自分の命を守る!「使える防災」4つのポイント
- 2024年3月8日
道南で大地震や津波が発生した際に、安全に避難するためには?専門家・中嶋唯貴さんに4つのポイントを聞きました!
ポイントは「家から安全に避難すること」と「低体温症の対策」!
中嶋唯貴さんは北海道大学大学院工学研究院の准教授で、災害時の人の被害を減らすための都市防災に関する研究をしています。2021年からは函館市に協力し、防災に強いまちづくりにも取り組んでいます。
そんな中嶋唯貴さんが、地震・津波から命を守るために特に注意してほしいというポイントが4つあります。
①家の中の安全な場所を知る
②揺れが収まるまで動かない
③必要な物は家のすぐ取り出せる場所に
④低体温症から身を守る
このうち①~③は全て、地震発生直後の家の中での注意点です。
中嶋唯貴さん
「地震が発生した後に家から外に出ることは、みなさんが思っているよりもかなり難しいです。家具が倒れてきたりガラスが割れて散乱して、家の中がぐちゃぐちゃになってしまう。家から安全に出るということを第一に考えなければいけないと思います。」
①家の中の安全な場所を知る
家にいる時に地震が起きたら、家具が倒れてこない場所にすぐに移動することが大切です。いざという時に素早く動けるように、事前に安全な場所を確かめる方法があります。
地震が発生した場合、タンスなどの重たい家具は大きく飛ばず多くはそのまま床に倒れます。そのため家具と同じ大きさで床にテープを貼ったり布やタオルを置くことで、家具が倒れてくる範囲をある程度検証できます。
家の全ての部屋で検証を行い、地震が発生した際にどの部屋にいても安全な場所に避難できるようにすることが大切です。
「家の中の安全な場所を知る」ことについて、さらに詳しく中嶋唯貴さんに聞きました。
Q.つっぱり棒などの固定具を使えば、家具は倒れないですか?
中嶋唯貴さん
「絶対に倒れないとは言えません。震度6弱程度までの地震の時は突っ張り棒は有効に働きますが、震度6強を超えると建物が変形して突っ張り棒が外れ、家具が倒れる可能性があります。」
Q.家具が倒れてきて安全な場所を確保できない場合、どのように対策したらよいですか?
中嶋唯貴さん
「家具の向きや配置を変えることを考えてみてください。例えばタンスなどの家具が部屋の出入り口を塞いでしまう場合は、タンスの向きを変えるか置き場所を変える必要があります。」
②揺れが収まるまで動かない
過去の震災では、地震で揺れている間に大きく移動してけがや転倒をしてしまうケースが少なくないと中嶋唯貴さんは指摘します。
<中嶋唯貴さんが指摘する、過去にあった危険な行動>
・料理中のキッチンに向かい、油などが飛んでやけどをする
・ストーブの火を止めに向かい、やけどをする
・家具を押さえに向かい、家具が倒れてけがをする
・別の部屋にいる子どもを助けに走り、転倒する
揺れが収まるまでは、家具などが倒れない安全な場所に座って留まることが大切です。
Q.地震の揺れで火事が発生したらどうしたらよいですか?
中嶋唯貴さん
「揺れが収まるのを待って、消火器を使う・火元に濡れたタオルを被せるなどの対応をします。地震の揺れの時間だけで火が大きく延焼することは少ないため、揺れが収まってから行動をしてください。ただし、津波の危険がある場合は、無理に消火活動をせずすぐに避難してください。」
③必要な物はすぐ取り出せる場所に
地震の揺れの後、津波の危険がある場合にはすぐに避難行動を始めます。北海道が出している函館市の津波の被害想定によると、冬の夕方に地震・津波が発生した場合最大で29000人が亡くなりますが、避難行動を直ちに始める人が70%を超えれば死者は2200人まで減少すると予測しています。
避難行動を素早く始めるためには、服・靴・携帯電話・持病の薬・鍵など、避難に必要な物をすぐに用意できることが重要です。玄関の近くやリビングの家具が倒れてこない場所など、必要な物は家から外に出る際にスムーズに取り出せる場所に置きます。
乳幼児がいる家庭では紙おむつが必要など、避難時に持ち出したい物は家庭によって異なります。NHKでは防災のポータルサイトで持ち出しを推奨する物のリストを公開しています。
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④低体温症から身を守る
地震・津波から無事に避難した後、北海道に住む私たちが注意しなければならないこと。それが「低体温症」だと中嶋唯貴さんは言います。
低体温症は、寒さなどが原因で体の深部の温度が35度以下になった状態のことです。低体温症になると、血液が十分に脳に行かなくなるなど最悪の場合死に至ることがあります。
特に避難所で生活をする場合、床の冷気を対策することが重要です。寝る時には段ボールや毛布を床に敷いたり、上履きを履くなど体が直接床に触れることを防ぎます。
他にも、帽子やマフラーで厚着をして外気と触れる場所を減らしたり、寒い時期にはマスクをして体の内側に冷たい空気が入ってくることを防ぐことが有効です。
Q.道南では、低体温症の危険があるのは冬の時期だけですか?
中嶋唯貴さん
「冬以外の時期も、低体温症の危険性はあります。WHOは18度以下になると低体温症にかかる可能性があると指摘していますが、道南では朝晩には冬以外の時期でも18度を下回ることがあります。」
中嶋唯貴さんに監修していただいた4つのポイント。いざという時のために、ぜひ心に留めてください!
<取材した函館局ディレクター>
荻野 智也
2019年入局。東京での勤務を経て、2021年11月から函館局へ。道南への新たな移住者として、地域の魅力を知り尽くすことが目標。