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ろう者ボウリング櫻庭まどか選手 世界大会へ

  • 2023年7月31日

8月にドイツで開催される世界ろう者ボウリング選手権に日本代表として出場する函館市出身の櫻庭まどか選手(34)。日中は保険会社で仕事をしながら、9歳の男の子を育てています。「同じ障害がある後輩たちに夢や希望を与えたい」という櫻庭さんを取材しました。 (取材:函館放送局・吉本はづき) 

ボウリング歴わずか6年で日本代表に

櫻庭さんのベストスコアは286。ボウリング歴わずか6年でことし8月にドイツ・ミュンヘンで開催される世界ろう者ボウリング選手権の日本代表に選ばれました。167センチの高い身長と長い手足から投げる力強いボールが強みです。自分のプレースタイルについてどう思っているのか、手話通訳者を介して聞いてみました。

櫻庭さん
「女性はボールを投げるスピードは弱めなんですけど、私は身長が高い分、手の長さも長くなるので、腕を振るスピードを速くすることができます。そのためストライクが取りやすくなります」

日中は保険会社で事務の仕事をしています。働きながら世界の舞台で戦う櫻庭さんを職場の仲間も後押ししています。

「みんなの仕事をサポートし、資料を作っていただいています。いろんなところで気がついたことをやっているのを目にするので、気の利く方だなと思います」

「世界と戦うわけですから、本当に頑張っていただきたいと思います。
 プレッシャーに負けないように気楽にやっていただけたらと思います」

家族も全力サポート

櫻庭さんは生まれつき耳がほとんど聞こえません。幼いときから、バドミントン、器械体操や陸上競技などさまざまなスポーツを経験してきました。

もともと体を動かすことが得意だった櫻庭さんは、6年前にアマチュアのボウリング選手である姉のはるかさんの影響でボウリング競技を始めました。始めたばかりのころは、はるかさんにボールやシューズなどのお下がりをもらい、ボールの持ち方や立ち位置など多くのことを教わりました。日本代表となった今でも、はるかさんのアドバイスが生きているということです。

對馬はるかさん
「昔からスポーツ好きということもあり、妹の運動神経はいい方だと思います。ボウリングを始めたばかりのころは、私やボウリングの仲間がアドバイスをして教えていました。姉としてはまだまだだなと思うところはあるけど、ぜひ頑張ってきてもらいたいです」

そして櫻庭選手を支えるもう1人の存在が、9歳の息子の輝翔(きらと)くんです。櫻庭さんの練習に付き添い、自分も将来ボウリングの選手になれるよう練習を重ねています。

記者  「どんなお母さん?」
輝翔くん「優しいお母さん」
記者  「お母さんが海外の大会に行くことはどう思う?」
輝翔くん「ちょっとさみしい。頑張ってね、1位取ってねって伝えたい」

消えたデフリンピック出場

櫻庭さんは8月の世界大会出場の先に、さらに大きな目標を見据えています。

それはデフリンピックという4年に一度行われる聴覚障害者のための世界大会に出場することです。次回は再来年の2025年に東京で行われます。

前回2021年のブラジル大会では日本代表に選ばれていたものの、新型コロナの影響などによってボウリング競技のみが中止になったのです。

櫻庭さん
「本当にそのときはショックでした。
 すごく悔しい思いをしました。いまも納得できない部分があります」

しかし、櫻庭さんは気持ちを切り替え、ことし5月の代表選考を兼ねた強化合宿で世界大会の日本代表に選ばれました。今回の世界大会の結果が、再来年のデフリンピック出場に関わってきます。

櫻庭さん
「4位以上がデフリンピックの出場権を勝ち取ることができます。小さいときからデフリンピックに出ることが夢だったんです。最低でも4位、またはメダルを取りたいと思います」

夢や希望を与えたい

世界の舞台で活躍するため、実績を重ねてきた櫻庭さん。デフリンピックに出場することで、自身と同じ障害がある後輩たちに夢を与えたい。櫻庭さんの一番の願いです。

櫻庭さん
「私としては初めての国際大会になります。不安な気持ちはものすごくたくさんあります。ですが、いままで支えてくれた家族や応援してくれた仲間のみんなや会社のみんなの期待とかも込めてボールを投げたいです。私が先輩として活躍してメダルを取ることで、函館ろう学校の後輩たちに夢や希望を与えて、後輩たちが頑張る気持ちを持ってもらえたらうれしい」

取材後記

取材中、練習に付き添っていた息子さんやお姉さんたちと手話でコミュニケーションを取り合い、お互いの練習をサポートし合っていた姿が印象的でした。世界大会で活躍するという自身の目標のためだけでなく、家族や同じ障害がある後輩たちのために「夢や希望を与えたい」と語り、懸命に練習に励む櫻庭さんに胸を打たれました。デフリンピックはオリンピックやパラリンピックに比べて知名度が低く、スポンサーが少ないため費用の面でも選手の負担が大きいのが現状です。再来年のデフリンピック東京大会の開催に向けて、聴覚障害者の方々がさらに輝ける舞台が整えばと取材を通じて感じるようになりました。

2023年7月31日


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