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議員の“なり手”を増やせ! 栗山町の挑戦

  • 2023年5月1日

道内で前後半合わせて176の選挙が行われた“春の政治決戦”統一地方選挙。このうち後半戦で行われた100の町村議会議員選挙では合わせて11の町と村で立候補した人が定員に達しない「定員割れ」となった。全体の1割を超える数だ。 深刻化する議員の“なり手不足”。空知の栗山町では候補者を増やし、選挙戦を実現しようと新たな取り組みが始まった。その名も「議員の学校」だ。(札幌放送局  竹村知真)


議員の“なり手”を

全道で深刻化する議員の“なり手不足”。
栗山町でも、町議会議員選挙は2015年・2019年と過去2回、いずれも無投票となった。
選挙戦にならず、論戦が行われないまま議員が決まっていく現状に現職の町議会議員たちは危機感を抱いていた。

栗山町議会・議会改革推進会議座長  齊藤義崇町議会議員
「選挙をやることで、今までの自分のマニフェストや政策を反省するチャンスを得られるし、次に見直したいもの、もしくは継続したいものも主張して支持を受けられる。そういう過程がこの2回なかった。本音を言えば、選挙戦になって、激戦になれば、私たち自身ももっと気合いを入れて頑張らないといけなくなってしまう。ただ、それも私たちにとっては大切な要素で、選挙というものをくぐった者どうしで、町をよりよい方向に進めたい」

そこで、町議会は今年、新たな取り組みを始めることにした。
名付けて「議員の学校」だ。
2月にスタートした「学校」。講座は全6回だ。
現職議員が議員の仕事や議会の仕組みについて講義を行うほか、最終日には「模擬議会」も行い、議員を疑似体験してもらう。
町内外からおよそ20人が参加した。


「私じゃ出来ないべな」

町内でバーを経営する大櫛則俊さん(56)も「学校」に参加した1人だ。
常連客から「学校」の話を聞きつけ、受講を申し込んだ。

大櫛則俊さん
「飲食店をやっていると、町の声ってやっぱり聞きやすいんです。自分もそうだなあと思うこともあれば、『それは、しゃあないんでないかい』っていうこともあります。そうやって話を聞いているうちに、議員という仕事に興味が湧いてきました。ただ、『私じゃできないべな』っていう意識は持っていました。今回、『議員の学校』が出来るということで、学校だけでも通ってみようかなと、それで判断してもおかしくないんじゃないかなということで通うことにしました」

「学校」へ通うことを決めた大櫛さん。
果たして、自分は議員になれるのか。仕事の合間を見ては資料を読み込み、イメージを湧かせた。

大櫛則俊さん
「自分の分からないところ、疑問に思ったところを『学校』にいる時に箇条書きにしておいて、持ち帰ってから自分なりに検討してみて。『自分だったらこうやって考えるな』とか思いながら勉強しています」

3月中旬。
「学校」最終日の「模擬議会」で、大櫛さんも“議員”として質問に立った。
議題としたのは町の除雪費用だ。

「町道を除雪するにあたって、距離が310キロほどあると聞いておりまして、その310キロを1周するのに何人、何時間くらいかかるものなのかっていう数字というものは出ているのでしょうか」

「例えば、雪が多く降ったり、少なかったり、中くらいだったりとか、3段階くらいで作業要項を作成してもらって、それを踏まえて予算案というのを組んでもらえればと思うんですけど、その辺、いかがでしょうか」

町民の声を代弁する“議員”として。
大櫛さんは日頃の問題意識を懸命に言葉にして、ぶつけた。

大櫛則俊さん
「初日はやっぱりびっくりしましたけどね。あまりにも世界が違うと。ちんぷんかんぷんでした。でも、ちんぷんかんぷんでも、帰ってから調べたりして、さらに興味も湧いてきました」


「覚悟が決まりました」

告示日1週間前の4月11日。
町議会議員選挙への立候補は? 単刀直入に大櫛さんに聞いた。

大櫛則俊さん
「今回、思い切って出ることにしました。『議員の学校』に行ってみて、ふんぎりがついたというか、覚悟が決まりました。学校でいろんな方としゃべる中で『そんなに難しく考えなくても、慣れて覚えるものだから頑張ってみなさい』という温かい言葉もかけていただいて、『あ、出てみよう』と思うきっかけになりました。自分でも、もしかしたらできるんじゃないかなという自信が、ちょっと湧いてきたって言ったらいいのかな」

選挙事務所はバーの2階。大櫛さんは急ピッチで準備を進めた。
そして迎えた4月18日の町議会議員選挙告示日。
朝、大櫛さんは新人候補として立候補を届け出た。
「学校」の効果もあって、今回の選挙は定員11に対し14人が立候補。選挙戦となった。

初めての選挙。手伝ってくれる仲間たちと試行錯誤しながらの選挙戦となった。
「ガンバロー」三唱で気合いを入れると、大櫛さんは早速、町内を回って、町への思いを訴えた。

大櫛則俊さん
「商店街や飲食店街を盛り上げて活気のあるまちづくりを目指します。町に届かないような小さなつぶやきみたいな声とか、皆さまのアイデアを町政に届けます。実は、私は人前でしゃべることが大の苦手です。でも、フットワークの軽さと、人の話をよく聴くことについては自信を持っています。ですから、小さな声であろうと、大きな声であろうと、皆さまと話し合って、よりよいまちをつくるために、私は全力で働く所存です」


新人「議員」の誕生

4月23日の投開票日。
大櫛さんは5日間の選挙戦を支えてくれた仲間たちと、自身が経営するバーで開票結果を待った。
午後10時すぎ、結果が発表された。

「大櫛則俊  321票」

開票結果には、そう書かれてあった。
当選11人中9番目の得票で、初当選を果たした。

大櫛則俊さん
「まだ心臓がドキドキしています。町民の意見をよく聴き、それを町政に届ける。私が最初から大前提としてやろうとしていたことを一生懸命やるつもりです。町をよりよくするための意見を交わす場として議会に参加していきたいです」


「議員の学校」出身者は全員当選

今回の栗山町議会議員選挙には、大櫛さんを含め、「議員の学校」で学んだ受講生が3人立候補し、全員が当選を果たした。
また、隣の由仁町の町議会議員選挙にも受講生1人が立候補し、当選を果たした。
「選挙戦を通じた活発な論戦が、まちの活気につながる」
町は今後も毎年、「議員の学校」を開く方針だ。
各地が頭を悩ませる議員の“なり手不足”。栗山町の取り組みは課題克服に向けた1つのモデルになるかもしれない。

2023年5月1日

 

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