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サケお兄さん流 サケウォッチング

  • 2023年11月9日

サケの遡上シーズン真っ只中です。遡上したサケたちの最大の目的は産卵。 産卵の過程をじっくり観察すると、そこにはドラマがあります。その観察のポイントとは?
放送予定:11月13日(月)午後6:40- 総合テレビ ほっとニュースいぶりDAYひだかでも

砂利と湧き水を探せ!

サケは、川のどんな場所で見ることができるのか、キーワードは「砂利」と「湧き水」です。たとえば、こんな砂利の場所です。中洲の砂利の脇の部分にサケが列を作って群れていました。

豊平川の砂利ポイント(JR鉄橋下流)

こうした場所は、川の水が砂利底の中をよく通り、産みつけた卵につねに新鮮な水が供給されるサケにとっては魅力的な場所です。

一方の湧き水の場所はこういう場所です。

豊平川の湧き水ポイント(平和大橋付近)

陸地に染み込んだ雨水が、土手部分から流れ出しています。その水は、真冬でも10度の「暖かい」水です。真冬になっても凍らない場所で、これから冬にかけて、そうした場所を知っておくとサケを見つけやすくなります。

サケの卵は温度によって成長のスピードが変わります。水温の下がる秋の終わりから冬にかけて産卵する「遅い時期のサケ」にとっては、卵が春までにふ化するには、暖かい湧水がかかせません。

メスだけが砂利を掘ります

サケのペアを見つけたら、どんなことをしているのか観察しましょう。サケたちは、いろいろな手順を経て、産卵に至ります。
最初にやるのは産卵床づくり、体を横にして尾ビレを使って砂利を跳ね上げ、川底を掘っていきます。産卵床とは、サケやマスが川底に窪みをほって卵をうみ、砂利で埋め戻した場所です。この産卵床作りはメスが担います。なので、メスの尾びれはどんどん傷んで白くなっていきます。

黙々と掘り進むメス

背中が白かったらオス

一方、オスは何をしているのかというと、メスをめぐってケンカです。
産卵準備をしているメスを見つけたオスは、そのそばでピタリとメスをマークします。ほかのオスが近寄ってきたら、噛みついたり、体当たりして排除します。

このとき主に使うのが、アゴ。オスのアゴは大きく伸びて相手に噛みつきやすい形をしています。このアゴで噛みつき、噛みつかれ、しているうちに、背中や尾びれのつけね部分が、白くなっていきます。これはオスメスを見分けるポイントにもなります。

オスはオスでたいへんなのです

オスは激しく求愛行動 でも決めるのはメス

産卵床を作っている意中のメスに対して、好ポジションを確保したオスが次にやるのが、求愛行動です。
体を震わせながらメスの横に近づき、産卵を誘います。右から、左から、オスが何度もプルプルするのに対して、メスはあくまで「マイペース」です。
なんでも擬人化するのはよくないのですが、この様子を観察している時、いつも切なくなります…。

プルプルしながら近づくオス

メスは、求愛されている時も、黙々と砂利を掘りすすみます。十分に掘り進んだあとの、産卵のタイミングもメス次第です。ですから、オスがいくら身を震わせてにじりよっても、それだけでは産卵に至りません。
あせって、激しくにじりよるオスが、メスから体当たりをくらう、という場面に出くわすこともあります。

オスが岩に叩きつけられた瞬間(痛そう)

オスのチェイスを見たら粘れ!

じゃあ、いったい、いつサケたちは産卵するのか。これまで撮影してきた経験では、「オスのチェイス」が大事なサインです。
オスはある段階から、メスの後ろを右に左に激しく追いかけるように泳ぎ始めます。これを見たら産卵のタイミングは、それほど先ではありません。もし時間が許すのであれば、粘る価値ありです。2023年秋に道東地方でサケを撮影していた際も、この動きを見つけて10分で産卵を撮影することができました。

チェイス中のオス(左)

メスは卵を産む直前に大きく口を開けます。水上から見ていても、白い口があくのがわかります。
チェイスしていたオスが待っていたのはこの瞬間です。右から左から覗き込むように泳いでいたオスは、すばやく体勢を立て直してメスの横に体を寄せ、並んで口を開けます。2つの白い口が並び、卵は砂利の窪みへ流し込まれ、そこにオスの精子がふりかけられて受精します。

海から帰ってきた最大の目的を達成した瞬間です

メスは卵を産み終わっだらすぐに砂利かけです。早く砂利で覆わないと、ヤマメやウグイなどのほかの魚たちに卵を食べられてしまいます。
産卵の光景は、見ている自分もつい力が入ってしまい、産卵が終わったその瞬間、ほっとします。

あると便利な小道具とTips

サケの産卵シーズンは後半戦、道内では遅いところでは、2月までサケの遡上を観察できます。
観察の際、水面の反射を和らげる「偏光グラス」があると、格段に観察しやすくなります。また、水面近くは、水中の魚にとって死角になるので、できるだけ姿勢を低くして、ゆっくり近づくと、もっと近くで観察できます。

偏光グラスをつけてほふく前進 棒の先にはカメラ

ただし、水に落ちないように十分注意してください。ライフジャケットなどの安全装備も用意すると安心です。

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ひるナマ北海道とほっとニュース北海道の「北のサケお兄さんコーナー」で放送してきた内容を読むことができます。

サケカメラのページ
豊平川のサケの遡上を固定カメラで観察しています。

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