会社の取り次ぎや、法人の委託などで半分以上が外部に頼る形になっています。伝送路もケーブルが半分を占め、さらにネットでの伝送路が進むと、将来は放送波という概念そのものがなくなってしまうかもしれません。そうなると、これまでは放送局間という限られた範囲での競争でしたが、これからネット上でのさまざまな業種との非常に幅広い競争が始まります。このように多数のコンテンツ提供者が出てくる中で、公共放送としてのNHKが何をしていくのか、従来の業務をそのまま続けていくだけでよいのかということが問われますし、NHKの組織をこうした新しい環境に対応できる組織に作り替えていくことも必要になってくると思います。こうしたことを今から考えていかねば、これからの変化には対応できないのではないでしょうか。ぜひ、そういう点も踏まえてご指導いただければと思っています。
 勝手な言い分かもしれませんが、最後ですのであえて言わせていただきました。
 本当に長い間、ありがとうございました。
 (浜田委員長)
 私は平成22年6月に経営委員に就任いたしましたが、以来、お二人とは6年弱おつき合いをいただきました。
 塚田さんは制作で、吉国さんは報道で主としてご活躍され、理事にご就任されたと伺っておりましたけれども、お二人は理事、経営者としてもさまざまな分野で手腕を発揮されました。塚田さんは、特に経営企画関連や受信料の支払率の向上に、吉国さんは、人事、賃金制度の近代化・合理化に努力され、実績を残されました。
 今日NHKがさまざまな逆風の中でも財政基盤が安定しているのは、お二人をはじめとする役職員の皆さまのご尽力のたまものであると思っております。このようにお二人は放送人として、また、経営者として、矜持を持ってご活躍され、結果を残されました。長年のご苦労に対して、改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。

 

 

 上記のとおり確認する。

 

 平成28年2月23日    

浜 田 健一郎

 

上 田 良 一