セッションでは、まず六本チーフ・プロデューサーが、2013年から始まった番組「学ぼう BOSAI」を紹介。防災教育という新しい試みでは、受け身の授業ではなく子どもたちが主役になって考える教育が重要だと語った。また、同じく紹介された「シンサイミライ学校」は、震災の体験を生かして、生き抜くこと、支え合うことの大切さを伝え、未来に向けて”学びあう”ことを訴える番組。制作者の京田チーフ・ディレクターは、この番組は子どもたちの成長と変化の物語だと言う。番組では、子どもたちが自主的に防災と関わりながら自ら行動を起こしていく姿を通じて防災の大切さを伝えようとしている。
防災教育が今なぜ必要とされるか。大木准教授は、防災は今、第3ステージに入らなければならないと言う。災害での被害はしかたないと考えていた第1ステージ。防波堤やコンクリートなど、災害を科学技術で何とかできると思っていた第2ステージ。そして、科学技術では乗り越えることができなかった東日本大震災を経て、ハードウェアの防災だけでなく、ソフト面としての防災教育が重要であり、一人ひとりの知識、行動力が必要とされる第3ステージである。しかし、知識を教えるのではなく、自分で判断することを教える防災教育は、実際の学校現場には、まだまだなじまない面があると言う。
アモッド氏は、ネパールで校舎の耐震性の強化を進めると同時に、防災教育を進めている。ネパールでは、最大規模の地震の発生によって10万人が死亡、30万人の被災者が推定されている。また被害の80%が建物が原因で起こり、特に都市部の高い人口密度が大きな問題であるという。大規模なキャンペーンの必要性を感じ、現在メディアを使った取り組みも始めている。
日本でも、東日本大震災から日が浅く、今は防災意識が高いが、やがては意識が下がっていくかもしれない。セッションでは、子どものころからの教育が防災を根付かせていくためには重要であるという、早期からの防災教育の取り組みの必要性や、人々に共感を生みやすいテレビの力が、社会的な防災意識の普及にも役立つというメディアに対する期待も語られた。さらにはインターネットなど双方向性を生かしたメディア教育の可能性など、防災教育の将来について活発な議論が行われた。