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Do! | #29 Horikoshi Mio

  • 2023年9月13日

第29回に登場するのは、入局4年目・堀越ディレクター。2023年7月21日に放送した「北海道道 アイドルに青春かけて〜北海道から全国へ 少女たちの今〜」 を制作しました。もともとアイドルが好きだった堀越ディレクターが、番組化の苦労や番組を通じて解き明かしたかったものなど番組制作の裏側を聞きました。さらに、小学校教諭を目指していた堀越ディレクターがテレビの世界を志したきっかけなど学生時代の話も深掘りします。

[Photo By 奥田 敬輔 ]
[聞き手 加藤 洋也(NHK札幌放送局 デジタル・戦略G)]

堀越 未生-Horikoshi Mio -
文学部教育学科卒業。2020年入局。東京都出身。趣味はアイドルのMVを観ることと美術館巡り。特技は北海道の市町村を言われたらご当地キャラの名前をすぐ言えること。

<目次>
1.「ときめき」が生まれた理由を解き明かす
2.  未知の世界に飛び込む大学時代
3.「学校の外の学び」の豊かさを知り、テレビの世界へ

2023年7月21日放送
「北海道道 アイドルに青春かけて〜北海道から全国へ 少女たちの今〜」
6月に結成された新しいアイドルグループ「僕が見たかった青空」。応募総数は過去最大規模の全国3万5千人。 北海道からオーディションの最終審査に挑む2人を追った。 そして、4月に全国CDチャート3位を記録した北海道のローカルアイドル「タイトル未定」に密着。 アイドルとして北海道から全国を目指す少女たちの今を見つめる。
■堀越ディレクターが書いたWEB記事はこちら

1.「ときめき」が生まれた理由を解き明かす

――7月に放送した「北海道道」のお話から伺います。なぜアイドルをテーマに?

もともと、特定のグループのファン、というわけではなく、いろんな女性アイドルのパフォーマンスを見るのが楽しい、みたいな感じで、アイドルが好きで。今回特集したようなライブアイドル(※)も東京にいた時には見に行っていました。自分と同世代の女の子たちが、自分でアイドルになることを選んでステージに立っている、ということがすごく興味深くて、「友達として出会ったらどんな子たちなんだろう」って漠然と思っていました。もともとは私たちと同じような暮らしの中で生きていた子たちが、アイドルとしてステージで輝いているとすごくときめいて応援したくなる、その「ときめき」がなぜ生まれるのかを解き明かしたいなと思ったのがきっかけです。
※ライブアイドル……主にライブハウスで活動するアイドル

――実際に番組にしようと思ったきっかけは?

「北海道道」MCの多田萌加さんがもともとアイドルをされていたということもあり、いつかアイドルをテーマにしたいねと話していたんです。そんな中、乃木坂46の公式ライバルのオーディションが北海道で開催されるという話を聞いて、それはぜひ取材させてほしい、と。
東京でデビューを目指す道のりを取り上げるのなら、北海道ローカルでチャレンジしているアイドルの歩んでいる道も取材したいと、企画を考えるようになりました。そこで、北海道発で新しいアイドルシーンを作っていると話題で、多田さんと一緒に注目していた「タイトル未定」さんにも取材のお声掛けをして、実際に番組作りが始まりました。

――そもそもNHKでアイドルをテーマに取り上げるのはハードルが高くはなかったですか?

高かったです。宣伝にしかならないのではないかという声もありました。でも、「タイトル未定」を追いかけて毎週のように全国から北海道に通うファンの姿を見て、やはり「アイドル」は一大産業だと思いましたし、それだけのムーブメントを起こす女の子たちがいて、それを企画しているプロデューサーがいて…、そういう社会現象そのものを、北海道という土地からみつめたい、と伝えました。そして、なんとか企画を通すことができました。

――以前、推しをテーマにしたほっかいどうが(「推し」って、結局なに? ~いろいろと、悩んでます~)を制作されていましね。その経験が今回の北海道道の制作にも活きたところはありますか?

「好きっていうものがどこから湧いてくるのか」っていうのを考えていく思考回路は、だいぶ培われたかなと思いますね。「ほっかいどうが」は、「好き」を「推し色のクリームソーダ」に昇華している話でしたが、今回は、アイドルを目指す子たちが、アイドルが大好きで、自分もなってみたい、と思う気持ちを、深く考えて作りました。
もう一つは、ほとんどデジカメを使って自分一人でロケする撮影方法です。技術的な面もそうですけど、度胸というか、その場で考え、自分がどういうことをその場で聞けばいいのかという胆力が鍛えられたかなと思います。

――北海道道の中ではステージ上のキラキラした部分というよりも、彼女たちの素の部分が魅力的でした。

そうですね。アイドルに興味がない方がアイドルに対して思っている「可愛いって言われたいとかチヤホヤされたいだけ」みたいな眼差しがもったいない、とずっと思っていました。アイドルってただの目立ちたがり屋みたいに思われがちですけど、もっとステージ上で何を叶えたいとか、アイドルになる前はどういう女の子だったのか、という切実な面を伝えたいと思いました。アイドルの子たちが外から見られる視線だったり、年齢的な限界だったりとか、そういうものと向き合いながら、それでもやっぱり楽しいと前向きにアイドルでいようとする彼女たちの姿が印象的でした。

――インタビューのシーンではすごく本人のリアルな感情が垣間見えました。なにか気を付けたところは?

やっぱり “見られること”を前提として日々活動している子たちなので、彼女たちは撮られ慣れていて、普通にカメラを向けてお話を聞くと、アイドルとして接することになって。ついついそれでコミュニケーションがうまくいっているように感じるし、取材ができているように感じてしまいますが、それだとその生身の女の子を取材したってことになかなかならないなと思いました。ご実家まで取材させていただいたりとか、ゆかりのある場所でアイドルじゃなかった時に何を思っていたかを聞いたり、できるだけ一人の女の子としてお話を聞いていくというのを心がけました。

――インタビューの時、すごく距離感が近いような気がしました。意識されたことはありますか?

取材中、私自身も自分の話をたくさんしました。その話を聞いて自分が今こういうことを思ったとか、今までの自分の経験でこういうことがあったとか。相手から何かを引き出そうとしてずっと語っていただくというよりは、相乗効果じゃないですけど、自分が思っていることを話して、会話を重ねました。取材を受けていただいたからこそ、生まれる気付きを、一緒に探していけたらいいなと思っていますし、そうなった時にすごくいいロケができたなとか、いい番組になりそうだなって思います。

――本人の想いを知ったうえで見た「タイトル未定」のライブシーンは違う印象がありました。

シンガーソングライターとは違って、「自分たちが作った歌をステージ上で表現する」というよりは「与えられたコンセプト・楽曲をどう演じきるか」というところがアイドルの仕事なので、番組では彼女たちなりの内面の表現というか、自分を表現することにどういうふうに向き合っているのか伝えられたかなと思っています。

――今後、取材してみたいテーマがあれば教えてください。

うーん…。答えになっていないのですが、なんでもやってみたいです。
自分自身もまだ想像が及ばない世界を取材することで、目から鱗がポロポロ落ちるみたいに、思い込みが剥がれ落ちて、そうするとその人の裏側にある痛みだったりとか背景だったりとか、喜びだったりとかを想像するきっかけになるなと感じています。想像できるとやっぱり優しくなれるというか…。最終的に自分や、番組を見た方が優しくなれるような番組を作りたいです。 推しやアイドル、精神科医など全然違う番組を作っているようですけど、やりたいことは全部同じで。優しい想像力を働かせていけるといいなって。番組を通じてそういう感覚が世の中に広がればいいな、っていう気持ちで作っています。

――「優しい想像力」素敵な言葉ですね。

全盲の精神科医の先生を取材している時にも、先生はなぜ精神科医を続けているのか、なぜ番組を作っているのか、みたいな話をたくさんして。先生が「僕が思っていることと堀越さんが目指していることは実は同じかもしれないですね。」って言ってくださって。逆に気づかせてもらいました。また、優しい想像力を働かせてもらえるような番組を作りたいなって。偉そうですけど、そう思ってます。
■堀越ディレクターが精神科医の先生を取材して書いた記事

2,知らない世界に飛び込んでいった大学時代

――学生時代のお話についても伺いたいのですが、自閉症の子供の教育について学ばれていたのですか?

大学時代に自閉症や発達障害がある子どもたちの放課後等デイサービス(※)という施設でアルバイトをしていました。たまたま求人を見て、一瞬、障害のある子どもと接するのはちょっと怖い、と思ったんです。そのとき、なぜ自分はそう感じたのか分かるかもしれない、と逆にアルバイトをやってみようと決めました。そのアルバイトをきっかけに、障害のある子どもたちの教育支援について、学び始めました。
※放課後等デイサービス……障害のある子どもが学校の授業後に通う、療育機能などを備えた福祉サービス。

――その経験が番組作りの考え方にも影響してそうですね。

たしかに、それが原点かもしれないですね。例えば、自閉症の男の子の送り迎えしているときに、急に路肩に止めてあるバイクに座っちゃったりするんですよ。慌てて止めるんですが、よくよく考えたら、そのバイクがかっこいいなって思う気持ちそのものは私も一緒だなって思ってきて。なんかただ「ダメだよ」って言うんじゃなくて、「確かに、これかっこいいよね。」ってまずは言ったりして、少しずつ気持ちを理解して一緒にその空間を楽しむ、という良い経験をさせてもらいました。

――大学時代の部活は航空部だったとか?

大学から航空部に入りました。グライダーというエンジンのない滑空機をみんなで運航して、自分もパイロットとして空を飛ぶ部活です。ちなみに高校まではバレーボール部でした。

――なぜ航空部に?

新歓の時に、構内にグライダーが置いてあって、なんだろうと思って近づいて、これはグライダーというのか、空を飛ぶのか、というところから始まって、4年間やったら免許が取れて、しかも全国大会まで出るかもしれないと知って、それを成し遂げられる可能性が自分にあるんだと思ったら入部していました。やっぱり、全然知らない世界に足を踏み入れるのが好きなんだと思います(笑)

――実際に入部してみて、よかったですか?

グライダーって体格も性別も関係ないスポーツなんですよ。空の上でただ自分の技量だけで競い合えるっていうのがすごくいい世界だなって思ったし、いい経験をしましたね。

3.「学校の外の学び」の豊かさを知り、テレビの世界へ

――ディレクターになろうと思ったきっかけは何ですか?

小学校の先生になりたくて教育学科に入学しました。でも大学が面白かったのでしょうね。グライダーも、障害のある子どもについても、自分が国語、数学とかで学んだことよりも興味が沸くし、教科の外側にある学びって豊かになるなって。そういうことを続けていきたいなと思うようになって。じゃあ、その面白い部分を人に伝えて、自分も学び続けることができる仕事って何だろうと考えた時に、頭に浮かんだのが Eテレでした。自分も子どものとき、ワクワクしながら見ていたし、そういう仕事ができたらいいなと思って目指すようになりました。

――忙しい中での就活だったと思うのですが、Eテレの番組でADとしてロケに参加されたんですよね?

そうですね。生活科の番組でした。教育学部だったので、生活科の単元を教えるための授業がありました。大学に生活科を専門としている先生がいて、その番組に協力していて。授業後、私が「興味あります!」と伝えたところ、先生がNHKのディレクターとつなげてくれたおかげで、一日バイトとして参加できました。

――参加してみてどうでしたか?

育てた植物を収穫するロケでした。嘘なく番組を作っている姿がすごく印象的で、本当に豊かな制作環境だなと、素人ながらに思いましたね。実ったものを別の場所から持ってくるのではなくて、ディレクターが子どもたちと一緒に実際に育てたものを収穫していて、出演している子役の子たちも台本だからではなく本当に喜んでいて。この経験でNHKの雰囲気がわかりましたし、やってみたいなって純粋に思いましたね。

――最後に就活生に向けて、アドバイスをお願いします。

何でもやってみたいなとか、興味があるなって思うことのきっかけというか、息吹を感じたら、恐れず足を踏み入れてみることが大切だと思っています。と、偉そうなことを言いつつ、私はまだ取材の電話をかける度に怖気いていますが…。でも、一歩踏み出して知らない世界を見つけることが面白いと思う人は、きっと番組制作も楽しめるのではないかなと思います。

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