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室蘭イタンキ浜 どうして音が鳴る?“鳴り砂”の秘密は

  • 2024年4月11日

皆さんから寄せられた疑問を調べてお答えする「シラベルカ」。
今回は「鳴り砂」に関しての質問をいただきました。

「室蘭のイタンキ浜は鳴り砂ですが、砂がどうして鳴るのかメカニズムを教えてください。よく鳴る季節や、砂の大きさや形での音の違いも教えてください」
(ニックネーム:キタッポさん)

歩くと「キュッキュッ」と音がする砂浜は、「鳴り砂」や「鳴き砂」と呼ばれますが、室蘭市の観光名所のイタンキ浜は、「鳴り砂」として知られています。
なぜ音が鳴るのか、鳴り砂の秘密を調べてみました。
(札幌局記者 小柳玲華)

まず話を聞いたのは、建築や都市計画、地域の観光などが専門の、北海道大学観光学高等研究センターの西山徳明教授です。

西山教授は、故郷の福岡県にある鳴り砂の調査を依頼されたのをきっかけに、全国の鳴り砂について調べました。

北海道大学 西山徳明教授
「これは2005、2006年に全国調査をやったときに日本中の鳴き砂を集めたもので南は沖縄から北はイタンキ浜まであります」

西山教授によると、鳴り砂のカギを握るのは、砂に含まれる鉱物の「石英」だといいます。

岩石に含まれる角張った石英が、川や海の中を流れる過程で角が取れて丸くなります。
その丸い石英同士がこすれ合うことで、音が鳴ると考えられています。

鳴り砂の音を確認するため、西山教授と一緒に、室蘭市のイタンキ浜を訪れました。
イタンキ浜は、アイヌの人たちが「声ある砂浜」とも呼んだといわれています。
砂浜には、太陽の光に反射してキラキラ光る石がありました。

北海道大学 西山徳明教授
「すごく粒は小さいけれどもこの白く見えますね。これ全部石英なんですよね」

西山教授によると、この石英が含まれるだけでは鳴り砂にはなりません。ほかにも条件が揃わなければ音は鳴らないのです。

大きな条件の1つが、砂がきれいな状態であること。砂に油やゴミなどが付着していると音はなりません。たばこの灰が混ざっただけで、音が鳴らなくなるといわれています。

「いろんなもので汚染されたり余計な粒子がたくさん間に入ったりすると鳴きません。そこの環境がいずれの条件もクリアして美しいということ」

そして、もう1つの大きな条件は、砂が十分に乾燥していることです。
砂に水分が含まれていても、音が鳴らないといいます。

曇り空だったこの日、西山教授と砂浜を歩き回ると…。

札幌局 小柳玲華記者
音が鳴らないですね

北海道大学 西山徳明教授
鳴ってくれぇ~~、鳴らない
まったく鳴らない、困ったもんだ

なんとしても鳴り砂の音を聞きたいと思い、翌日、再びイタンキ浜に向かいました。

イタンキ浜で清掃活動を続けている市民団体の菊地富子会長を訪ねました。

イタンキ浜のことを隅々まで知っている菊地さん。鳴りやすい場所に連れて行っていってもらうと…。

室蘭イタンキ浜鳴り砂を守る会 菊地富子会長
「もう少し乾燥して下の方まで乾燥しているともう少し砂が柔らかくなるんですけど、ちょっと硬い状態ですね」

残念ながら、この日も鳴りませんでした。

鳴り砂はきれいな砂でしか鳴らず、「環境のバロメーター」とも言われています。

菊地さんたちは、鳴り砂を守るため、これからも清掃活動を続けていくということです。

室蘭イタンキ浜鳴り砂を守る会 菊地富子会長
「この砂の鳴ること自体が非常に珍しくて、本当に室蘭の宝だなっていう思いです。それが鳴らなくなったら本当にイタンキ浜の特徴というものが失われてしまうので、いつまでも鳴き続けてほしいなという思いで清掃活動をやっています」

鳴り砂について調べた今回のシラベルカ。
取材では残念ながら浜を歩いても音は鳴りませんでした。
菊地さんから、乾燥したイタンキ浜の砂を特別にお借りして、棒で砂を押してみると「キュッ、キュッ」という音がしっかりと聞こえました。

投稿には「よく鳴る季節や、砂の大きさや形での音の違いも教えて」という質問もありました。
西山教授によると、冬は荒波にもまれて砂についた不純物が取れるため、春以降、音が鳴りやすくなるといいます。菊地さんの話では、イタンキ浜では砂が乾燥する夏場に音が鳴りやすいということです。
また、石英の粒が小さいと音が高くなるということで、菊地さんは、ドレミファソラシドの「シ」の音がすると話していました。

西山教授が10数年前に調査した時は、全国でおよそ40か所、北海道で4か所、鳴り砂が確認されましたが、その後、鳴らなくなった浜もあるということです。
菊地さんは、イタンキ浜では、春ごろになると海岸にたばこの吸い殻が多くなると話していました。砂浜を訪れた際は、きれいな砂浜でしか砂の音が鳴らないということを忘れず、ゴミは持ち帰るようにしてください。

みなさんもイタンキ浜で、美しい自然がもたらす「音」を実感してみてはいかかですか。

2024年4月11日

投稿はこちらから👇

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  • 小柳 玲華

    札幌放送局記者

    小柳 玲華

    2020年入局。 初めて室蘭市のイタンキ浜を訪れました。 歩いて鳴り砂の音を聞くことはできませんでしたが、次こそは砂を鳴らせるよう、再び訪れようと思っています。

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