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保育園で娘が窒息し死亡 父親が明かした胸の内

娘は希望の存在だった
  • 2023年10月06日

 

亡くなった女の子の父親

2023年4月、姶良市の保育園で生後6か月の女の子がりんごを食べた後に死亡する事故がありました。事故から半年になる10月。女の子の父親が初めて報道陣の取材に応じ、胸の内を明かしました。
(鹿児島放送局・住山智洋記者)

取材を受けた理由は…

 

父親

正直なところ、取材に対して受けるかどうかとても迷いました。事故がニュースになったときにSNSをみて、私たち夫婦へのコメントもあり、ショックを受けましたが、娘のことに関して落ち着いて来たことと、娘のためになにかできればと思って、取材を受けることにしました。

事故からの日々

 

父親

なんで娘がこのような事故にあわないといけないんだろうと。日々過ごしていく中で娘がいない現実が非常につらいです。
妻も明るくふるまっている様子は見られますが『だっこしたい』や『会いたい』と、ふとした瞬間に言い、涙を流しています。

事故後の対応について

2023年4月、生後6か月の女の子が保育園でおやつとして出されたりんごを食べたあと、窒息状態になって意識不明の重体になり、40日後に亡くなりました。園はこれまでの取材で、すりおろしたりんごをのどに詰まらせた可能性があるとしています。
このことに対し、遺族は、事前面談の際に生のりんごは与えないという説明だったのになぜ提供することになったのかや、りんごは十分にすりおろされていたのかなど、当時の園の対応を検証するよう求めています。

 

父親

園に対しては事件発生当日から報道にいたるまで、いろいろと連絡をとったりしましたが、私が思うような答えがありません。娘に恥じないような対応をしてもらいたいというのが一番です。他県であった保育園の事故、あのときは対応としてはものすごく早かった。私たちは、4月にあったことが5月になっても一切、対応がなく、憤りを感じました。

今回の女の子の父親への取材に関連して、保育園は「事故を真摯に受け止め、事実関係の調査・再発防止に向けた取り組みを引き続き行っていきます」とコメントしています。

「原因を知りたい」

姶良市の検証委員会

当時の対応をめぐって、外部の有識者で作る姶良市の検証委員会が園の関係者に話を聞くなどして調査を進めています。年内に報告書をまとめ、再発防止策を提言する予定です。

父親

再発防止と言っても、もう娘は亡くなっていて、再発防止をされたところでという話なので原因の究明をしてほしいです。


保育現場の現状に

そして、この事故を始め、乳児の窒息事故が相次ぎ、国が2016年に定めたガイドラインの内容が徹底されていない現状も明らかになりました。

 

父親

現にガイドラインの内容を守れてないために、娘が窒息して亡くなったわけです。保育施設は命をやりとりをしないといけない現場であると思うので、しっかりと再確認していただきたいです。それができてないから事故が起こり、親としては、怒りもありますけど、残念な気持ちが強いです。

娘と共にいたぬいぐるみをもって

 

父親が会場に持ってきたぬいぐるみ

 

父親

この人形は娘が入院してから亡くなるまで一緒にいた娘の誕生月のクマ。妻が、娘が生まれたときに一緒にお祝いできたらいいねということで買ったんですけど、それも叶いませんでした。

最愛の娘へ

 

父親

笑顔がかわいい娘だったので、だっこしたりとかそういうときに笑いかけてくれたのが忘れられません。
娘は私たちの希望でした。
寝返りが打てて、そろそろハイハイが始まるっていうところまで来ていて、その成長を見れたのがよかったです…よかったというのもおかしいですが。成長が見れたことがいちばん嬉しかったです。

『本当にごめんなさい、守れなくてごめんなさい』としか言えません。
最後は病院だったのですが、担当して下さった先生が呼吸器などを全部外したあと、

私たちの腕の中で、最後の一呼吸するまで、頑張って生きようとする姿が見れて…『頑張ってくれてありがとう』としか言えなかったです、あのときは。

世間に伝えたいことは

 

父親

そのときどきの思い出はそのときにしかなく、私たちにはその先はありません。娘を守れなかったという罪悪感しかないので、偉そうなことは言えませんが、その一瞬一瞬を大切にしていただけばと思います。

(取材後記)
私はまだ子を持った経験がありませんが、父親の言葉のひとつひとつが胸に刺さりました。子育てに潜むリスク、保育現場の現状、事故が起きてしまったあとの対応。いろいろな課題が明らかになっています。このような悲劇が再び起こらないためにも、記者として、取材を続けていきたいと思います。

  • 住山 智洋

    NHK鹿児島放送局 記者

    住山 智洋

    2022年入局の記者。鹿児島市出身。事件・事故を中心に取材している。

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