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レンズの先に野生が見えた 美幌博物館特別展から 0755DDチャンネル

  • 2023年6月24日

「ヒグマが釣り竿を持って川に立ち込んでいる?」、不思議な映像がきっかけになって企画されたのが、美幌博物館が開催の「カメラは見た!動物たちの素顔」展です。 「おもしろ」映像をじっくり見ると、地域の生き物たちの暮らしぶりが見えてきます。
初回放送:6月24日(土)午前7:55- / NHKプラス見逃し配信中

想定外のヒグマの行動 その真相は

「やっぱりあの動きは想定外で、人が入っているんじゃないかと思いました」

と驚きを振り返るのは、美幌博物館の学芸員・町田善康さんです。その映像とは、ヒグマが小枝を持って立ち上がり、まるで釣りをしているかのように川に佇む様子。特別展「カメラは見た!動物たちの素顔」(2023/3/25-10/22)のメインビジュアルの元にもなりました。

美幌博物館 学芸員 町田善康さん(画像右)

映像を撮影したのは、美幌博物館の学芸員 町田さんが、町内の動物の調査のため、森に設置した自動撮影カメラです。動物たちの動きを感知して映像を記録します。

このヒグマの映像、当初の狙いは、知床のヒグマたちがやっているように、「豪快にサケを捕まえる」ような様子をとらえることでした。

でも、自動撮影カメラのメモリーに記録されていたのは、ヒグマがゆるゆると川のはじを歩きながら、岸際の淀みを丹念に探っていく様子した。

美幌博物館 町田さん
「美幌の川は、知床のように、たくさんサケが上がってくる場所ではないんです。クマが静かに弱った魚やホッチャレを探している感じ」

そしてあの「釣り」姿の真相は?

「ホッチャレがたまるのは、流木とかが集まるようなところ。ホッチャレを探していたクマの手に木が手ひっかかって立ち上がったというような感じですね」

釣りのポーズは、美幌の環境の中で生きる地域ならではの行動の表れでした。

美幌町内の10台のカメラは見た!

美幌博物館では、町内にどんな生き物が暮らしているのか調べるため、2016年ごろから自動撮影カメラを使った調査をしてきました。いま、町内に仕掛けているのは10台のカメラ。
これらを定期的にまわって、動画や静止画を記録したメモリーを回収します。同行させてもらったこの日は、エゾアカガエルが産卵していた池など7か所を巡回しました。

町内中をひとまわりして博物館に戻ると、PCを立ち上げて画像をチェック。
エゾアカガエルの池のカメラは、飛んできたオシドリのつがいをとらえていました。

「口からカエルの足が出ていることがあるんです」

町田さんの狙いはエゾアカガエルを食べにくる生き物でした。
NHK北海道も、札幌市内の森を定点で撮影する自動撮影カメラを運用しています。月に一度、交換したメモリーカードの画像を、すべてチェックするのはたいへんです。それを7台分・・・。

それでも、動物たちの記録は、苦労を上回る「成果」となります。

美幌博物館 町田さん
「会心のショットが取れたり、こういう生き物がいるとわかったりした瞬間はやっぱり嬉しいですね。撮れた映像を見ていくうちに、これはおもしろいっていうの画像がたくさんあったのでその素材を使って皆さんに紹介できるぞって」

この思いが、「カメラは見た!」展につながっていました。

「アイドルを狙った」のは子育て中の母だった

今回の特別展では展示にも一工夫してあります。動物たちの行動を紹介する動画と剥製や模型、その横にある「びほスポ」の解説文です。
スポーツ新聞の一面をイメージして、見出しには、「ヒグマが魚つり」、「アライグマ出没」、「魚道を持ち運ぶ 悲願の遡上」などなど。思わず目がいって、記事を読み始めてしまいます(どんな展示かは、ぜひ現地で)。

そのひとつの「エゾリス襲撃 狙われたアイドル」はこちら。

シマエナガの巣を襲ったエゾリスの展示です。

町田さんは、シマエナガの巣を見つけて、卵がかえってヒナが旅立つまでを記録しようと自動撮影カメラを設置しました。ところがある時の見回りで、巣があとかたもなく消滅していたのです。シマエナガの姿はどこにもなく、いったい何が起きたのか…。
メモリーカードを調べると、エゾリスが巣を襲い、卵を食べている様子が記録されていました。

卵を食べるエゾリス

美幌博物館 町田さん
「エゾリスは木の実を食べている、かわいい動物というイメージ。卵を食べている映像を見た時には驚きましたけど、よくよく図鑑を読んでみると鳥の卵を食べると書いてあるんですね」

人気のシマエナガの卵を食べたエゾリス。さらにそのエゾリスが巣材をすべて持ち去っていく様子が映像に残されていました。

「赤ちゃんを育てている母親のリスで、自分の巣にシマエナガの巣材を持ち帰ったようです。シマエナガの巣は鳥の羽などでできているので、すごく上等な巣が作れたと思います」

「びほスポ」は、記事の中で「エゾリスを嫌いにならないで」と事情を伝えています。
自動撮影カメラは、生き物のやりとりの一部始終を記録していました。

博物館もSDGs
今回の特別展は、見えない場所にも工夫があります。それは環境に配慮したリサイクルできる素材を使った展示。写真パネルや説明文の裏をよく見ると、段ボールが使われていました。「自然をテーマにした特別展だけに環境に配慮した」とのことです。

学芸員は見た!地域”自慢”

「地域ごとの自然のことって、その地域にいる学芸員さんが詳しく知っています。各地の良さみたいなことを紹介し合えたら」(談:美幌博物館 町田さん)

展示の後半にあるのが「学芸員は見た!」のコーナーです。オホーツク、道東地域の斜里町・釧路市・根室市にある博物館の学芸員に声をかけて実現。地域ならではの画像で参加しています。

釧路市立博物館からは、釧路湿原の生き物たちを定点で撮影した記録、斜里町立知床博物館からはヒグマの背こすりの様子。このほか、各博物館の静止画の展示もあります。
それぞれの地域で、それぞれ学芸員たちが取り組んでいることを垣間見ることができます。

美幌博物館 学芸員 町田善康さん
「これらの展示をきっかけに、それぞれの博物館にも足を運んでもらえたらいいなと思います」

オホーツク・道東各地の学芸員のとっておきの画像は、「学芸員は見た!」展として、各地を巡回する予定です。

カメラは見た!動物たちの素顔
3/25-10/22 美幌博物館(美幌町)

巡回展 学芸員は見た!動物たちの素顔
2024/1/20-3/31 斜里町立知床博物館
2024年度中に開催予定
2024/4/20-6/9 根室市歴史と自然の資料館

この記事を書いた人

ヒグマカメラ~となりのヒグマを知る~ 0755DDチャンネル
自動撮影カメラで札幌のヒグマがすむ森を定点観察してみると…

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